さらなる「豊かさ」の創出へ

一般社団法人日本貿易会 副会長 双日株式会社 社長
佐藤 洋二

2014年を振り返ってみれば、インドのナレンドラ・モディ首相、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領など、アジアの大国で、改革派といわれる新しいリーダーが誕生し、「アジアの時代」のシフトアップを予感させられました。一方、ソチオリンピックのさなかに始まったウクライナ情勢の悪化は制裁合戦から欧州を中心とした各国経済への重しとなり、また、イスラム教スンニ派の過激組織「イスラム国」の伸長、エボラ出血熱のアフリカからの拡大などの不安要素が世界に影を落としています。

先進国・新興国共に経済情勢は決して視界良好とはいえず、わが国でも4月の消費税増税の影響などから、期待された勢いを欠く状況に終わりました。

2015年には、米国が金融緩和から利上げへの出口を探り、新興国市場の動揺が懸念されます。世界経済拡大のけん引車となってきた中国も安定成長路線を踏襲することになるでしょう。2つの大国が慎重な経済運営を展開する中で、世界的に景気の下振れリスクが拡大しており、日本に対してはデフレからの脱却と力強い成長を確実にするための具体策の実施があらためて求められています。

成長への切り札として期待されているのは、商社業界にとってもビジネスの本丸ともいえる、自由貿易の推進であり、インフラ投資です。わが国としては、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や日・EU経済連携協定(EPA)に代表される経済連携協定締結が着実に推し進められるよう、期待したいと思います。

商社は、資源確保やさまざまな物資の調達・供給など、国内のニーズに応えることにより日本の「豊かさ」の一翼を担ってきました。事業活動のさらなるグローバル化に伴い、商社が「豊かさ」の創出に寄与できる領域は、日本に限定されず、世界中に拡大しています。一方、価値もニーズも多様化する現代では、あらゆる課題をあぶりだしてビジネスに結び付ける気概を持って立ち向かわなくてはなりません。トレンドに呼応し、未来を予見して臨機応変にビジネスチャンスをつかみ、ブレークスルーを見いだしていくために、常に高くアンテナを張ることと現状維持にとどまらない新しい工夫が不可欠です。

私たちはさらなる「豊かさ」の創出に向けて、金融、物流、情報などの商社の複合的な機能と、世界各地で築いた取引先、地域社会とのパートナーシップ、事業環境変化への対応力、グループ経営による総合力と専門性、といった強みをさらに発揮することで、日本経済、ひいては世界に貢献してまいります。

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