兼松が展開する素材ビジネス

兼松株式会社 機能性化学品部長
服部 直紀

兼松グループの化学品部隊が行っている素材ビジネスにつき、ご紹介させていただきます。

当社グループでは、兼松㈱機能性化学品部、子会社である兼松ケミカル㈱、孫会社である兼松ウェルネス(株)にて、それぞれ特徴のあるビジネスを行っています。

兼松ウェルネス(株)


ウェルネスウェイビーミルク(免疫ミルク商品)

「人々の健康を支える」という理念の下に設立され、医療情報事業部と健康食品事業部でビジネスを展開しています。

医療情報事業部では、同様の理念を持つ製薬会社や医療機器メーカーのサポート業務を行っています。その他、各種アプリやWebシステムの開発や健康ポータルサイト「Health Scramble」等 Webサイトの構築・運営、医療翻訳や喫煙検査キットの販売等を行っています。

健康食品事業部では、生まれたばかりの赤ちゃんの健康を守る母子免疫の考え方を応用し、大人の健康にも役立つ製品として開発された「スターリミルク」およびその関連商品、その他健康食品を販売しています。病院・薬局で販売する卸売りだけでなく、お客さまの声を直接聞ける通信販売も行っています。ニュージーランド政府、現地乳業メーカー、現地および国内研究機関とも共同し、次世代のための新素材も開発しています。


兼松ケミカル(株)


高麗人参ゼリー(30包入り)

化学品全般を取り扱う商社ですが、ライフサイエンス分野のビジネスにも注力しています。その中でも医薬品部隊は、医薬品原薬および製剤、医薬中間体等の輸出入業務を行っています。専門性を持ったスタッフには薬剤師も多く、マスターファイルの登録を含め日本国内での薬事にも対応しています。

また、機能性食品関連部隊では、日本国内向けには、スポーツサプリメントを中心に飲んだ人が体感できるようなエビデンスのそろった素材を取り扱っています。これまではボディービルダーのようなヘビーユーザーが対象となっている商品が多かったのですが、筋力をつけて痩せやすい体質づくりを目的としたダイエット用途や高齢者のロコモティブシンドローム・サルコぺニア対策としても活用できます。

また、従来高価であった天然素材を微生物等による新たな製法で製造する海外メーカーと協業し、より多くの人に使っていただける価格帯の素材開発も行っています。「天然=安全」と考えがちですが、実際に天然のものの場合、その採れた環境次第では重金属や抗生剤、残留農薬といった懸念もあります。一方、微生物等を使い、完全に密閉された場所で製造する場合、そのような懸念もなく、不純物も少ない素材を安定的に製造することが可能になります。

海外展開としては、日本でのみ活用されていた素材を、米国のGRAS(Generally Recognized As Safe:一般に安全と認められる)、欧州の Novel Food、ブラジルのANVISA等の法制度に対応すべく安全性データを収集し、許認可取得のサポートを行っています。社内の専門家に加え、米国の専門コンサルタントと提携して専門性の高いサービスを提供しています。

各国での許認可取得後は、当社海外ネットワークを活用し、販売のお手伝いも行います。


兼松(株)機能性化学品部


ウェルネスレモンバーム

石化原料、基礎化学品、潤滑油、特殊(遮熱)塗料から医農薬中間体、太陽電池等、幅広い商品の取り扱いを行っています。

高い耐久性を持つ環境にやさしい高日射反射率の遮熱塗料「ミラクール」を主に東南アジア向けに販売しています。表面に塗装するだけの簡単施行で遮熱効果が得られる素材で、温暖化対策を含め、今後の需要が期待されています。

独自の素材開発の例として、大王製紙㈱と共同で製紙パルプ製造時の副産物である黒液に大量に含まれるリグニンを原料として製造する軽量中空炭素微粒子リグニンブラックの開発があります。リグニンブラックは、カーボンブラックの代替として、ゴムやプラスチックの軽量化や特性の改善が期待される素材です。カーボンニュートラルな素材でもあり、環境対応素材としての展開を期待して開発したものです。

ライフサイエンス分野では、これまで携わってきていた低分子医薬品およびその中間体の取り扱いだけでなく、バイオ技術を活用した高分子医薬品の分野での展開を考え、米国 iBio社との協業を開始しています。iBio社の技術を使えば、タバコの葉を使って目的とするタンパク質やペプチドをつくることが可能になります。例えば、インフルエンザのワクチンをつくる場合、通常の鶏卵法では半年から 1年前から準備が必要となるため、流行するタイプを予想して準備する必要がありますが、iBio社の技術ではタバコさえ育てておけば、1ヵ月弱で製造が可能です。ワクチンだけでなく、さまざまなタンパク製剤の製造が可能であり、米国内では既に臨床試験も行われています。バイオシミラーやバイオベターと呼ばれる高分子医薬品のジェネリック製造も可能となります。

iBio社は世界最大クラスの植物工場を保有しており、試験レベルから商業生産レベルに対応が可能です。国内の製薬会社・研究機関と連携しながら、国内での展開を検討中です。

今後さらにグループ各社の強みを活かしつつ、お取引先各社に役立つ素材や技術を紹介できればと思います。





iBio社の植物工場
タバコの育成に最適な紫の光となっています。温度や湿度も管理し、必要最低限の水やエネルギーを使用するエコな工場です。

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