アフリカビジネスを盛り上げるJICAの挑戦

独立行政法人国際協力機構 アフリカ部長
加藤 隆一

「地球最後のフロンティア」

日本から1万km以上離れたアフリカ大陸には、全世界の4分の1に当たる54の国があります。人口はすでに12億人に達し、2050年には25億人前後に近づくと予測されています。これは、地球に住む人間の4人に1人がアフリカ人という時代がやってくることを意味しています。

アフリカは発展の将来性から、「地球最後のフロンティア」といわれています。2000年代前半、原油価格の高騰などによって、サブサハラ・アフリカで年平均約5%の経済成長率を見せました。資源価格が急落した2014年以降は落ち込んだものの、2016年以降再び急上昇し、2018年から2019年にかけて世界平均を上回りました。

このように人口増加や経済成長を背景に、アフリカは巨大な市場として、世界中から注目を集めています。また、日本のビジネスコミュニティーにおいてもアフリカへの関心が高まりを見せています。

ポテンシャルを秘めたアフリカの開発の道筋を立てるべく、2019年8月28日から3日間、横浜で開催される第7回アフリカ開発会議(TICAD7)にアフリカの首脳が集います。日本での開催は6年ぶりです。焦点となるのは、2016年のTICADⅥ以降の開発の動向と課題、アフリカ域内・域外との連結性の強化、民間投資の加速化などです。


アフリカの人口増加予測の図


アフリカの近年の経済成長率


ビジネスチャンスが拡大するアフリカ


では今、アフリカでは何が起きているのでしょうか。際立ったものの一つが、デジタルツールの急速な普及です。例えば、携帯電話の普及率は、世界的な伸びとともに、アフリカは2005年の約12%から2018年には約76%に急増しています。こうしたICT(情報通信技術)の普及によって、オンラインショッピングやモバイル送金サービス、電子マネー、GPS輸送システム、仮想通貨などが活用されてさまざまな分野でのイノベーションにつながり、新たな市場が誕生しています。

こうした躍進の背景には、「途上国」ならではの理由があります。日本などの先進国では新たな技術やアイデアが生まれても、普及には法律や既存システムなど多くの高いハードルがありますが、アフリカではそれが低いため、一足跳びに新たなサービスが始められるのです。この現象は「リープフロッグ(かえる跳び)」と呼ばれ、現在のアフリカビジネスにおける重要なキーワードの一つです。

イノベーションで広がるアフリカビジネス

この「リープフロッグ」を生かし、JICAが力を入れているのが、既存の枠にとらわれないイノベーションによる課題解決です。例えば、1994年にジェノサイドを経験したルワンダが「ICT(情報通信技術)立国」を掲げて国造りを進める中、JICAはICT起業家支援や人材育成を通して、同国の経済成長を後押ししています。2017年から始めた「ICTイノベーションエコシステム強化プロジェクト」では、JICAが支援する同国の若手起業家たちが、アプリを使って多くの鶏卵を育てるふ化器や、農業生産者と消費者をつなぐアプリ、農家向け天気予報アプリを作るなど、ICTビジネスによってルワンダの課題に向き合っています。

世界銀行がビジネス環境の良さをランク付けした「Doing Business2019」(2018年10月)で、ルワンダは190ヵ国・地域中29位で39位の日本を上回りました。

ABEイニシアティブで留学生1,200人

JICAは、アフリカ人若手人材の育成も重視しています。日本の大学での修士課程教育と、日本企業でのインターンシップを提供する「ABEイニシアティブ」では、これまで1,200人を超えるアフリカからの留学生を受け入れてきました。

例えば、ICT教育を専門とする神戸情報大学院大学(神戸市)は、これまでルワンダ人留学生を30人以上受け入れてきました。修了生の中には、帰国後にルワンダ政府ICT省で民間セクター開発部門長として日本企業の事業展開を支援したり、国連の「デジタル協力に関するハイレベルパネル」の一員となった留学生もいます。

ABEイニシアティブを通して学んだ留学生たちは、日本企業とのネットワークや、実務のための知識や経験をフル活用し、今後のアフリカビジネスの発展に貢献する中心的な存在となってくれるはずです。

日本とアフリカをつなぐ民間連携

取り組みのもう一つの柱が、民間連携事業です。日本の強みを最大限に生かすためには、日本の民間企業に備わる技術や経験がカギとなります。JICAは世界各国のネットワークや資金、スキームを提供し、多くの民間企業と連携してさまざまな事業を展開しています。

セネガルでは、カゴメ株式会社によるトマト栽培・加工業の可能性調査に協力しました。調査結果を踏まえ、同社は2017年、加工用トマトの栽培・仕入れ・販売を行う現地子会社を設立しました。

年間40%の国民が蚊を媒介した感染症のマラリアにかかり、例年約3,000人が命を落とすザンビアでは、関西ペイント株式会社が開発した「防蚊」塗料の普及を支援しました。この塗料は家屋内などに塗れば蚊の撃退につながるもので、同社は2018年10月、ザンビア保健省から製品の販売認証を取得し、販売をスタートさせています。

また、阪神高速道路株式会社がモロッコで取り組む高所における構造物点検検査技術の普及、サラヤ株式会社がウガンダで取り組む病院向けのアルコール消毒剤の普及を支援するなど、2019年4月時点で、農業や保健医療、環境・エネルギーなど幅広い分野で、168件の民間連携事業が実現しています。

その他にも、「東アフリカのゲートウェイ」と呼ばれるケニア・モンバサ港の整備と同港から内陸国につながる回廊開発、ものづくりの生産性や品質を高める日本式の「カイゼン」の普及、コメの生産拡大を目指す農業支援、難民受け入れ国での学習環境改善の支援、障害者や除隊兵士などへの能力強化、といった取り組みなども進めています。

JICAは今後もアフリカでのビジネスや民間連携、起業などをさらに活性化させるため、外務省、経産省、JETROと共同で、「アフリカビジネス協議会」の設置を準備しています。これによりアフリカでのさらなるビジネスの可能性を探っていきます。

雇用創出や治安面の解消が課題

ここまで述べてきたように、将来性にあふれたアフリカですが、課題も山積しています。一つが人口爆発に伴う雇用の創出です。アフリカでは、最も労働人口につながる製造業が未発達です。今後進む都市化とともに、都市に住む人たちの失業率を低く保ち、社会を安定させるためには製造業の振興が必要です。また、人口の約6割が従事する農業の振興支援も不可欠です。農作物の生産性を高めるノウハウなどが乏しいために、広大で肥沃(ひよく)な耕作地を持ちながらも、人口増加によって海外からの輸入に頼らざるを得ない状況に陥りつつあります。

そして政情不安も大きな課題の一つです。アフリカでは経済成長を続ける国がある傍ら、紛争や内戦などのせいで、成長から取り残された国もあります。これは貧困問題にも直結します。交通網や電力などインフラが未発達であることも発展の足かせとなっています。こうしたアフリカ発展の遅れは、日本の国益を損なうことにもつながります。

また、現在のアフリカに対する援助を語る上で見逃せないのが中国の存在です。近年、中国は大規模な支援を展開し、存在感を示しています。例えばエチオピアでは首都アディスアベバにアフリカ連合(AU)本部ビルを建設し、ケニアやエチオピアに鉄道も敷設しています。一方で、大規模な支援による債務負担が過重になる国も出てきています。

このように、日本のアフリカへの投資は、中国や、歴史的に関係が深い欧米に比べて規模では及びませんが、支援相手であるアフリカ各国との対等な関係性を大事にし、「アフリカの自立につながる」という視点で取り組む姿勢が強みだと確信しています。

日本の「強み」を発揮できる支援へ

2019年8月に横浜で開かれるTICAD7では、アフリカがさらに飛躍していくために、日本がどのような貢献をしていけるかが問われます。

アフリカの発展を包括的にサポートしていくためには、日本の「強み」といえる民間セクターが培ってきたさまざまなノウハウや経験が欠かせません。より一層、官民によるパートナーの輪を広げ、アフリカの発展に貢献しながら、私たち自身も発展、成長していけるようさまざまな課題にチャレンジしていきたいと考えています。

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