日本貿易会常任理事に聞く 2014 年の展望

2014年の世界経済の展望および経営の抱負等について、日本貿易会常任理事へアンケートを実施しました。
①2014年の経済、ビジネス環境を展望する上で、注目する要因(けん引・懸念材料)
②2014年の注視、注力する点および経営の抱負
(社名五十音順)


稲畑 勝太郎 稲畑産業株式会社 社長


①日銀の「異次元の金融緩和」をはじめとする、日米欧の大規模な量的緩和が、いつ、どのように収束に向かうかに注目する。実体経済面では、減速したとはいえ、依然高い成長率を保つ中国を含むアジアの成長が、けん引材料として期待される。

②2014年度は、新たな中期経営計画のスタートの年となる。既存のビジネスにとらわれない新たな分野、地域へのチャレンジを力強く推進するとともに、足元を見つめ直してリスク管理の強化、コンプライアンスの徹底、グローバル人材の育成強化に引き続き取り組みたい。


牧野 明次 岩谷産業株式会社 会長


①消費税率のアップや不安定な電力供給等、懸念材料がある一方で、増税前の駆け込み需要や、雇用環境の改善、賃金アップなど、プラス要因も決して少なくない。円安の進展で、国内製造業を中心に、工場稼働率や設備投資が上向くものと思われる。当社の主力商品の一つである産業ガスの製造原価は電力料金の影響を受けやすく、LPガスと合わせ、コスト上昇圧力に対する対応を強化する。

②次の成長に向け、対外発表した中期経営計画「PLAN 15」を確実に進める。調達の多様化の一環として、既存の中東玉に加え、シェールガス由来の米国産LPガスの輸入を開始する。希少資源のヘリウムは、アジア企業で唯一のカタール産玉の権益を獲得、海外市場への拡販に向け環境が整った。水素ガス事業では、2015年の燃料電池車の市販化を見据え、当社は水素ステーションの設置など、インフラ整備を急ぐ。


下嶋 政幸 兼松株式会社 社長


①国内では消費税増税の影響が懸念されるが、新成長戦略「日本再興戦略」の効果や、米国・欧州等の先進国経済の回復や円安を追い風とする輸出増が期待され、景気は上向きとみる。成長ペースの加速は鈍っているものの、引き続き潜在力を持つ中国、アジア新興国や中南米の市場動向に注視し、事業拡大につなげていきたい。

②2014年8月に創業から125年を迎える本年は、攻めへと軸足を移し、成長につながる投資を積極的に行っていきたい。
引き続き成長が期待されるアジアや中南米を重要マーケットと位置付け、新設の車両・航空部門での車載関連取引や食料部門での海外展開などに、より力を入れ、強みを発揮していきたい。


三輪 芳弘 興和株式会社 社長


①アベノミクスと金融政策により、日本経済はデフレ不況からの回復基調にはあるが、TPP交渉の結果や、4月からの消費税率アップの経済に及ぼす影響をどのようにクリアするかが今後の課題。一方海外では、世界経済をけん引してきた中国に関しては、外交課題やポスト中国およびアジア圏経済の行方など、成長戦略による国内経済の活性化とともに注視していく必要がある。

②主力である医薬事業をさらに進める。医療用医薬品では、最先端の分子生物学的技術や、分子モデルリングを駆使したファーストインクラスの新薬開発が中心となる。今後もメタボリックシンドロームを機軸とした生活習慣病領域に注力していく。またOTC医薬品やヘルスケア製品とともに、健康食品GMP・ハイクオリティ認証を基にしたサプリメント事業でもグローバル展開をさらに推進していきたい。


圡井 宇太郎 CBC株式会社 社長


①アベノミクス効果による実体経済の浮揚、ならびに2020年オリンピック・パラリンピック東京開催決定を受け、国民のマインドの向上による消費の回復・拡大が期待され、まずまず順調な年となろう。一方、中・韓との政治情勢ならびに中国のシャドーバンキング問題の表面化や、米国の出口戦略に見られる金融政策修正による混乱の可能性が懸念される。

②引き続き医薬関連分野ならびにバイオ農薬関連市場に注力するとともに、一段と拡大する自動車関連分野では、ASEAN・北中米市場での原材料・部材の調達力ならびに製造機能強化を推進していく。人材面においても、採用から育成・研修を含め制度面まで広範囲に見直し、いっそうのグローバル化を推進していく。


矢島 勉 JFE商事株式会社 社長


①国内では復興需要、製造業の設備投資や輸出の増加、さらに東京五輪開催決定による高揚感も加わり引き続き堅調な鋼材需要が期待される。
一方で、海外では中国や東南アジアにおける最新鋭の製鉄所の新設と、技術進歩による高級鋼分野への進出により、さらなる競争の激化が予想される。

②国内では、地域的にも品種的にもグループ会社間の連携をさらに深めることで、お客さまに複合的なご提案やきめの細かいサービスをご提供できる体制を深化させていく。
海外では、既存のトレードに加え、地域統括機能の強化を図ることで各国・地域の事情に最も精通する各拠点が主導する現地対応型のビジネスをさらに拡張していく。


山﨑 修二 蝶理株式会社 社長


①スピードは緩やかであるが、米国がけん引役となり、2013年度を底に回復が期待できる。ただし、米国の財政規律の議会対立、中国のシャドーバンキング、クローズアップされてきた東アジアの地政学リスクに注視が必要。国内に目を向けると、円安に伴う輸入コストアップと消費税増税、特に駆け込み需要の反動を懸念。

②当社の中期経営計画の基本戦略である、「経営基盤強化」、「連結グローバル経営」、「新規開発・投資、M&A」を推進する。
当社の機能が最も発揮できる中国・ASEAN・中東・中南米に経営資源を重点投入し、特に中国国内販売事業やグローバル適地調達・適地生産・適地販売を強化していく。


長瀬 洋 長瀬産業株式会社 社長


①国内においては消費税駆け込み需要、またその反動の大きさを懸念。為替や株に急激な変動がなければ、底堅く推移すると思われる。日中関係の険悪化は大きな懸念材料の一つであるが、東南アジア諸国・インドの経済発展をけん引材料とみている。南欧経済の底打ちによる欧州全体の景気回復には期待する。北米は自動車の在庫が増えるなど、好調だがやや警戒が必要か。

②「変革」のスピード感を意識しながら、その内容・成果を精査・検証する。各事業セグメントの基盤強化を継続する一方、重点分野での活動、実績化にねじを巻く。バイオ分野は、グループを挙げて技術深耕し、海外も含めた事業構築を進める。エレクトロニクス分野は、需要の振幅が大きいが、市場のニーズにタイムリーに応えていく。環境・エネルギー分野は次代の柱にすべく、当社らしいユニークな事業展開を模索する。


宮坂 一郎 日鉄住金物産株式会社 社長


①けん引材料は、政府の経済対策、為替の安定による輸出環境の改善により、日本経済が自律的な回復サイクルへ向かっていること。
懸念材料は、消費税増税による景気腰折れ懸念、電力をはじめとするエネルギーコストアップ、労務・資材不足、加えて鉄鋼業においてはアジア地域で鉄鋼需給の緩和など。

②当社は2013年10月1日に住金物産と日鐵商事が合併し発足、鉄鋼、産機・インフラ、繊維、食糧の4つの事業がバランスよく収益を確保し相互補完しながらグローバルな成長を遂げていく体制を強化した。
今後はそれぞれの事業分野で専門性をさらに高め、複合専業商社としての強みを発揮し、統合効果の早期最大発揮を図る。


古川 弘成 阪和興業株式会社 社長


①景気が緩やかに回復してきた中国と景気の減速傾向が続く新興国、特にアセアンの経済動向に注目している。米国の金融緩和策は近いうちに縮小される見込みであり新興国への影響が懸念される。国内では住宅、インフラ需要と復興需要をアベノミクスが押し上げている。政府が着実に成長戦略である第3の矢を放つことで持続力のある経済回復を期待する。

②2013年を初年度とする第7次中期経営計画を愚直に実施していくことに尽きる。海外では「東南アジアにもう一つの阪和をつくる」を目標に、投資、出資を行いグローバル展開の軸を増やし面積を広げる。国内では「M&A+アライアンス」で国内取引先の深掘りを進め、当社が目指す即納・小口・加工事業(ソ・コ・カ)を推進する。


久田 眞佐男 株式会社日立ハイテクノロジーズ 社長


①米国は、雇用や所得環境の改善により穏やかな景気の回復が見込まれ、欧州も、緊縮財政による影響があるものの、一部に回復の兆しが見られる。一方、新興国市場は成長鈍化傾向にあるが、欧米市場の回復により再び成長することを期待したい。日本では、消費税引き上げによる影響を投資減税や補正予算の経済対策が吸収し、景気回復が続くことを期待している。

②2014年は、企業ビジョンである「ハイテク・ソリューション事業におけるグローバルトップを目指す」の実現に向けて、これまで行ってきたグループ施策などの成果を刈り取る年となる。引き続き、成長分野へのリソースシフトによる事業ポートフォリオの強化、グローバル事業の拡大、開発のスピードアップによる事業創造の推進に努め、もう一段高い成長軌道に乗せる一年としたい。

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