日本貿易会常任理事に聞く2017年の展望

2017年の世界経済の展望および経営の抱負等について、日本貿易会常任理事へアンケートを実施しました。
①2017年の経済、ビジネス環境を展望する上で、注目する要因(けん引・懸念材料)
②2017年に注力する点および経営の抱負
(社名五十音順)

稲畑 勝太郎 稲畑産業株式会社 社長


①トランプ政権後の米国の経済政策に注目する。あまり極端な方向に動く可能性は低いと思うが、為替や株価が大きく振り回される場面が出てくることを懸念する。また、依然としてくすぶり続けるISをめぐる治安問題も懸念材料である。一方で政権基盤が安定化に向かいつつある中国は、足元の元安傾向は懸念されるものの、2017年度も世界経済をけん引するものと期待する。

②2017年から始まる新たな中期経営計画を策定中だが、各部門における経営資源の配分に、より明確なメリハリをつけると同時に、全社的なポートフォリオの構成の見直しを図り、成長に向けての変革を加速させたい。またグローバル人財の育成についても引き続き取り組みを進めたい。

牧野 明次 岩谷産業株式会社 会長


①米国の新大統領選出および英のEU離脱など大戦後の世界秩序の変更リスクなど不確実要素があるものの、世界経済は復調が期待されている。特にASEAN経済圏の成長加速と、国内の東京五輪を背景とした設備投資の拡大、再生可能エネルギー・水素などの新エネルギー革命の更なる進展が大いに期待され、先行きは明るい。

②昨年発表した2016-18年度の中期経営計画「PLAN18」を確実に推進していく。国内では、LPガス事業の経営基盤強化、都市ガス小売り自由化を機会としたビジネスの拡大、東京五輪に向けた水素ステーション、水素製造プラントの一層の整備、新事業開発を図る。加えてエネルギー、産業ガス、マテリアル、食品分野でのASEANを中心とした海外事業拡大に注力する。

下嶋 政幸 兼松株式会社 社長


①米国トランプ新政権による政策動向を注視し、米国および世界経済に及ぼす上振れ・下振れ双方の影響について見極める必要がある。特に原油については、OPECによる減産実施合意により価格が上昇傾向にある一方、トランプ政権下におけるシェールオイル・ガスの生産方針などがどのように影響していくかにも注目したい。

②2019年3月期までの中期ビジョン「VISION-130」が残すところ2年となる。原油価格低迷や為替相場変動の影響等により我慢の2016年だったが、2017年は反転攻勢をかけ、目標達成に向けまい進する。ICTソリューション、モバイルなど主力分野での収益拡大に加え、グローバル・モータリゼーションの進展等の商機を逃さず、着実な成長につなげたい。

三輪 芳弘 興和株式会社 社長


①米国トランプ新大統領の政策の不確実性とドル・円相場、欧州の政治的リスクと銀行の不良債権リスクが懸念材料。特に独・仏の選挙結果およびBrexitの行方とその影響は注視が必要だ。一方、AIやVR/AR、IoTといったテクノロジーの進化は確実に加速されるため、それらを成長機会としてどう活用するかが成否に大きく影響する。2017年は変化への対応の機敏さが一層重要な年となるだろう。

②2016年はBrexitや米国大統領選挙など、予想(期待?)を覆す事象が続いたが、2017年も変化が連続する年と想定している。変化はチャンス。『健康と環境』をテーマとする当社は2017年、医薬品分野での開発・製造・販売のグローバル化を一層加速するとともに、環境・省エネ商品の拡充・海外展開や、身近なアパレル製品から大型船舶などの輸出入で、世界の人々の暮らしと産業のニーズに応えたい。

圡井 宇太郎 CBC株式会社 社長


①トランプ大統領の保護主義的な政策がアジアを取り巻く外交・軍事バランスに与える影響や貿易協定の見直し等による新興国経済および先進国のグローバル戦略にも影響が懸念される。一方で米国の景気拡大が見込まれ、為替も総じてドル高基調が続くとみられることから、日本においても景気は緩やかながら上向きに推移すると思われる。

②2017年度も引き続きグローバルベースで医薬関連事業、環境対応型製剤事業(IPM/総合的病害虫管理)に注力するとともに、中国での富裕層向け介護関連ビジネスやアジアでの食品事業の推進・拡大に向けて、積極的にM&Aや資本投資、事業提携等を行いながら、ニッチでユニークな事業を確立していく。

織田 直祐 JFE商事株式会社 社長


①中国鉄鋼メーカーの供給過剰の状況は短期間で解消しないと思われる。そうした中、国内マーケットは、東京オリンピックに向けた各種のインフラ整備が一定の経済効果を生むと考えられる。一方、世界経済は、トランプ政権下の米国経済の影響をはじめ、不確定要因が多く、動向を十分注視しつつ機動的に対応していく必要がある。

②将来の成長に向けて、経営戦略を明確にし、スピード感を持って推進していく。国内外における既存事業の機能を強化することで、お客さまにとって真に価値ある提案を行っていく。また、新たな事業領域、地域へもおのおのの取り組みの意義を確認しつつ、積極的にチャレンジしていくことで収益拡大を図り、JFEグループへの貢献をさらに高めていく。

先濵 一夫 蝶理株式会社 社長


①米国経済は引き続き堅調と思われるが、米国新大統領の経済・貿易政策とその改善に注目する。また、当社の基盤である中国をはじめとした新興国経済の動向にも留意する。大きく変動する為替相場が企業業績に与える影響にも注意が必要。国内市場は個人消費の低迷により回復の弱さが懸念される。

②現中期経営計画「躍進2016」は2016年度で終了する。2017年度は新中期経営計画で挑む。「躍進2016」の基本戦略である「連結経営基盤強化」、「人的基盤強化」、「新規開発・M&A」をベースとして更なるグローバル展開を志向する。高機能・高専門性を基盤としてグローバルに進化する企業集団を目指す。

朝倉 研二 長瀬産業株式会社 社長


①2016年の米国大統領選挙の結果を受け、世界経済の不透明感が増大している。新政権の政策運営を見極める2017年前半は、株式・為替共に不安定なまま推移すると予想。また、アジア圏では、中国の外交・経済政策に注目する。一方、国内では東京オリンピック、インバウンド等による内需回復に期待。

②2016年度にスタートした中期経営計画「ACE-2020」の目標達成に向け、基本方針である「収益基盤の変革」および「企業風土の変革」を一段と加速させる。特に注力領域であるライフ&ヘルスケアやエレクトロニクス分野では、積極的な経営資源の投入を行い、グローバル展開を一層進展させる。環境の変化にスピーディーに対応できる体制構築にも注力。

樋渡 健治 日鉄住金物産株式会社 社長


①東京オリンピックに向け、首都圏を中心とした公共投資や再開発案件の増加による景気の押し上げが期待される。ただし、米国でのトランプ大統領の就任や、欧州で連続する国政選挙において移民や所得格差の問題から想定していない結果が惹じゃっ起きされ、世界的に市場が混乱する政治的リスクが内在する。また、一次産品価格の変動が企業活動に及ぼす影響にも注視が必要。

②海外において上述の政治的リスク要因等もあるが、2016年以上に四つの事業がグループの一体感を持った運営を心掛け、厳しい環境の中でも成果を挙げていきたい。安全、安心、コンプライアンスや、ワーク・ライフ・バランスの実現を通して社員にとってやりがいのある働きやすい会社をつくり上げていく。

古川 弘成 阪和興業株式会社 社長


①日本経済は激動する欧米の政変や周辺諸国の地政学的な問題、そして中国の過剰設備による経済的な影響を受けつつも、国内において低成長ながらも堅調に推移しており、2017年は景気の底堅さをあらためて認識する年になるものと考える。

②第8次中期経営計画で掲げるSTEADY、SPEEDY、STRATEGICに基づくシナリオを確実に実行し、目標の早期達成を目指す。特に連結子会社の収益改善、特徴ある資源投資、そして既存投資からのリターンの回収に注力する。M&A+A(合併と買収プラス戦略的業務提携)での成長戦略は継続し、HKQC(流通における業務の品質向上)活動を浸透させ、当社の企業風土として根付かせていく。

宮﨑 正啓 株式会社日立ハイテクノロジーズ 社長


①日本では個人消費が伸びを強めるとともに、政府主導の大型経済対策により景気は緩やかな回復が見込まれる。米国においては、長期金利上昇などにより2017年後半にやや減速するとみられるも、景気回復は持続すると期待される。一方欧州では、英国のEU離脱決定による先行き不透明感の高まりから景気後退が予想され、世界経済の先行きへの不安が広がっている。

②日立ハイテクは、2016 年度から2018 年度までの「中期経営戦略」を策定、推進している。2017年も引き続き「さらなるお客様志向への変革」「自律分散型組織への変革」を掲げて「Challenge to Change(変革への挑戦)」を図り、主力事業で継続的に収益を確保しつつ、次世代につながるリソース増強・投資を推進する年とする。

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