豊田通商グループの自動車リサイクルビジネス

豊田通商株式会社 金属本部 環境・リサイクル事業推進部 非鉄金属第一部

はじめに

日本国内の2015年度新車販売台数は500万台を超え、乗用車だけでも6,000万台以上が保有されている。自動車を構成する各パーツには、鉄鋼をはじめ、アルミニウムやプラスチックなどさまざまな素材が使用されている。当社は、日本国内のモータリゼーションが進んでいた1970年に、廃車となる使用済み自動車のリサイクル・再資源化を目的に、トヨタ自動車、愛知製鋼と共にシュレッダー事業を行う豊田メタルを設立。以来、自動車に使用されている素材・資源のリサイクルはもちろん、再資源化が難しい素材のリサイクルや効率的な再資源化の研究・開発など、循環型社会の実現に取り組んでいる。

当社が携わっている自動車関連のリサイクル事業は大きく分けて二つある:自動車メーカーや部品メーカーで自動車製造・加工の過程で発生する加工スクラップのリサイクル事業と、使用済み自動車から発生する老廃スクラップのリサイクル事業である。

加工スクラップリサイクル:グリーンメタルズ事業とアルミ溶湯事業

自動車のボディを型抜きした後に残る打ち抜きスクラップなど、自動車生産段階で発生する鉄やアルミスクラップなどを「加工スクラップ」と呼ぶ。豊田通商は、これらを回収し、再利用を促進する加工処理を行うグリーンメタルズ事業を世界12ヵ国24拠点で展開している(2016年2月現在)。回収した金属スクラップは品種(形状、サイズ、品質成分)などにより豊田通商株式会社金属本部環境・リサイクル事業推進部非鉄金属第一部選別・保管し、納入先の鉄鋼メーカーや鋳物メーカーの用途やオーダーに合わせて、再資源化しやすく加工(圧縮・切断)され納入される。最近では、金属だけではなく、工場発生廃棄物全般の管理業務も請け負っている。

また、加工スクラップの中でもアルミニウムのリサイクルは、当社関連会社の豊通スメルティングテクノロジーを中心としたアルミ溶湯事業チームが担っている。アルミは燃費向上のため自動車を軽量化するのに利用されている素材の一つである。同事業では、アルミスクラップとして回収・溶解され、インゴット(塊)になったアルミが自動車メーカーや、自動車部品メーカーで再度溶かされて使用されることに着目。回収されたアルミスクラップを適正処理し、不純物などを取り除いた上で、溶けた状態のアルミを顧客のニーズにあった成分・温度に調整して提供している。そのため、顧客工場内で再度アルミを溶かす工程が省略できるとともに、環境負荷の低減にも寄与している。

使用済み自動車リサイクル

1970年に豊田メタルを設立以来、当社は使用済み自動車リサイクル事業を拡大し、現在、99%が再資源化されている自動車資源のリサイクル率向上に寄与している。図中にある、ELV(End of Life Vehicle:使用済み自動車)リサイクルバリューチェーンは、使用済み自動車が再資源化される過程で、当社グルーブが取り組んでいるリサイクル事業を示している。

廃車となった自動車は、シュレッダーで破砕される前にフロンガスの抜き取りやエアバッグの取り外しなどの前処理が行われる。エンジン等の機能部品やドア・バンパー等の外装部品など中古部品としてリユースできるパーツは取り外されて流通販売される。豊田通商グループでは、関連会社のJARAがこの部分を担い、自動車のリサイクル率向上に貢献している。また、排ガス触媒として使用される貴金属を回収・リサイクルを行う事業は豊通リサイクルが行っている。

これらの部品等を取り除いた自動車は破砕され、鉄くず、アルミや銅などの非鉄金属の他、プラスチックなどに分別され、鉄は鉄鋼メーカーへ、アルミは前述の豊通スメルティングテクノロジーに運ばれるなどして再資源化される。金属などを回収した後に残る残ざん渣さは、サーマルリサイクルの熱原料として使用されていたが、この残渣から再度資源化ができないかとリサイクルの高度化にも取り組んでいる。現在、シュレッダーでは取り切れなかった銅を分別し高純度の銅資源として資源リサイクルを行っている。



循環型社会を目指して

自動車は、安全性・環境性・利便性などの観点からさまざまな部品が改良され、それに伴い、自動車を構成するパーツの素材も以前の鉄鋼主体からアルミニウムやマグネシウム、炭素繊維などさまざまな素材の使用・開発が進んでいる。それに伴い、リサイクルにも新たな技術が必要となる。豊田通商グループでは、ハイブリッド自動車のハイブリッドバッテリーのリサイクルを開始。

資源の枯渇や地球規模での低炭素社会実現に向けてCO2削減が必要となってきている中、国内だけでなく海外でも自動車のリサイクルの必要性は高まってきている。豊田通商グループとして、今後も技術力を磨き、リサイクル事業を通じた社会貢献、循環型社会の実現を目指していきたい。