双日が行う流通ビジネスについて

双日株式会社 生活産業部門 食料・アグリビジネス本部 食料事業部 部長
宮部 敏明

HT社の主な拠点図

経済成長と人口増加が著しい東南アジアにおいて流通の拡充はより大きな課題となっています。東南アジアの中でも経済が発展途上にあるベトナムにおいて、流通の近代化が必要とされています。

双日は1986年に西側諸国の企業として、かつ総合商社として初めてベトナムに進出、ハノイ駐在員事務所を設立して以来、同国内では多くのビジネスを展開し当社の存在感を強めてまいりました。同国との強固な友好関係はその結果によるものだと感じています。その中で、ベトナム市場の発展に寄与すべく、当社は 2008年2月にベトナム食品卸会社最大手のフン・トゥイ・マニュファクチャー・サービス・トレーディング社(Huong Thuy Manufacture Service Trading Corporation、以下 HT社)に出資をしました。その後、2012年に出資額を増やし HT社を連結子会社化しました。また同時に、先進的な物流ノウハウを有し卸売業を営む国分株式会社(以下、国分)にも出資参画していただくことで、国分の持つ近代的な流通システムをHT社に導入する取り組みを開始しました。

HT社の概要

HT社は主に「パパママショップ」と呼ばれる個人経営の商店、およびスーパーマーケット、デパート等の量販店向けに食料品を販売している同国内最大手の総合食品卸会社です。ベトナム国内に11拠点を構え、1,200人を超える従業員にて、日本を含む海外からの食品やその他生活資材などを4万ヵ所を超える客先向けに卸しています。2009年1月に同国内では小売業に関する外資規制が撤廃されたことにより、大型スーパーマーケットやコンビニエンスストア・デパートなどの近代的な小売業態の拡大に対応すべく、従来の個人経営の商店と併せた双方向の事業拡大を行っています。

設立当時

1994年にHT社が設立され、創設者一族の知見や人脈を生かしながら、同国内最大手の食品卸会社へと成長しました。

双日の出資

双日は HT社に出資し、HT社の経営近代化を推進しながら、海外からのサプライソースの拡大や社内管理体制の強化・改善に取り組んでまいりました。

HT社の子会社化、国分株式会社の出資

2012年にHT社を連結子会社化した際、国分にも出資していただく形で当時の物流・会計管理システムの近代化に向けた取り組みを開始しました。当社が経営を、国分が在庫管理を含む物流・会計管理システムの効率化に取り組むことで、HT社の運営体制の改善を推進しているところです。

HT社の強み

外資規制の撤廃後、大規模スーパーマーケットやコンビニエンスストアが同国に進出してきましたが、いまだ個人商店が人々の生活を大きく支えています。よって、HT社にとって4万ヵ所を超える店舗に商品を届ける物流網を持つことが強みとなっています。ベトナムではいまだ交通インフラが十分に整っておらず、交通渋滞が恒常的に起こっており、そのため、車では時間内に配達をすることが難しく、HT社は主にバイク便で各店舗へ配達しています。細い路地の多いホーチミンシティやハノイでは車では入れない道に店舗を構えている取引先も多く、バイクでの配達が最適です。4万ヵ所を超える顧客ネットワークに対し、配達員が直接アクセスすることで、競合他社をしのぐ物流網をつくりあげています。

今後に向けた取り組み


HT社 倉庫

HT社の今後に向けた取り組みとして、当社および国分により共同開発中の物流・会計管理システム導入による近代的な管理体制の構築があります。

本システムの導入による業務の効率化は当然のことながら、今後確実に市場シェアが増加していくと想定される大型スーパーマーケットやコンビニエンスストアの量販店に対する取り組みについても本システムの活用が不可欠であると考えています。

また、ベトナムではコールドチェーンの普及が遅れており、例えば、アイスクリームなどは輸送中の保管温度管理が不十分なため、特に個人商店の店頭で販売されている商品は再凍結された状態になっている光景が日常茶飯事です。この問題を解決するための近代的なコールドチェーン確立もHT社が目指す取り組みの一つとなっています。

最後に

双日はベトナムの流通近代化に寄与し、同国のニーズに合致した幅広い食品分野の製品を取り扱う総合食品卸企業を目指します。また、HT社のビジネスモデルを用いて 2013年にミャンマーにおいても新たな流通事業を開始しました。今後とも東南アジアにおいて卸事業の拡大を図ってまいります。

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