商社の「変化する力」 で日本をリード

一般社団法人日本貿易会 副会長 豊田通商株式会社 社長
加留部 淳

2013年は「変化の年」であったかと思います。世界経済は、不調であった米国経済が反転、拡大に転じ、欧州経済も底を打った感があります。これはポジティブな「変化」です。一方、これまで好調であった中国などの新興国経済は、減速傾向を強めました。これはネガティブな「変化」です。今注目を集めているアフリカ地域の経済は、一部の地域を除き、順調な成長を続けています。アフリカ地域の経済は、浮き沈みが激しく予測が困難でしたが、安定した成長が期待できるというのは「大きな変化」であり、この背景には、アフリカ諸国の政治的安定、政策能力の向上といった「変化」があると思います。

こうした、アフリカ地域の「変化」を実感したのが、2013年6月に行われた第5回アフリカ開発会議です。私自身、横浜でのセミナーやシンポジウム、各国首脳の方々との会談を通じ、アフリカおよびアフリカと日本の関係の「変化」をあらためて肌で感じました。また、アフリカと一口に言っても大変多様性があり、決して大くくりするのではなく、また平均をとるのでもなく、一国一国を尊重して対応することの大切さを感じました。

「変化」という言葉は、日本にも当てはまります。2013年はアベノミクス効果による株式市場の好況、為替レベルの是正による輸出産業の活性化などの「顕著な変化」により、日本が長い間失っていた「自信を取り戻した年」でもありました。その一例が、当会も支援してきた「2020年オリンピックの東京開催」決定です。アルゼンチンでのわが国の洗練された質の高いプレゼンテーションは大変素晴らしく、東京決定が発表された時には、思わず「ガッツポーズ」しました。日本国民が心を一つにして、2020年の東京オリンピックを成功させたいと思います。
われわれ商社もお手伝いできることはたくさんあると思います。

このように2013年は「変化の年」でしたが、2014年はどのような年になるでしょうか?
個人的には、2014年は「予測不能の年」になると考えます。冒頭で述べましたように、今、世界経済は一つの方向を向いていません。拡大に転じつつある米国および日本経済、底をやっと打った欧州経済、減速傾向の新興国経済、比較的安定成長を示しているアフリカ経済というように、一言で総括できないのが現在の世界経済です。政治的にも、米国の影響力低下などによる「Gゼロ」世界の出現により、政治的に不安定な地域・国の先行きが非常に予測しづらくなっています。しかし、この「予測不能の世界」だからこそ、われわれ日本の商社が力を最も発揮できるのではと考えます。これまでも、あらゆる環境変化に迅速、柔軟に対応してきたのがわれわれ商社です。現在のような「予測不能」の環境下でも、商社の真価である「変化する力」で日本経済をけん引していけたらというのが、私の2014年の抱負です。

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