変化の胎動を捉え、 新たな成長ステージへ

一般社団法人日本貿易会 副会長 丸紅株式会社 社長
國分 文也

第2次安倍政権が誕生してちょうど1年が経過しました。2013年は、アベノミクスの下で円高、株安の是正が一気に進む中、景気回復への期待から消費者や企業経営者のマインドが改善するなど、低迷にあえいでいた日本経済にとっては大きな転換点となりました。2014年は、こうした勢いを中長期にわたって持続できるかどうかの分岐点になると思います。重要な鍵を握るのは成長戦略の着実な実行であり、その意味で、政治的なリーダーシップが求められる年になるでしょう。

一方で、企業を取り巻く経営環境についていえば、潮目が変わる予兆を感じています。21世紀に入り、新興国を中心に成長を続ける中、世界的な金余りであふれ出したマネーが資源高を演出しました。リーマン・ショック後は、先進国が超金融緩和策で足並みをそろえ、株式や債券市場が活況を呈しています。われわれ商社はこうした変化をビジネスに取り込むことで成長してきたといえます。しかし、2013年末には、米国の量的緩和政策の縮小が決定され、いずれ、ゼロ金利の終しゅうえん焉についても視野に入ってくるでしょう。今後、マネーは実体経済へ回帰し、各国の経済は真の実力が問われることになります。われわれも、こうした環境変化に柔軟に対応し、次の成長市場、成長分野はどこにあるか、しっかりと見極めていくことが必要となります。

商社ビジネスを取り巻く環境も、大きなうねりが生じています。例えば、米国のシェール革命は、中東諸国やロシアなどのエネルギー戦略にも大きな影響を与え、ビジネスの在り方を変えつつあります。日本においては、原発再稼働を含めたエネルギー・セキュリティーへの対応や、電力小売りの全面自由化をはじめとした電力システム改革など、これから新たな局面を迎えます。また、アフリカやメコン川流域など、従来、発展から取り残されてきた地域では、今後本格的な成長期を迎え、その存在感は高まっていくでしょう。これらの国々に対しては、電力・交通・港湾などの社会インフラ整備や食料をはじめとした生活物資の安定供給が不可欠となります。

こうした世界の変化は、商社にとって最大のビジネスチャンスとなります。大局観をもって変化の胎動を捉え、市場の成長を確実に取り込んでいくと同時に、日本のみならず世界の発展にも貢献するといった商社本来の役割・使命をしっかりと果たしていきたいと考えています。今や、われわれが勝負する土俵はグローバルな市場の中にあります。競争相手も日本企業だけではなく、世界のグローバルプレーヤーです。そこで勝ち抜くために、情報、リスク管理、金融などの商社機能に一層磨きをかけるとともに、官民連携による成長戦略の一翼を担いながら、新たな成長ステージにおいてチャレンジを続けていきたいと考えます。

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