常任理事に聞く2025年の展望

稲畑産業株式会社 代表取締役社長執行役員稲畑 勝太郎
岩谷産業株式会社 代表取締役 社長執行役員間島 寬
兼松株式会社 代表取締役社長宮部 佳也
興和株式会社 代表取締役社長三輪 芳弘
CBC 株式会社 代表取締役社長圡井 正太郎
JFE 商事株式会社 代表取締役社長小林 俊文
蝶理株式会社 代表取締役社長 社長執行役員迫田 竜之
長瀬産業株式会社 代表取締役社長上島 宏之
日鉄物産株式会社 代表取締役社長中村 真一
阪和興業株式会社 代表取締役社長中川 洋一

2025年の世界経済の展望および経営の抱負等について、日本貿易会常任理事へアンケートを実施しました。
(社名五十音順)

稲畑 勝太郎(稲畑産業株式会社 代表取締役社長執行役員)


2025年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

第二次トランプ政権が掲げる、高率の追加関税などの政策が世界経済へ与える影響を懸念する。最終的には米国経済へのダメージを避ける合理的な判断に着地するものと思われるが、安全保障の観点からも米中を中心とする経済摩擦の影響は長期化する。
国内経済は、関西万博の開催に伴うインバウンド需要の伸長もあり、緩やかな回復が続くものと期待する。

2025年の経営における注力点、抱負

新たにスタートを切った中期経営計画「NC2026」に沿った、成長分野への投資の積極化を実行し、事業拡大を推進する。
また、昨年から継続して実施している社員との懇談会の中で表出してきた様々な課題に取り組み、社内の活性化に結び付けたい。


間島 寬(岩谷産業株式会社 代表取締役 社長執行役員)


2025年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

米国トランプ大統領への政権移行に伴い、中国をはじめとする各国への関税率引き上げや、米国第一の政策による影響に加え、化石燃料への回帰に向けた環境・エネルギー政策の変更等により、世界経済は先行きの不透明な状況が続くことが懸念される。一方で中長期的には、脱炭素に向けたクリーンエネルギーへのシフトとAIを活用した技術革新が加速すると考えており、これらの事業を担う人材の確保と育成が重要となる。

2025年の経営における注力点、抱負

中期経営計画「PLAN27」では5年間で総額4,700億円の投資を計画しており、その内、水素事業で1,780億円を計画している。海外からの液化水素輸入等、サプライチェーンの構築と、移行期における水素需要への対応が重要課題と考えている。
また成長市場である東南アジアにおける産業ガス事業への投資等、グローバルな事業展開を加速していきたい。


宮部 佳也(兼松株式会社 代表取締役社長)


2025年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

米国のトランプ政権復活による保護主義の台頭、中国の景気停滞長期化、中東情勢悪化による地政学リスクの高止まり、世界中で多発する異常気象など、先行き不透明な状況が続いている。日本経済は、堅調な企業収益やインバウンド需要の拡大を背景に景気は緩やかな回復が期待される一方、利上げや為替動向の影響を注視している。
これら変化に対応することにより、新たなビジネスチャンスが生まれると考える。

2025年の経営における注力点、抱負

2024年度から開始した中期経営計画「integration1.0」で掲げた目指す姿である「効率的かつ持続可能なサプライチェーンを変革するソリューションプロバイダー」を実現するため、
グループ一体経営、提供価値の拡充、人的資本の強化を推進する。
また、当社の強みであるICTソリューション事業を強化し、非資源100%のビジネスポートフォリオを基盤に、持続可能な社会的価値、環境的価値、経済的価値を引き続き追及していく。


三輪 芳弘(興和株式会社 代表取締役社長)


2025年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

昨年の米国大統領選の結果を受け、世界経済の先行きの不透明感が強い。米国のさらなる保護主義政策が国際社会に及ぼす重大な影響を注視していく必要があり、国内では連立与党の過半数割れにより、野党との連携が必須となるなど、政策停滞リスクにも留意しなければならない。

世界の地政学的リスクは、いまだ過渡期にあり、グローバルでの地産地消の推進が急がれる。さらに、脱炭素に向けた米国の政策変更を背景としたビジネス戦略の見直しも求められるであろう。

2025年の経営における注力点、抱負

昨年、世界で初めてミノムシ繊維の製品化を実現した。高強度かつ環境に優しい天然繊維であり、世の中にイノベーションをもたらす可能性があるミノムシ素材の生産力強化と、新たな製品開発に繋がる取り組みを加速させていく。
環境分野においては、グリーンアンモニア・水素など「グリーンエナジー」に係る取り組みのグローバル展開をより一層推し進めるとともに、セルフケア分野では革新的なテクノロジーで新薬開発を急ぐ。さらに、ホスピタリティ部門におけるブランディング強化にも力を入れていく。

圡井 正太郎(CBC 株式会社 代表取締役社長)


2025年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

2025年は日本の政権交代の初年度となる。「予想のつかない通商上のダイナミズムの変化」を覚悟しながらも、「製造拠点のシフト(国から国への)や物流網を巡る変化」これらに機動的に対応できることが肝要となる。
同様に国際資源をめぐる国際間紛争やこれに伴う技術的トレンドの変化にも注目している。
国内においては労働力人口の低下に伴い、AI推進を見直した更なるデジタル活用と生産性の向上による経済発展を期待する。

2025年の経営における注力点、抱負

2025年の経営においては、第100期決算を迎えるとともに、中期経営計画「GRIT100」の最終年度も最高益計上を見込む予定で進行しているが、引き続き気を引き締めて迎える年となる。また、永続的な成長を実現するために、次の中期計画を据えて一層加速をする重要な年となる。
堅調な医薬・バイオ農薬事業のさらなる拡大を図るとともに、デジタル化への対応、また、グローバル市場での競争力を強化すべく、投融資やGroup拠点間での連携を更に強めることに注力すべく、CBC Group社員のウェルビーイングも重視し、働きがいのある職場環境を整えることで、「社員が誇れる強い会社」を目指して邁進する。


小林 俊文(JFE 商事株式会社 代表取締役社長)


2025年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

世界経済については、地政学リスクの継続と各国の保護主義政策による世界貿易の分断が引き続き懸念される。米国は金融緩和を進めたこともあり、経済の軟着陸が想定されるものの、新政権の動向を見極める必要がある。中国では、不動産不況に端を発した経済不振が継続しており、過剰な生産能力の問題にも注視が必要だ。
日本経済については、インバウンド需要や自動車生産の正常化、環境分野や半導体など設備投資の増加を背景に、緩やかな回復が期待されるが、依然として建築分野の低迷が懸念材料である。

2025年の経営における注力点、抱負

当社は2024年10月に設立20周年を迎えることができた。2025年度は8次中期の初年度となる。事業の基盤である国内事業では、カーボンニュートラルや新エネルギー関連などの成長分野への取り組みを加速させる。海外事業においては、成長地域での需要を着実に取り込むために、M&A、事業投資、設備増強などを積極的に進めていく。また、ダイバーシティ&インクルージョンの意識や風土の醸成、企業文化の変革にも取り組み、お客様に信頼され、任せられる存在を目指す。


迫田 竜之(蝶理株式会社 代表取締役社長 社長執行役員)


2025年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

2025年も昨年に引き続き、地域紛争・貿易摩擦に象徴される地政学リスク等に起因する先行き不透明な世界経済の動向を注視していく。最近のビジネス環境は短い時間軸で大きく変化し、加えて過去からの延長線上にない不確実な変化となっており、この変化への対応が企業に求められている。また、気候変動対策をはじめとした社会課題への対応は、グローバルな事業活動を行う上で、益々必要不可欠な取り組みとなる。

2025年の経営における注力点、抱負

2024年6月の着任以降、「選ばれる会社」をキーワードに企業価値向上に資する施策を実行してきた。
2025年度は、中期経営計画「Chori Innovation Plan 2025」の最終年度にあたり、サステナビリティ関連施策を実行し、ESG経営の推進に注力する。加えて、2025年4月には、これまで3年にわたり全社業務変革プロジェクトとして取り組んできた基幹システム(SAP)の導入・本格稼働を予定している。
中期経営計画の達成と基幹システムの導入・定着に万全を期し、持続的な成長を実現する。


上島 宏之(長瀬産業株式会社 代表取締役社長)


2025年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

トランプ新大統領政権下での関税引上げや対中政策強化が進み、サプライチェーン再構築の動きが一層活発化する。米国経済は減税等で順調に推移すると想定される一方で、中国経済の減速、欧州の不況は懸念材料。インドや東南アジアの事業機会をとらえながら機動的に経営判断したい。半導体業界の好不調はまだら模様だが、NAGASEが注力する生成AI向け半導体用の材料市場は好調が続くとみており、更なるビジネス拡大に向け事業を推進している。

2025年の経営における注力点、抱負

25年度は現中期経営計画の最終年度であり次期中期経営計画策定の年になる。“ユニークネスの原石”を探し、NAGASEならではの製品やビジネスモデルを追求したい。成長戦略の注力領域として掲げる半導体などの製造機能強化、インドやメキシコなどグローバルサウスでの事業展開を引き続き積極的に進める。VUCAの時代においてトップラインをのばすことはたやすくないが内部努力により筋肉質になってきた。お客様のものづくりの課題を素材(マテリアル)で解決するNAGASEとして社会に貢献していきたい。


中村 真一(日鉄物産株式会社 代表取締役社長)


2025年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

ウクライナ侵攻、中東紛争、米中・台湾問題などの地政学リスクの増大や、中国経済の減速、米国・欧州の金利動向など、不透明な状況が継続すると思われる。当社の主力である鉄鋼分野においては、自動車生産の回復など若干の底上げ要素はあるものの、依然として国内鋼材需要は低迷傾向にある。また、中国鋼材の過剰生産、原材料価格の高止まりなどもあり、需給環境は厳しくなることが予想される。その一方で、カーボンニュートラル関連商品や高機能商品の需要は高まっており、これらを確実に捕捉していきたい。

2025年の経営における注力点、抱負

2025年を最終年度とする中長期経営計画の柱、「事業基盤強化策の実行による強靭な企業体質の構築」「成長戦略の推進による持続的な利益成長の実現」「ESG経営の深化」の3施策を着実に実行する。加えて2023年日本製鉄の子会社となったことを契機に今まで実施していた戦略共有や相互インフラ活用などをさらに加速させ、シナジー効果の最大化に向けて全力で取り組み、日本製鉄グループの真の中核商社としてさらなる成長を目指したい。


中川 洋一(阪和興業株式会社 代表取締役社長)


2025年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

2025年度の事業環境は、米国の政権交代による政策転換の程度やそれによるウクライナや中東など世界各地の地政学的力学の変化、ひいては為替や金利、世界経済全体への影響もよく見極めていく必要がある。中国経済の停滞は長期化しており、日本経済もインバウンド需要こそ堅調だが、賃金上昇が消費喚起に結び付くかは先行き不安の解消が必須である。ESGや脱炭素分野では、米国や欧州で一部に揺り戻しの動きもあり、我が国が目指すべき方向性の再検討が必要になるかもしれない。

2025年の経営における注力点、抱負

政治経済動向が世界的に不透明な中、当社としては中期経営計画の下、事業環境の変化にも動じない強い経営基盤を形成するべく、流通としての機能強化、適切なリスクマネジメントの下での投資実行とその確実な回収、キャッシュ創出による財務体質の強化を進めていく。
出資も含めた海外での地産地消ビジネスにも引き続き注力するとともに、脱炭素・環境保全分野での商材強化により、業績面だけでなく、社会と協業したサステナビリティ経営の実現にも努めていく。

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