常任理事に聞く2026年の展望

稲畑産業株式会社 代表取締役社長執行役員稲畑 勝太郎
岩谷産業株式会社 代表取締役 社長執行役員間島 寬
兼松株式会社   代表取締役社長宮部 佳也
興和株式会社   代表取締役会長兼社長三輪 芳弘
CBC株式会社   代表取締役社長 圡井 正太郎
JFE商事株式会社  代表取締役社長祖母井 紀史
蝶理株式会社   代表取締役社長 社長執行役員迫田 竜之
長瀬産業株式会社 代表取締役社長 上島 宏之
日鉄物産株式会社 代表取締役社長中村 真一
阪和興業株式会社 代表取締役社長中川 洋一

2026年の世界経済の展望および経営の抱負等について、日本貿易会常任理事へアンケートを実施しました。
(社名五十音順)

稲畑 勝太郎(稲畑産業株式会社 代表取締役社長執行役員)


2026年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

国内においては、高市政権の「責任ある積極財政」に期待する。プライマリーバランス悪化を危惧する声も根強くあるが、健全な経済成長が税収増をもたらす好循環が生まれればバランスの悪化を抑えることは可能であると考える。世界経済においては、中国と欧州の景気動向に注目する。特に中国の不動産問題の長期化と製造業の供給過多は懸念点である。一方で、好調なインド経済をはじめ、アジア圏の成長が引き続き世界経済をけん引するものと期待する。

2026年の経営における注力点、抱負

今年(2026年)は中期経営計画NC2026の最終年度となる。重点分野として掲げる環境・エネルギー分野、半導体関連分野などへの積極的な投資の実施と並行してPMIの遂行力を高め、ガバナンスの一層の強化に努める。また、新たに策定したコーポレートメッセージの社内外への浸透を通してグループの求心力を高め、ビジネスチャンスの拡大につなげたい。


間島 寬  (岩谷産業株式会社 代表取締役 社長執行役員)


2026年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

ロシア・ウクライナの紛争長期化や、米中対立、日中関係の不透明化などの要因から、2026年の世界経済の成長率はやや鈍化すると考えられる。一方、グローバルサウスや東南アジア諸国等は高い成長率が期待される。円安傾向や中国依存リスク回避の観点から、製造業の国内投資の増加や、製造拠点の移管が活発化し、新たなビジネスチャンスが生まれると期待している。国内では人手不足と物価高対策が引き続き重要課題であり、注視していく必要がある。

2026年の経営における注力点、抱負

中期経営計画「PLAN27」を軸に、水素、脱炭素関連事業への戦略的投資を進める。また国内エネルギー・サービス分野では、人口減少や価値観の多様化に対応した総合エネルギー事業への進化を目指す。海外では、循環型・低炭素社会の実現に関連した事業と、チタン・レアアース等の重要鉱物資源の安定調達に注力する。エネルギー・産業ガス・水素・機械・マテリアルの総合力を発揮し、社会課題の解決と事業の持続的成長を実現していく。


宮部 佳也 (兼松株式会社 代表取締役社長)


2026年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

世界経済は回復傾向にあるが、貿易摩擦・地政学リスク・金融政策の不確実性など引き続き先行き不透明な状況が続いている。日本経済は、賃上げの広がりや雇用環境の改善を背景に個人消費が緩やかに回復しつつあるものの、円安・原料高・エネルギー価格上昇によるコスト増、米国の関税政策を巡る影響などが企業活動の制約要因となり、回復の勢いはやや鈍化している。脱炭素やGX対応を巡る国際協調も足並みが乱れる中、商社はグローバルな事業展開において、サプライチェーンの強靭化を加速する必要がある。

2026年の経営における注力点、抱負

2026年度は、現中期経営計画integration 1.1の最終年度である。当社の目指す姿「効率的かつ持続可能なサプライチェーンの変革をリードするソリューションプロバイダー」の実現に向け、DX、GX、イノベーションを柱として、提供価値の拡充を重点的に強化していく方針だ。ICTソリューションを中心としたDX関連や当社が強みを有する事業分野を中心に、機動的かつ選択的な投資を実行し、持続的な成長と企業価値の向上を目指す。


三輪 芳弘 (興和株式会社 代表取締役会長兼社長)


2026年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

米国トランプ大統領の各国への関税政策や、地域紛争等の地政学的リスクの継続など、世界経済の先行きは引き続き不透明な状況が続く。日本経済については、国内の個人消費が物価上昇の影響を受けるとともに、海外経済の減速や、日中の外交摩擦に端を発した中国政府の経済活動上の制限措置により、国内景気のゆるやかな冷え込みが懸念される。さらに、為替変動リスクや金利の上昇リスクにも注視していく必要がある。

2026年の経営における注力点、抱負

すべての生態系と地球の健康の共存を目指す「プラネタリーヘルス」の推進に取り組んでいく。生活者の「ウェルビーイング」実現やセルフケア推進への貢献をはじめ、脱炭素社会の実現に向けた「グリーンエナジー」の活用など、事業横断的にサプライチェーンの構築に注力していく。特に炭酸カルシウムを主原料とする「STONE-SHEET®︎」(ストーンシート)を活用した環境配慮型製品の生産や、グリーン水素・アンモニアに加え、バイオコークス等を通じたエネルギーの地産地消にも取り組んでいく。

圡井 正太郎(CBC株式会社 代表取締役社長)


2026年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

2026年は、米国による関税政策や米中間の通商政策の影響を受けた中国の資源規制強化により、通商政策・資源確保の国際再編が加速。また、アジア地域においては地政学的緊張とボラティリティの高止まりが予想される。各国は安全保障と経済安全保障を一体で捉えた産業政策を強化し、企業はサプライチェーンの多層化と持続可能な生産体制を急ぎ、機動的な適応が不可欠となる。一方、AI・デジタル技術の深化が労働力不足を補完し、生産性向上による成長機会を拡大する経済環境が展望される。

2026年の経営における注力点、抱負

2025年4月、次の3年に向けて、中期経営計画「GRIT 2.0 Brave the Future」を始動。コンフォートゾーンを脱し、強みを活かした新機軸での事業構築を図っていくため「選択と集中」、「デジタル化推進」、「グローバル事業軸の強化」を重点施策として全社的な“Challenge”を推進する。堅調な事業の更なる発展と成長、社会や顧客との更なる信頼関係を深めるべく、サステナビリティ経営を基盤に、環境・社会・ガバナンス強化への取り組みを加速させる。また、この最大の担い手となる社員のウェルビーイングを重視するとともに、これらを通じて、企業価値の持続的な向上と、「社員が誇れる強い会社」を目指し邁進する。


祖母井 紀史(JFE商事株式会社 代表取締役社長)


2026年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

米国の底堅い需要やインドの成長はプラス要因だが、保護主義の加速や地政学的リスクにより世界の分断など不確実な環境は継続するだろう。米国関税を前提としたグローバル供給網の再編も進展すると考えられ、柔軟な対応が求められる。国内ではカーボンニュートラル対応が進む一方、人口減少と労働力不足が構造的課題となり、鉄鋼需要の減少は継続する。変化のスピードが増す中、環境に合わせたサプライチェーンを再構築することが必要。

2026年の経営における注力点、抱負

2025年度にスタートした第8次中期経営計画の重要戦略である経営基盤の刷新、国内市場での存在感向上、海外事業の拡大を進める。気候変動問題や循環型社会への対応は当社の責務として取り組んでいく。各課題の達成に向けて、新しい仕組みを考え実行する企業文化を創っていくことが重要。そのために業務の効率化・標準化をもう一段進め、長年の慣習や前例にとらわれず、挑戦と変革を実行する一年とする。


迫田 竜之 (蝶理株式会社 代表取締役社長 社長執行役員)


2026年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

2026年は、ウクライナ情勢の長期化、米中間の関税摩擦、さらに日中関係の悪化など、地政学的リスクに起因する世界的な混乱が、昨年と同様にサプライチェーンに影響を及ぼす見通しである。また、世界各地で頻発する異常気象への懸念から、脱炭素に向けた社会課題への対応は一層重要性を増している。日本経済は設備投資の増加を背景に緩やかな成長が期待されるが、労働人口の減少を補う生成AIやデジタル技術の活用が、持続的成長の鍵となる。

2026年の経営における注力点、抱負

2025年4月に、3年にわたり全社業務変革プロジェクトとして取り組んできた基幹システム(SAP)を稼働させた。このシステムを最大限に活用し、デジタル変革を推進することで「稼ぐ力」を高めると同時に、事業を未来へつなぐインフラを整備する。2026年度は、4月に公表予定の新中期経営計画の初年度である。人から選ばれ、社会から選ばれ、サプライチェーンのパートナーとして選ばれるという好循環を生み出し、「選ばれる会社」の実現を図る。


上島 宏之 (長瀬産業株式会社 代表取締役社長)


2026年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

インフレ率は次第に低下し、2026年はさらに落ち着いて推移すると見ている。世界経済は成長を維持するものの、わずかな減速が予想される。当社の注力領域である半導体市場は、データセンター需要を背景に引き続き成長を見込む。化学業界では、中国での生産過剰と海外への廉価販売などを背景に汎用化学品の成長が鈍化する一方で、当社の強みであるスペシャリティケミカルは堅調に推移すると期待される。こうした環境変化を機会と捉え、機動的に意思決定していく。

2026年の経営における注力点、抱負

4月から新中期経営計画がスタートする。現中期経営計画の期間中に強化してきた筋肉質な経営体質を土台に、ユニークな事業を創造しながら飛躍的成長に耐えうる強靭性を構築していく。エリアでは、北米におけるフード事業とグローバルサウス、特にインド市場の成長に期待しており、昨年プネ市に現地法人5つ目の拠点を設立した。日本のものづくりをインドで支える商社としてリソースを投入していく。秋には新東京本社が完成予定で、創業200周年の2032年に向け、グループ社員全員で「人と地球のウェルビーイングに貢献するNAGASE」を目指していく。


中村 真一 (日鉄物産株式会社 代表取締役社長)


2026年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

ウクライナ戦争や米中対立を背景とする地政学リスクの高まりに加え、中国経済の減速や米国トランプ政権の外交・関税政策による市場の混乱など、依然として先行き不透明な状況が継続すると思われる。当社主力の鉄鋼分野においては、人口減少・高齢化による国内需要の縮小、競争の激化、さらには過剰生産に起因した海外市況の悪化など、厳しい環境が続く見通しだ。他方で、米州・インド・タイなどの成長市場での需要、拡大するカーボンニュートラルに関連した商材の需要など、販売拡大の機会もあるといえる。

2026年の経営における注力点、抱負

2026年度は、次期中長期経営計画の初年度。当社が最重要課題として位置付けている「安全」「品質管理」「コンプライアンス」を徹底した上で、「成長戦略の推進による持続的な利益成長の実現」「日本製鉄との戦略連携によるシナジー効果の追求・発揮」「人的資本経営および業務刷新・効率化の推進」「ESG経営の深化」の4つのテーマのもと、海外事業の拡大や国内流通の高度化・効率化、戦略商品の拡販、新興市場の開拓などに取り組み、日本製鉄グループの真の中核商社としてさらなる成長を目指したい。


中川 洋一 (阪和興業株式会社 代表取締役社長)


2026年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

2026年も引き続き地政学的リスクや国際通商問題による不確実性が続く一方、脱炭素やデジタル化の潮流は不変と思われる。日本経済は働き手不足の課題を抱え、短期的には供給のタイト化によるコスト増も予想されるが、中長期的にはその打ち手として生成AIや自動化ツールなどの新技術を活用することで、生産性向上が期待される。企業にはこれらの取り組みをさらに加速させ、強靭なサプライチェーン構築や気候変動対策、グローバル連携などの分野で新たな成長機会を見い出す年になることを期待する。

2026年の経営における注力点、抱負

事業環境は不透明ながら、現中期経営計画での財務基盤強化の進展を受け、2026年は新中期計画において「攻める阪和」を打ち出し、持続可能な成長に向けた態勢づくりを加速する。また、鉄鋼や資源分野での競争力強化に加え、再生可能エネルギーやリサイクル分野にも投資を含めて注力し、脱炭素社会への対応も加速させる。

海外での地産地消ビジネスや鉄鋼事業同様の食品事業の「そこか(即納・小口・加工)」戦略に引き続き取り組むとともに、DXによる業務効率化や人的資本経営を推進し、確かな価値を創出する企業としてさらなる成長を目指したい。

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