ボラティリティが高まる世界で、したたかに、たゆまぬ挑戦を

一般社団法人日本貿易会 副会長 丸紅株式会社 社長
國分 文也

アベノミクスがスタートして2年が経過しました。2014年は日銀の大胆な金融緩和政策により円安、株高が一段と進む一方で、消費増税の影響が長引き、年度ベースでの成長率はマイナスに落ち込む見通しです。2015年においては、日本経済が本格的な回復軌道に乗り、中長期的な成長への道筋をつけられるかどうかの正念場になると思います。すなわち、第3次安倍内閣が発足する中、成長戦略を着実に実行し、痛みを伴う構造改革まで踏み込めるかどうか、政治的なリーダーシップが問われる年となるでしょう。

一方、グローバル経済は潮目が変わり、新たな局面に入ったといえます。株式や為替などのマーケットのみならず、世界の経済・社会そのもののボラティリティも高まっていると感じています。その背景の一つは、米国経済の独り勝ち、すなわち米国とその他の国との経済力の格差です。米国は着実な景気回復の中で、2015年半ばには利上げに踏み切る可能性が高まっていますが、欧州では一層の金融緩和も視野に入るなど、先進国の間で金融政策の方向性が異なっています。また、新興国では、中国の減速や経済基盤が脆弱な国の下振れリスクを意識せざるを得ません。こうした状況の中で、グローバルな資金はドルへの回帰を強め、新興国からの資金逃避、現地通貨安、商品価格の下落という流れが本格化しつつあります。

また、資源分野では、鉄鉱石や石炭といった、いわば地域性の強いコモディティを中心に市況が下落してきましたが、ここにきてグローバルなコモディティの代表格である原油相場も崩れ、今後の世界経済、地域社会に大きな変化をもたらす可能性があります。

もう一つは、政治の不安定化です。米国では、オバマ大統領のレイムダック化が進み、決められない政治が続くでしょう。国際社会において、米国の影響力が低下すれば、中国の攻勢やロシア、中東などの地政学リスクが高まることが懸念されます。

このようなボラティリティの高い環境において、われわれにとって重要なのは、短期的な変化に柔軟に対応すると同時に、中長期的な視野を持った戦略的な取り組みを進めることです。ビジネスの足腰を鍛え、変化への対応力を磨くとともに、世界の大きな変化をチャンスと捉えながら、市場の成長を確実に取り込んでいくためのより緻密な戦略が不可欠となります。

こうした戦略の下、新興国を中心とした市場のニーズに応え、電力・水・交通といった社会インフラ整備や食料をはじめとした生活物質の安定供給を通じて、地域・社会の発展に貢献するとともに、電力自由化や業界再編の動きが加速する日本においても、産業の活性化、エネルギーセキュリティー確保に向けて、商社としての使命をしっかりと果たしていきたいと考えています。

ボラティリティの高まる世界においてグローバル競争を勝ち抜くために、商社機能に一層の磨きをかけながら、したたかに、たゆまぬ挑戦を続けていきたいと考えます。

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