日本の将来像を見据えて ― フューチャー・プルの発想で

一般社団法人日本貿易会 副会長 三菱商事株式会社 社長
小林 健

日本は、安倍政権の下、長年の経済低迷を脱却する好機が到来しています。緩やかな景気回復が継続する中、2014年は、いよいよ成長戦略の迅速な実行が重要な段階を迎えます。少子高齢化に直面する日本経済の中長期的な成長力を引き上げるためには、大胆な規制緩和、TPP促進、EPA締結、エネルギー政策の明確化などが特に重要です。さらに、日本経済の再生に向けた成長戦略の実行に当たっては、足元の状況のみならず、例えば2020年ごろの日本の将来像を描き、そこからやるべきことを考える「フューチャー・プル」の発想が必要だと考えます。日本は、将来像を見据えて、経済のグローバル化や構造改革を着実に推進していけば、必ず経済再生を実現することができます。

商社は、日本産業の競争力強化に引き続き貢献する重要な役割を担っています。商社のビジネスモデルは、かつての取引仲介が大宗を占める業態から、現在では、長年蓄積してきた情報・知見を活用し、事業投資先に人材も派遣しながら、バリューチェーンを構築し、自らリスクを取って商流の中心に立つ業態に変化しています。現在、商社は、このようなビジネスモデルの変革を通じて培ってきた多様な機能を活用して、産業競争力の強化と日本経済の再生に全力で貢献していくことを求められています。

また、商社には、経済・産業の将来を読む役割も期待されています。世界経済を見渡すと、米国金融緩和の縮小を控えた市場の動き、中国経済の減速が各国景気・商品市況に与える影響など、先行き不透明感が依然高いといえます。その中で商社には、多くの国でさまざまな産業に接点を有しているからこそ得られる情報を、長年蓄積してきた知見に基づいて分析することにより、経済・産業の将来を展望する力が求められています。世界中でさまざまな事業に取り組む商社にとって、それぞれの現場から上がってくる情報を分析し、経営に活かしていくことがかつてないほど重要だと考えます。

2014年は、経済再生に向けて動き出した日本が、その将来像をしっかりと見据えて、「フューチャー・プル」の発想で大胆に挑戦していく年になることを期待します。その挑戦を企業や個人がそれぞれの持ち場で継続していけば、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが、再生した日本を世界に披露する絶好の機会になると確信します。

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