神田エリアの再開発・ 地域活性化事業

住友商事株式会社
ビル事業部 神田街づくり推進チームリーダー
上野 禎臣

1. 神田エリアの再開発の概要と現在の状況

当社は、歴史を紡ぎ続けてきた街、神田のさらなる発展に向けて、「行きたい街」「住みたい街」そして「働きたい街」をスローガンに、オフィスビルとマンションの両面で街の魅力を発信できる開発を行っています。

最近竣工(しゅんこう)した代表的なオフィスビルとしては、旧博報堂ビルを一部復元したテラススクエア(2015年4月竣工)などがあり、現在は2020年2月竣工を目指して「神田錦町2丁目計画」を進めています。この計画では、東京電機大学と神田警察署の跡地に地上21階建ての大規模複合ビルを建設予定であり、オフィススペースの他にライブ演奏も可能な多目的ホールや商業・イベント広場などを設ける予定です。

神田エリアにおけるマンションの魅力は都心に近いことであり、まさに「職住近接」を実現するものです。当社は神田エリアでのマンション供給では先駆け的な存在であり、クラッシィハウス神田(2013年竣工、49戸)、クラッシィハウス神田美土代町(2015年竣工、70戸)などの実績があります。現在はクラッシィハウス神田錦町(2018年4月中旬竣工、68戸)を分譲中ですが、DINKSを中心に購買意欲が高く、ほぼ完売となっています。

2. 神田エリアは住友商事の第二の創業地

神田エリアには三井住友海上火災保険、毎日新聞社、ミズノ、パシフィックコンサルタンツなどの拠点もあり、一つのビジネス街になっています。

当社が1966年に初めて東京に支社を設けたのは神田美土代町であることから、神田を「第二の創業地」と位置付けています。その後、1970年に竹橋に新住友商事ビルが竣工して、大阪、東京の2本社体制が始まりました。また、同年には相互貿易を合併し、1970年代半ばには海外拠点数が100ヵ所を超えるなど、大きく飛躍することができました。その後、当社は2001年に現在の中央区晴海に本社を移転しましたので、分散されていた本社やグループ企業が入居していたビルを賃貸ビルとし、本格的に神田エリアでのビル賃貸事業を始めました。当社は創立100周年の節目となる2019年を目前に、2018年秋には神田に隣接する大手町に戻る予定です。

3. 街づくりの推進と地域活性化

神田のもう一つの側面は文化です。明治に入ってからは、さまざまな大学が集まる文教地区となり、古書店街などもあって、かつて神保町は学生街といわれていました。今は、スポーツ店が並ぶスポーツの街でもあり、古くからの楽器店などもある音楽の街でもあります。そして、神田祭に代表される江戸時代からの文化も根付いている街でもあります。

当社はさまざまなイベントへの協賛・企画を通じて、市民参加型の「活動の場」づくりを推進しています。これらは、地域住民やワーカー、学生の皆さまに神田への「親しみ感」をいっそう持っていただける機会の提供と同時に、神田エリアの魅力の再現・再興も図っているわけですが、2017年11月に開催されたイベントを幾つか紹介します。

(1)COFFEE COLLECTION around KANDA NISHIKICHO 2017 AUTUMN


COFFEE COLLECTION around KANDA NISHIKICHO 2017 AUTUMN

COFFEE COLLECTION実行委員会が主催。テラススクエア、錦町トラッドスクエアで開催したもので、GLITCH COFFEE& ROASTERSなど五つのバリスタが参加。「EXPERIENCE NEW COFFEE」をコンセプトとしてスペシャルティコーヒーのおいしさや品質の違いをさまざまな形で体験できるフェスティバルです。当社の他にHARIO、三省堂書店、CafeSnap、安田不動産などが協賛し、千代田区、千代田区観光協会が後援しました。6回目となる2018年は4月28-29日の開催で、日本で初めてウインナコーヒーを出した喫茶店「神保町ラドリオ」店長によるトークセッションや地元の老舗古書店、小宮山書店にも出店いただきました。

(2)OUR MUSIC FESTIVAL 2017(神田錦町音楽祭)


OUR MUSIC FESTIVAL 2017(神田錦町音楽祭)

OUR MUSIC FESTIVAL実行委員会が主催。テラススクエア、GOOD MORNINGCAFÉ錦町野外広場L'Astre( アストル)、TOKYO PRODUCERS HOUSEなど数ヵ所で開催しているもので、神田の街に音楽を開放し、人々が音を出す喜びや楽しさを感じる契機となる「場」を提供しています。地域で暮らし、働く市民が実行委員となってつくり出す音楽フェスティバルで、演奏者はプロ、アマが交ざっており、2017年に初めて開催しました。今後は神田錦町2丁目計画のイベントホールとも連携したいと考えています。

(3)ensemble - Urban Vineyard Kanda - Nishikicho


ensemble - Ur ban Vineyard Kanda - Nishikicho

テラススクエアにて、周辺企業・店舗であるSAKAKI LAB、SAYSFARM、五割一分、土ノ日青二才、関山米穀店の企画協力を得て、2017年11月10日に一夜限りのワインイベントを開催しました。これは、富山県氷見市のワイナリー「SAYSFARM」とテラススクエアの共同で、テラススクエアの屋上農園にブドウ品種「ピノ・ノワール」を植樹し、SAYSFARMの栽培監修の下で育てていくプロジェクトの一環です。ビルの屋上でブドウを育てる例は日本ではあまりありませんが、2020年ごろにワイン1たる分(ボトル300本)の醸造を予定しており、毎年、近隣の方々に成長を楽しんでいただくワインイベントを実施していく予定です。

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