三井物産の次世代幹部養成講座について

三井物産株式会社
人事総務部 部長補佐
野田 謙二

グローバルリーダー育成プログラム


当社が求める人材像は、「挑戦と創造」を具現化できる人材であり、その軸に今も昔も変わりはありませんが、商社を取り巻く環境変化から、グローバルという視点が今まで以上に重要な意味を持つようになってきました。
経済環境面では新興国の躍進があり、商売形態の面では資源分野を含む事業投資も増え、これが商社の収益構造にも変化をもたらしています。このため、商社が人材を投入する商域や地域も多様化しています。日本以外での事業展開が増す中で、それぞれの地域に根付いた商慣習・文化への理解が要求され、従来のように日本からの視点だけで海外でのビジネス展開を完結するには限界が生じています。これを支える世界各国の社員についても、国籍や採用地を超え、相互理解と忌憚(きたん)のない意見交換を通じて、会社としての総合力を強化することが重要です。こうした対応を支える人材を育む施策の基本は現場での業務経験が大部分を占めますが、それを補完する研修として、ハーバード・ビジネススクールの協力を得て、次世代幹部養成講座 Mitsui-HBS Global Management Academy(以下GMA)を開講しました。

本店採用社員だけではなく、当社では海外採用社員の研修を従来からも行っていましたが、「本店採用社員」と「その他社員」の間に垣根があった現実は否めません。GMAでは、参加者の約半数を海外の「現地法人」「関係会社」「パートナー企業」からも召集し、このような垣根を取り払うことで多様性(国籍ベースで12ヵ国)を確保しつつ、三井物産としての経営理念を大切にしました。この研修から、自らの考えや信念をまとめて説明できる能力を持ち、多様性を受け入れる感性と人の心が分かる「徳」の大切さについて気付きを得ることを通じてグローバルに戦え、かつ周囲との信頼関係を築ける社員を育成することが狙いです。


GMAボストンセッション終了直後の参加者

第1回目のGMAは、5月の日本セッションと7月のボストンセッションを終えることで1つの区切りとなりました。国という概念を超えて選抜された参加者が、当社とハーバードで用意したさまざまなケースを通じて正面から本音の議論をする場となったことは大きな収穫でした。自らの思いを共通語となった英語で的確に気後れすることなく相手に伝え、かつ相手の信頼を得ながら理解し合うことは容易ではありません。また価値観の違いから参加者同士が衝突する場面もありましたが、自国の暗黙知だけでは通用しないことを再確認し、グローバルに活躍する上での大切な経験を積む良い機会となりました。今後は、GMAに限らずいろいろなレベルで「本店採用社員」と海外で採用した「現地法人」「関係会社」の社員を融合させた人材育成の場を増やすことが課題です。価値観の違いをお互いに実感し、かつそれを超えていく経験を得る機会を、若い世代にも増やし、研修と実務経験を通じて、グローバルに通用する人材を継続的に育成する仕組みづくりを続けます。

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