「変化」を「機会」に

社団法人日本貿易会 副会長
豊田通商株式会社 社長
加留部 淳

昨年一年間を振り返りますと、まさに、多難な一年でした。日本では千年に一度といわれた東日本大震災、世界ではタイの大洪水といった自然災害に見舞われました。特に各産業の主要生産拠点であった東日本およびタイでの災害は、関連する企業の事業に大きく影響し、その影響は地域にとどまらず、全世界的に波及しました。

世界経済をめぐる環境では、ギリシャ発の欧州財政危機が欧州の金融機関の資金繰り危機へと広がり、長引く米国経済の停滞、資源高によるインフレ圧力と相まって、中国をはじめとする新興国経済でも成長が減速する兆しが見られます。さらに、急速に進む円高は、わが国の特に製造業にとって、産業構造のドラスチックな転換を迫られる、競争力の根幹を揺るがす大きな問題であり、既に表面化した動きも出てきております。各企業はこのような危機意識を持ち、今後、大きな構造改革に取り組むと思われます。そして、この構造改革とは、抜本的な改革、つまりビジネスモデルそのものの改革となるはずです。 われわれ商社には、まず、従来型の既存ビジネスモデルへの危機感を事業パートナーと共有・認識するとともに、むしろリードして新たなビジネスモデルを創出する存在になることが求められると考えています。

そして、今後はよりさまざまな「変化」が表面化してくるでしょう。エネルギー業界での変化、素材・技術の革新、地球環境へのよりいっそうの配慮、そして、新興地域での生活向上といった「変化」を「機会」と捉えることで、各企業はビジネス拡大に向けた取り組みをさらに加速すると思われます。こうした変化スピードを、われわれ商社は追い越す意識を持たなければなりません。

今年のえと「辰年」に込められた意味は、「草木の形が整った状態」を表し、生命の成長が整っていくことを意味するそうです。昨年の東日本大震災では、多くの尊い命が失われ、自然の脅威と人間の無力さをあらためて思い知りました。しかしその一方で、人と人の「絆」や「思いやること」の大切さをあらためてかみしめました。今年は、災害で大きなダメージを受けた被災地の復興が着実に進み、一日も早く整っていくことを期待しております。また、被災地の復興支援につきましては、われわれ商社が果たすべき役割を常に考え、引き続き惜しむことなく、努力する必要があると認識しております。

最後になりましたが、今年一年が、わが国が世界とより深い「絆」で結ばれる、幸せな年となるよう祈念して、新年の挨拶とさせていただきます。

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