日本貿易会常任理事に聞く2012年の展望

稲畑産業株式会社 社長稲畑 勝太郎
岩谷産業株式会社 社長牧野 明次
兼松株式会社 社長下嶋 政幸
興和株式会社 社長三輪 芳弘
CBC株式会社 社長圡井 宇太郎
JFE商事ホールディングス株式会社 社長福島 幹雄
住金物産株式会社 社長天谷 雅俊
蝶理株式会社 社長山﨑 修二
長瀬産業株式会社 社長長瀬 洋
阪和興業株式会社 社長古川 弘成
株式会社日立ハイテクノロジーズ 社長久田 眞佐男
三井物産株式会社 社長飯島 彰己

2012年の世界経済の展望および経営の抱負等について、日本貿易会常任理事へ
アンケートを実施しました。
① 2012 年の経済、ビジネス環境を展望する上で、注目する要因(けん引・懸念材料)
② 2012 年の注視、注力する点および経営の抱負
(社名五十音順)


稲畑 勝太郎 稲畑産業株式会社 社長


①中国、インドは引き続き高い成長率を保ち、新興アジア全体として世界経済をけん引するものと思われる。またメキシコ、ブラジルなど中南米諸国も治安問題やインフレ懸念を抑えることができれば、安定した発展が期待される。一方で、ユーロ危機をはじめ、金融問題の再燃が一番の懸念材料である。また国内経済では、行き過ぎた円高やエネルギー問題もマイナス要因。

②中期計画である「IK2013」の達成に全力を挙げる。具体的には、アジア地区へのさらなる経営資源の投入、南米など新興国市場への取り組み、グローバル人材の育成に特に注力する。また、不安定な経済情勢に鑑み内部統制の一層の強化に努めるとともに、経営理念・価値観の浸透を推進したい。


牧野 明次 岩谷産業株式会社 社長


①欧州の金融不安、円高の継続による国内製造業の空洞化に加え、朝鮮半島情勢の不安定化などを懸念する。一方で、震災の復興需要、自動車をはじめ輸出の回復等がけん引役となり、年度後半には景気が回復軌道に乗ることを期待する。LPガスの輸入価格は、原油市況に連動して高値圏で推移しているが、実需を無視した投機マネーの資源市場への流入による大幅な価格変動は大きなリスク要因。

②震災により、エネルギー複合化の重要性と分散型のLPガスの有用性が再認識された。大規模な災害にも耐え得る自家発電を備えた基幹センターを設け、電気や都市ガスとの併用を提案する。また、究極のクリーンエネルギーとして水素の本格普及を図るべく、さらなる拠点整備に努める。
レア・アースなど希少資源の確保と安定的供給に向け、新たな鉱物資源の権益獲得にも取り組みたい。


下嶋 政幸 兼松株式会社 社長


①欧州債務危機の影響が、欧州を主要な輸出先としている中国などアジア新興国へ波及することが懸念される。また、中国の不動産規制や、新興国における関税引き上げなど政策変更の動きも注視したい。さらに、円高による競争力低下への対応が必要となろう。国内においては復興需要や環境対応ビジネスなどが経済を下支えすると思われる。

②2012年度は、現在推進中である3 ヵ年の中期経営計画総仕上げの年となる。不透明な経済環境が予想されるが、引き続き、食資源の確保および安定供給、ICTソリューション、EV関連ビジネスなど、当社の得意分野あるいは今後の成長分野を強化していく。また、アジアを中心とした海外展開にも兼松グループとして取り組む。


三輪 芳弘 興和株式会社 社長


①政府が、大震災後の効果的なエネルギー対策を講じ、社会保障制度や税制改革など、強いリーダーシップを発揮することが望まれる。欧州経済危機など円高が継続することが予想され、多様な経済対策を推し進めることが必要である。新興国の成長および環境分野など、新たなフィールドでの事業が世界経済を支えることになるだろう。

②世界経済の動向に注視しつつ、欧米・アジア地域での「医薬品関連事業」のグローバル展開と、「LED」、「オーガニック」、「EV」、「エコエネルギー事業」など、環境関連ビジネスモデルの構築および「インフラ整備事業」に、積極的に取り組んでいきたい。「健康と環境」をテーマに、さまざまなフィールドでグローバルな事業展開を検討している。


圡井 宇太郎 CBC 株式会社 社長


①欧州の財政再建政策が新興諸国の財政問題やさらなる世界経済の停滞化につながること、世界主要国の為替政策等に見られる保護主義的な色彩が強まっていることが懸念される。2012年は全体的に厳しい環境が予想されるが、そのような中でもアジアを中心とした新興国が経済をけん引していく構図は変わらないと思われる。

②事業分野では、医薬関連ビジネスをさらに戦略的に推進していくと同時に新たなマニュファクチャリングビジネスの構築を模索していく。海外においては、2012年もアジアを中心とした新興国市場を重点的に深耕するとともに世界各エリアと連携を図りながら、海外−海外間のビジネス拡大に注力する。


福島 幹雄 JFE 商事ホールディングス株式会社 社長


① 欧米経済のさらなる停滞感、また欧州経済の失速により、順調な成長を遂げてきた新興国の輸出へのマイナスの影響、円高の影響による製造業の海外シフトの加速および日本製品の競争力の低下、原材料価格の動向、これらの事項につき、注視する必要があると考えている。一方、中長期的視点では、世界の人口増に準じて、鉄の需要は増加していくと想定しており、この動向にも注視していく。

②中長期的に、鉄鋼製品の海外需要は増大すると考えられ、これら需要を捕捉するため、既存の海外営業拠点をさらに強化していくとともに、既存設備の補強・増強も含めた鋼材加工センターの一層の充実を図っていく。また、鉄鋼原料については引き続き、新規仕入れソースの開拓および優良案件への投資を、積極的に進めていく。


天谷 雅俊 住金物産株式会社 社長


①欧州の債務危機に端を発する世界経済の減速、タイ国の洪水による影響、恒常的な円高と懸念材料が多く、内需の減少、製造業の海外移転はさらに進む。事業の構造改革を継続して実行し、国内事業の競争力を再強化するとともに海外事業展開を加速させる。

②鉄鋼、産機・インフラ事業、繊維、食糧の4つの事業がバランスよく利益を確保し、相互に補完しながらグローバルな成長を遂げていく体制を強化する。それぞれの事業分野において、顧客直結の価値創造型・加工メーカー型機能を拡充し、専門性をさらに深め、複合専業商社としての強みを発揮していく。


山﨑 修二 蝶理株式会社 社長


①当社最大のけん引材料は引き続き中国経済。金融引き締め・欧州経済悪化による輸出不振等の懸念材料で多少の成長率下落(調整)はあるものの、既に十分に巨大化した中国市場の魅力は衰えない。最大の懸念材料は政治不信・社会不安に起因する日本人としての活力と誇りの欠如。

②2012年度は当社の新中期経営改革の初年度。「守り」(コンプラ経営、合理的効率的経営の徹底)と「攻め」(新規事業開発と重点市場開発、人材の育成と活性化の推進)を同時に実行。


長瀬 洋 長瀬産業株式会社 社長


①現時点で2012年のビジネス環境の展望については懸念材料ばかりのようにみえる。特に長引くと思われる欧州、米国などの不安定さに加え、中国など今までのけん引役がそうでなくなりつつある。為替や電力問題などで国内の製造業の空洞化も加速し、内需も低迷が続くと思っている。ブラジル、インドといった新たなけん引役の台頭に加え、ASEANの底堅さに注目している。

②今年は新たな中期経営計画のスタート年度に当たる。従来から推し進めてきた「変革」をさらに加速させ、バリューチェーンにおけるグループ内の機能を統合、ブラッシュアップしグローバルに展開を進める。特に、昨年スポンサーになった林原グループを核にしたバイオ分野と環境・エネルギー分野でのユニークな存在感を高めていきたい。


古川 弘成 阪和興業株式会社 社長


①欧州のソブリンリスクが大きな懸念材料。世界経済に与える影響も大きい。同時不況に陥らぬようなグローバルな協力の枠組みを期待する。中国経済が減速しているが、中国人民銀行の金融政策に注目している。緩和政策にギアを切り替えたが、さらなる緩和が必要だろう。世界経済のけん引として期待するのは中国、アセアン、インド等の新興国。

②第6次中期経営計画をベースに戦略を進める。省資源、省エネルギー関連がテーマとなる。「プロフェッショナル アンド グローバル」の下に役員力、社員力を強化し、国内と海外部門の組織の一体化を進める。国内ではより細かいサービスを浸透させ、海外では出資、投資、M&Aを中心とした展開にもっていく。食品、石油、化成品事業などの物資部門により注力したい。


久田 眞佐男 株式会社日立ハイテクノロジーズ 社長


①東日本大震災、歴史的な円高、欧州金融システム不安、タイの洪水などによる世界経済の長期停滞リスクが懸念される中、モバイル機器関連市場や新興国市場における社会インフラ需要等が引き続きグローバル経済のけん引材料となるとみており、市場動向を注視していく。

②長期経営戦略(CS11)で掲げた戦略ステートメント「最先端・最前線の事業創造企業としてお客様と共に先頭を走る」を実践するため、注力分野である次世代エレクトロニクス、ライフサイエンス、環境・新エネルギー、社会イノベーションへリソースを重点配分する。また、グローバル市場への対応を強化し、アジアベルト地帯やエマージングマーケットへの事業展開を加速していく。


飯島 彰己 三井物産株式会社 社長


①2012年以降の世界経済は、財政赤字の問題を抱える先進国では停滞するものの、新興国と新産業が主導する形で、構造転換型の緩やかな成長を維持するとみている。ただし、EU諸国の財政金融危機や、中国の投資主導の経済成長が行き詰まる可能性など、深刻なリスクを常に抱えたタイトロープの成長となると想定している。

②加速するグローバル化・ボーダレス化の潮流の中、日本を元気にするために、世界経済のさらなる発展のために、グローバルなフィールドで働く当社らしい仕事、社会に貢献できる「良い仕事」を積み上げていく。そして「挑戦と創造」という創業以来変わらぬ理念の下、全社一丸となり、新たなビジネスモデルの創出に果敢に取り組む年としたい。

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