豊田通商が南太平洋諸国で展開するディーラービジネス

豊田通商株式会社 豪亜自動車部 部長梅原 智徳
豊田通商株式会社 豪亜自動車部 オセアニアグループ グループリーダー松浦 秀雄

南太平洋諸国での事業展開と歴史


(左から)梅原氏、松浦氏

当社の豪亜自動車部は、アジア地域とオセアニア地域において、トヨタ自動車㈱などの販売代理店事業やディーラー事業を展開しています。オセアニアグループは南太平洋諸国11ヵ国を担当していますが、全てトヨタ自動車㈱の代理店であり、トヨタ自動車㈱から委託いただいて現地で業務を行っています。

また、11ヵ国のうち7ヵ国(パプアニューギニア、フィジー、バヌアツ、ソロモン諸島、トンガ、サモア、アメリカンサモア)にはわれわれが出資している代理店があり、これらを統括しているのが、豪州・ブリスベンにオフィスを構える持株会社「Toyota Tsusho SouthPacific Holdings Pty Ltd(TTSPH)」です。南太平洋諸国は島国であり、日本から直接オペレーションを行うのは難しいため、オペレーション改善、販売、マーケティング、アフターサービス、人材育成などの機能をTTSPHに集約し、7ヵ国のオペレーションやマネジメントを約50人のスタッフで行っています。

もともと、南太平洋諸国では、豪州企業のBurns Philip(BP社)が代理店事業を展開していました。1992年に当社はBP社への25%の出資を皮切りにその後、持ち株比率を高め、1998年には100%子会社化。TTSPHとして、傘下7ヵ国の代理店の持株会社が発足し、現在の体制となりました。


パプアニューギニア ポートモレスビー支店のショールーム

当初は厳しい環境に置かれ赤字も経験しましたが、資産売却や組織のスリム化を行い、2000年代に入り、黒字となりました。現地での自動車市場も順調に伸びており、中でも成長著しいのがパプアニューギニアです。天然ガス、金や銅の鉱山資源が非常に豊富で、南太平洋諸国の中でも特に国土の大きい同国は外資企業による投資や建設事業などの需要が大きいことが特徴となっています。

TTSPHの販売の中心はパプアニューギニアであり、売り上げ全体の80%を占めています。残り20%がフィジーをはじめとした6ヵ国であり、販売事業以外にヤマハブランドの船外機の販売やAVISのレンタカー事業なども行っています。

パプアニューギニアでは近年、日本企業も参加するLNG輸出・開発が活発で、2014年5月からは輸出も始まりました。LNG開発に伴い、4WD車や人員輸送用のバン型車を中心に需要が伸びています。新車販売数も2009年に3,000台、2012年には6,000台と伸びており、2013年と2014年は若干踊り場にあるものの、今後も引き続き成長していく市場であることは間違いないといえます。

サービス向上を目指して人材育成


ショールーム内部の様子

トヨタ車はパプアニューギニアにおいて、長年の実績を通じてユーザーからしっかりとした信頼を得ており、新車販売市場において60%のトップシェアを誇っています。このシェアを維持していくことが当面の大きな目標です。すでに同国内に16ヵ所の拠点を持ち、他社よりも早い時期から販売網は整備できていますが、目標達成のためには将来大きく市場が伸びる時に備えて、アフターサービスを充実させることが大きな課題です。また、顧客管理やお客さまのフォローアップなども重要であり、そのために最も力を入れているのが人材育成です。

TTSPHの人材育成には大きく2つの対象層が設けられています。一つはマネジメント層であり、日本の本社主導でフィロソフィーを含めたマネジメント教育を行っています。もう一つは現地のナショナルスタッフであり、TTSPHでさまざまなプログラムを組んで実施しています。

例えばメカニック見習いの場合、採用前に4年間のプログラムを組んで人材教育を行います。1年目は教養や道徳といった基礎学力に専念し、その後の3年で専門スキルを学びます。4年間のプログラムを修了した後に正式なメカニックとして採用することで、ビジネススキルだけではなく、人として成長し、組織としてもお客さまへのサービス、品質向上につながると考えています。もちろんスキルアップすることは、キャリアアップにもつながり、スタッフのモチベーションも高まります。地道で時間もかかりますが、長期的な視野に立って人材を育成することが、最も重要であると考えています。

モータリゼーションに向けて

現在、パプアニューギニアの自動車市場は2007年の5,000台から、2012年の1万台へと倍増しています。中でも需要があるのはトヨタブランドの4WD車やピックアップトラック、日野ブランドのトラックなどですが、これらは主に法人向けです。個人向け市場はまだ中古車がメーンであり、TTSPHでも中古車を扱っています。

今後はLNG輸出の影響も受けて、1人当たりのGDPが上がることが予想され、将来的に新車への個人需要が大きく伸びると推測しています。つまり、LNGや天然ガスの輸出の恩恵が経済に返ってきた時に、初めて本来のモータリゼーションが進んでいくと考えられますので、今後は法人のお客さまだけではなく、個人のお客さまも視野に入れてサービスを強化していきたいと考えています。現在は「新車には手が届かないけれど、中古車ならば購入したい」というお客さまも多く、中古車販売から始まり、部品の提供、アフターサービスを通じて、お客さまとの接点を拡大し、将来の新車購入につなげていく。それに合わせてファイナンスもパッケージとして提供させていただく構想も持っています。

将来的には、新車販売やアフターサービスだけではなく、お客さまのニーズを全て取り込み、トータルバリューチェーンを提供することがわれわれの目標です。新興国ですので一筋縄ではいかない点もありますが、中長期的に車の商品と共に提供できるサービスの質を上げていくことで、地道にファンを増やしていきたいと考えています。

(聞き手:広報グループ 蟹田綾乃)

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