2024年1・2月号 No.820
2024年の世界経済の展望および経営の抱負等について、日本貿易会常任理事へアンケートを実施しました。
(社名五十音順)
長期化するロシア・ウクライナ情勢や、イスラエル・ハマス紛争の影響を受けてエネルギーコストは高止まりが続く一方で、中国の需要停滞の影響もあり、世界的な景気動向は緩やかな回復にとどまるものと思われる。経済安全保障の観点から、サプライチェーン見直しの動きは継続し、再構築の中で商社の果たす役割への期待は高まる。また、さまざまな産業で人手不足が深刻化しており、解決策の一つとしてDX推進には一層拍車がかかるだろう。
重点テーマに掲げて推進している、ライフサイエンス分野、環境・新エネルギー分野、モビリティ分野への取り組みに一層注力し、4月からスタートする次期中期経営計画へつなげるとともに、ダイバーシティの推進・社内コミュニケーションの活性化に向けた取り組みにも力を入れていきたい。
ウクライナおよび中東紛争の影響、中国、米国、欧州の景気減速リスクはあるものの、各国で政策金利が引き下げに転じることに伴い、世界経済は底堅く推移すると期待される。
特に、過度な中国依存リスクからの脱却や、「脱炭素」の流れから、資源・エネルギー・ハイテク分野のサプライチェーンの再構築が活発化し、製造業の国内回帰、海外から日本への投資拡大、ASEAN各国への生産移転などにより、事業機会が生まれると見通している。
2023年発表した、中期経営計画「PLAN27」を着実に遂行する。水素、脱炭素、国内エネルギー、海外、非財務の五つの重点施策を掲げ、5年間で総額4,700億円の投資を計画している。
成長の柱となる水素事業は、海外からの液化水素輸入に向けたサプライチェーン構築に注力する。並行して、国内での水素需要開拓を図るとともに、燃料転換などの脱炭素関連分野を軸として、国内外での新たな事業開発を加速していく。
世界経済は、米欧の高金利・高インフレ継続や中国の景気減速、ウクライナや中東情勢など地政学リスクの高まりにより、先行き不透明な状況が続く。日本経済は、サービス消費やインバウンド需要の復調が一巡し、緩やかな景気回復になる一方、DX・GXを中心にビジネス環境の変化は加速するだろう。当社グループは強みであるデジタルの知見、ソリューションと幅広い分野におけるトレーディング事業の経験を活かし、商社として新たなビジネス構築を目指す。
2024年4月から始まる次期中期経営計画を現在策定中であり、当社グループの強みである「強固な顧客基盤とそこから得られる生きた情報」「デジタルリテラシーが高い人材」「カーボンネガティブ、ネイチャーポジティブ達成に向けた順調な進捗」を最大限に活かしたチャレンジングな計画を策定するつもりだ。数字、量的な成長は当たり前だが、変化が激しい現代社会において持続可能な成長を目指す当社グループは、商社の原点を忘れずさらなる質の成長も実現していきたい。
世界の地政学リスクは過渡期にあり、さまざまなバランスを崩している。変化を読み取り、その先に間違った方向ではない経済活動が必要で、グローバルでの地産地消を進めていかなければならない。
資源がない日本においては安定した資源確保が必要となり、政官財が一体とならなければ、将来の日本は成り立たない。三次元的な視野が必要で、IT・DX・生成AIなど、この時代を変えるツールを積極的に活用しなければ生き残ることはできないであろう。日本においても将来に向けた人材育成が急務である。
「健康と環境」という二つのテーマを軸に世界情勢を見極めつつ、リスクテイクしながら積極的にビジネスを推進していく。
環境ビジネスでは「グリーンエナジー」をキーワードに、各部門が脱炭素に貢献する事業や新たなビジネスモデル構築へ積極的に投資していく。
また、健康ビジネスでは、国民の皆さまのセルフケア推進に対するサポートやウェルビーイングの実現に貢献していくと同時に、医療用医薬品と同様に、一般用医薬品などセルフケア製品のグローバル化もさらに推し進めていく。
2024年は、地域紛争の拡大、中国経済の低迷、米欧での金融引き締めによる景気悪化、在庫調整の遅れ等の懸念、さらには政治対立やサイバーテロ等のリスクにも対応が迫られる一方、インフレ率の沈静化や生成AIをはじめする技術革新の一層進展を期待されることから、両面をにらみながらの即応が一段と求められる年となる。
日本経済においても輸出需要の拡大、賃上による好循環な経済効果、インバウンド需要の外需取り込みにおける経済成長を期待している。
2024年は創業100年目を迎え、中期経営計画「GRIT100」の最終年度になるとともに次の100年に向けてグローバルビジネスの一段の推進に注力する年となる。
各事業の発展・拡大を狙いとして国内外での投融資を加速させ、成長が見込まれる医薬・バイオ農薬事業は引き続き注力するとともに、新たな事業基盤の構築にも注力していく。
グローバルビジネスの進展に伴い、コンプライアンス・ガバナンス体制の強化を進めていくとともに、社員の健康管理・意欲増進につながるエンゲージメント強化施策を通じて、「社員が誇れる強い会社」を目指して取り組んでいく。
世界経済は回復基調の継続が見込まれるが、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性がある。米国では、これまでの金融引き締めの影響が経済全般に波及する恐れがあるなど不透明感が強く、中国も不動産分野の不況の継続により景気回復には時間を要することが想定される。
国内経済は自動車を中心とした製造業の活動水準改善により、引き続き景気は緩やかな回復が見込まれるが、物価高による個人消費の抑制や、海外の経済減速影響により、そのペースは一段と鈍化する懸念がある。
第7次中期経営計画の最終年度を迎え、重点課題である電磁鋼板・自動車向け鋼材・海外建材事業・国内鉄鋼各分野の取り組みを加速させるとともに、次期中期経営計画に向けた種まきを進めていく。
また、バイオマス燃料やスクラップの取り扱い拡大や、高炉スラグの販売強化といった環境貢献への施策を進めていくとともに、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを加速させ、品質や安全に加え環境分野においても選ばれる商社を目指していく。
欧州・中東での紛争等に象徴される地政学リスクが高まっている。加えて中国の信用格下げ等、中国経済に対する懸念が、好調な米国経済を含めた世界の経済成長への足かせになる。国内では、物流の2024年問題への対応等、サプライチェーン全体の最適化を維持するために慎重な対応が求められる。2023年に続き、気候変動・人権・DX等への対応を含めたさらなるサステナブルな経営が求められ、時代の流れ・社会のニーズに対応した変化が必要な1年となる。
2023年4月に中期経営計画「Chori Innovation Plan 2025」を発表した。初年度となる2023年度は堅調に推移している。同中計では、「Sustainability」「Well-Being」「Innovation」をキーワードにVISION2030「ありたい姿」を掲げており、この実現に向け、サステナビリティ推進体制の整備等の諸施策を遂行する。特に、2025年4月から本格稼働を予定する世界標準な基幹システム(SAP)の導入に向けた全社業務変革プロジェクトの達成に万全を期す。
米国大統領選挙、台湾総統選挙などの結果による経済への影響を注視する。各国の金融政策や貿易に関わる法規制を踏まえたかじ取りが重要になる。地政学リスクは一層高まっており、不透明感は続く。引き続き、差し迫る気候変動への対応など変化を先取りしながらの企業経営が求められる。
3年目を迎えた中期経営計画ACE 2.0は、基盤・注力・育成・改善領域のポートフォリオを事業軸から機能軸に再整理した。基盤である商社機能から得た付加価値の高い情報とキャッシュを、半導体・フード・ライフサイエンスなど注力する製造機能に資本投下する。また、生分解性高吸水性ポリマーなどのグリーンマテリアル、防災・減災など国土強靭化に貢献する工業用パイプの展開を加速。「ものづくりの課題を素材(マテリアル)で解決する企業」として、圧倒的なユニークネスを競争力に社会課題の解決に貢献する。世界的に需給バランスが変化しており、グローバルサウスへのシフトを含め、サプライチェーンを確保していく。
ウクライナ侵攻、中東紛争、米中・台湾問題などの地政学リスクの増大や、中国経済の減速、米国・欧州の金利動向など、不透明な状況が継続すると思われる。当社の主力である鉄鋼分野においては、自動車生産の回復など若干の底上げ要素はあるものの、依然として国内鋼材需要は低迷傾向にある。また、中国鋼材の過剰生産、原材料価格の高止まりなどもあり、需給環境は厳しくなることが予想される。その一方で、カーボンニュートラル関連商品や高機能商品の需要は高まっており、これらを確実に捕捉していきたい。
2025年を最終年度とする中長期経営計画の柱、「事業基盤強化策の実行による強靭な企業体質の構築」「成長戦略の推進による持続的な利益成長の実現」「ESG経営の深化」の3施策を着実に実行する。加えて2023年日本製鉄の子会社となったことを契機に今まで実施していた戦略共有や相互インフラ活用などをさらに加速させ、シナジー効果の最大化に向けて全力で取り組み、日本製鉄グループの真の中核商社としてさらなる成長を目指したい。
2023年からの不透明なビジネス環境が続く。コロナこそピークアウトしたものの、ロシアのウクライナ侵攻は出口が見えず、中東で新たな紛争が発生するなど地政学的リスクが各地でくすぶっている。回復基調にあった経済面も商品価格高騰対策として金利政策が転換、中国経済の減速も長期化が懸念される他、米国大統領選の帰趨も注目される。国際社会の多軸化あるいは無軸化により、発生したイベントの影響予測が困難な難しい時代に入ったと感じる。ESGやSDGsへの取り組みもより実効性が求められる一方で、北米中心に否定的な動きも出ており、企業としての取り組みも難しいかじ取りを迫られる可能性がある。
2023度から開始した中期経営計画の下、引き続き財務基盤の充実やリスクマネジメント・ガバナンス体制の整備により、経営基盤を強化していく。また、流通としての機能強化、ソリューション型ビジネスへの昇華を進めていく。
電池素材や再生資源分野、脱炭素関連などへの投資の他、海外での地産地消ビジネスにおいて協業できる地場企業への出資等も行い、グループ事業全体の底上げを目指していく。
同時に、抽出したマテリアリティへの対応も進め、サステナビリティ経営への取り組みを強化していく。