時代をリードする

社団法人日本貿易会 副会長
住友商事株式会社 社長
加藤 進

2011年には目まぐるしいほどの環境の変化がありました。まるで歴史の転換点に居合わせているかのような大きな出来事が相次いで起こり、変化の激しさとスピードは年々増してきているようにも感じます。

大きな変化に直面したとき、今起きていることが一過性の事象なのか、あるいは将来にわたって永続する事象なのかを見極め、対応することが肝要です。大きな流れとしてのグローバル化は不可逆的であり、企業のグローバル展開が進む中にあって、世界の成長センターと目されるアジアをめぐり、FTAをより進化・拡大させる地域経済圏構築の動きが盛んになってきています。TPPもこの脈絡で捉える必要があり、国内の利害調整的視点での議論に終始するのではなく、日本が半世紀以上にわたり恩恵を受けてきたアジア太平洋地域の「開かれた自由貿易秩序」の維持発展のために日本は何をすべきか、という国家戦略的視点に立った議論の高まりを期待したいところです。

人口が昨年70億人に達した世界経済の中心は新興国に移っており、今後増大し続ける新興国ニーズに的確に対応するには、先進国マーケットとは異なる攻め方が必要になります。既に多くの新興国企業が実力あるプレーヤーとして存在感を高めており、これらの企業との戦略的連携の重要性はますます高まることになるでしょう。

さて、2012年は主要国の多くで選挙や指導層の交代が重なる世紀の選挙イヤーです。指導者の交代に伴う政策変更がビジネスに及ぼす影響には十分目を配る必要がありますが、中でもこれまで驚異的な高成長を続けてきた中国が、さまざまな社会問題を克服しながら緩やかな成長軌道にソフトランディングしていけるか、習近平体制のかじ取りが注目されます。
産業分野においてもすさまじい勢いでの変化が見られます。世界のネット人口が20億人を突破する中、携帯電話などのハード面とともにフェイスブック・ツイッターなどソフト面でのサービスの急速な普及が「アラブの春」の一翼を担ったことに象徴されるように、世界を一変させるゲーム・チェンジャーとなる可能性を秘めた技術革新の動向からも目を離せません。

変化の激しい時代においては、絶えず機能の高度化にチャレンジし続けなければ時代の波に取り残されます。世の中の変化を敏感にキャッチし、それが自分のビジネスにどのような影響を及ぼすのかを考え、的確に変化に対応していくことが肝要です。商社も過去の成功にとらわれず、新たな挑戦をし続けてこそ、時代をリードする役目を果たすことができるでしょう。

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