空港運営の民間委託による 地方活性化について

国土交通省 航空局 航空ネットワーク部
航空ネットワーク企画課 空港経営改革推進室 企画調整官
安井 弘樹

1. 空港の民間委託の背景

空港は国際・国内の航空ネットワークを構成する極めて重要な公共インフラであり、わが国経済社会の発展や地域の活性化に大きな役割を果たしている。わが国の空港は、社会経済の発展や高速交通需要の増大に伴い順次整備が進められてきた結果、現在、全国で合計97を数えるに至っており、配置的側面からみればほぼ概成しているといえ、「整備」から「運営」へと空港政策の重点がシフトしている。

また、わが国の空港は、管理者(国や自治体等)が運営する滑走路等の航空系事業と第三セクター等が運営するターミナルビル等の非航空系事業で運営主体が分離していることや、特別会計のプール管理の下で全国一律の着陸料等となっている等の課題も存在している。

こうした背景の中、平成25年通常国会において、地域の実情を踏まえつつ民間の能力を活用した効率的な空港運営を図るため、国管理空港等についてPFI法に基づく公共施設等運営権を設定して運営等が行われる場合における関係法律の特例を設ける等の所要の措置を講じた「民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律(平成25年法律第67号。以下「民活空港運営法」という)」が成立し、空港における事業について、空港の管理者である国が土地等の所有権を留保しつつ、運営権を設定することにより、民間事業者が航空系と非航空系事業を一体経営すること(コンセッション)が可能となった。

図-1 空港経営改革の概要


図表:国土交通省作成


図-2 空港経営の一体化とそのメリット


図表:国土交通省作成


2. 空港におけるコンセッションの導入と各地域における取り組み

⑴ 仙台空港

国管理空港の民間委託の第1号案件である仙台空港については、地元宮城県が民間委託による仙台空港の活性化を「震災復興の起爆剤」と位置付け、早くから官民の関係者による検討を進めてきた。

その後、国は平成26年6月に「仙台空港特定運営事業等募集要項」等を公表し、仙台空港の新たな運営の担い手となる民間事業者の公募・選定手続きを進め、平成27年9月に東京急行電鉄を代表企業とし、前田建設工業、東急不動産、豊田通商などを構成員とするグループを優先交渉権者として選定した。

同グループは平成27年11月に仙台空港を運営させる特定目的会社(SPC)として「仙台国際空港株式会社」を設立し、平成28年7月より空港運営事業等を開始している。

仙台空港では、新たな運営事業者の下、新規の国際線の就航や増便、国内線でも就航再開やLCCによる仙台空港の拠点化が実現するとともに、仙台空港から東北地方の各地域を結ぶ2次交通であるバス路線が充実し、航空旅客数に連動した新料金の導入、LCC向け旅客ターミナルの供用開始など、民間ならではの創意工夫による取り組みが行われている。こうした取り組みもあって、平成29年度の利用客は344万人、とりわけ国際線の利用者数は運営開始前である平成27年度と比較して約1.75倍の増加となっているとともに、平成30年冬ダイヤ(10-3月)の週当たりの便数は400便、これも民間委託前の平成28年冬ダイヤと比較して36便増と、民間委託の成果が着実に出てきているものと考えている。

図-3 一体的な空港経営が目指す一つのモデルケース


図表:国土交通省作成


図-4 仙台空港の運営委託による成果


図表:国土交通省作成


⑵ 高松空港、福岡空港、その他の空港の動き

仙台空港に続き、その他の空港においても民間委託の動きが活発化している。

国管理空港に関しては、高松空港が第2号案件として、三菱地所、大成建設、パシフィックコンサルタンツ等が出資する高松空港株式会社により、平成30年4月から空港運営事業を開始している。高松空港では、新たな事業者による運営から1年もたたないうちに、駐車場への事前精算機の導入や立体駐車場の建設など民間事業者ならではの取り組みが実施されるとともに、香川県とのパートナーシップ協定を締結し、エアライン誘致や空港を含めた地域の活性化に向けた官民連携での活動が始まっている。

続いて、福岡空港は、福岡エアポートHD、西日本鉄道、三菱商事、Changi International(シンガポール)、九州電力からなるコンソーシアムが優先交渉権者となり、福岡国際空港株式会社を設立した。現在、平成31年4月の運営の開始に向け準備を進めているところであり、30年後の旅客数(国内・国際含む)約3,500万人を目標に掲げ、地域と連携した積極的な取り組みが期待されている。

現在、優先交渉権者の選定手続き中の空港として、熊本空港(平成32年4月運営開始予定)と北海道内7空港(平成32年度中に順次運営開始予定)があり、広島空港についても今後手続きを開始する予定である。

加えて、地方管理空港においても同様の動きがあり、神戸空港、静岡空港等においても、運営を開始、または開始予定という状況である。

図-5 高松空港の運営委託による成果


図表:国土交通省作成


図- 6 福岡エアポートHDグループの提案概要


図表:国土交通省作成


図表:国土交通省作成


図表:国土交通省作成


図表:国土交通省作成


3. 今後の展開

前述の例を見ても、現在のところ、コンセッション方式による民間事業者による運営を導入した空港について、民間の創意工夫を生かした運営が進められ、地域活性化に効果があると一定の評価をしている。こうした取り組みを着実に進める上で、新たな運営の担い手となる民間事業者に引き続き興味関心を持たれるよう、空港コンセッション検証会議という有識者会議を設置した。本会議は、国管理空港の空港コンセッションについて、過去の案件を踏まえ、目的の再整理を行うとともに仕組みの改善策の検証を行い、今後の案件へ反映することを目的としている。この検証結果を今後続いていく案件に反映させていくことで、多くの民間事業者が応募しやすいものとし、競争性を確保していくということがより良い提案を引き出すためにも非常に重要である。そうした意味でも、事業プロセス全体について、管理者と応募者双方の負担軽減にも留意して不断に見直しを行っていきたい。また、国管理空港だけではなく地方自治体が管理する空港も含め、全国に取り組みを波及させ、空港コンセッションを促していきたい。

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