注目される2つのフロンティア

一般社団法人日本貿易会 副会長
丸紅株式会社 社長
朝田 照男

2013年は、残されたフロンティアともいうべき「アフリカ」と「メコン」の2つの地域に注目したいと思います。

アフリカは高い潜在力が見込まれる「希望の大陸」です。成長率上位20ヵ国を調べてみると、小国を除けばその半分は同地域の国々が占めます。生産年齢人口(15-64歳)の比率が高まる人口ボーナスを2050年にかけて享受できる見込みであり、成長の天井に達するまでには時間的余裕がありそうです。資源の観点からも、石油・天然ガスの他、マンガン、クロム、コバルト、白金族などの存在は魅力的です。また、2013年6月に、わが国主導の第5回アフリカ開発会議(TICAD V)が横浜で開催されることは大変意義深いことです。ここでは民間投資の拡大が重要テーマとして議論される予定であり、アフリカへの進出が加速する足掛かりとなるでしょう。

一方、メコン川流域地域は、まさにテイクオフしようとする「アジアの翼」です。メコン各国を縦横に結ぶ経済回廊や港湾、工業団地の整備も進んでおり、メコンの飛躍に向けたインフラづくりが進んでいます。2012年、カンボジアで開催されたアセアン関連首脳会議では、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉入りが合意され、2015年の妥結に向けて、いよいよ動き出します。これにより、アセアンの経済統合は一層緊密化し、ビジネス活動が円滑化しますが、こうした枠組みの中に、メコン諸国が組み込まれることは経済の発展をより確かなものにするでしょう。とりわけ、ミャンマーには大きな期待がかかります。同国では民主化が進み、欧米との関係も改善しております。現在、商社連合をベースにティラワ経済特区の開発を推進しておりますが、こうしたプロジェクトが日本企業の進出を大いに促進するものと考えます。

これら2つの地域が持続的な成長のステージを着実に歩むためには、多くの課題を解決しなくてはなりません。資金面ではわが国政府の支援が必要となることはいうまでもありません。また、市場経済システムの導入や投資環境の改善に向けた法整備など相手国の自助努力も求められます。市場獲得をめぐって他国との競争が激しくなる中、われわれ商社としては積極果敢に橋頭堡(ほ)を築き、伸びゆくフロンティアの果実を最大限獲得できるよう取り組んでいきたいと考えます。

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