2023年1・2月号(No.813)
2023年の世界経済の展望および経営の抱負等について、日本貿易会常任理事へアンケートを実施しました。
(社名五十音順)
ロシアのウクライナ侵攻に端を発するエネルギー価格の高騰、急激なインフレの進行によって各国の政策金利は引き上げが続いているが、景気の冷え込みへの懸念から金利政策は困難なかじ取りが求められ、為替も不安定な状況が続くものと思われる。一方で、コロナ危機からウィズコロナの時代へと急速にシフトが進む中、航空・観光・飲食など落ち込みが大きかった産業の回復はプラス材料。また、脱炭素に向けたさまざまな事業への投資をはじめ、サステナビリティ推進に向けた動きが加速する。
コロナ禍で進んだデジタル化やライフスタイルの変革には良い面もある一方、内外ともにコミュニケーションが薄くなった弊害も感じている。デジタル化などの利点は残しつつ、活発なコミュニケーションを取り戻し、中期経営計画「NC2023」の最終年度の目標達成につなげたい。
資源・エネルギー価格の上昇、サプライチェーンの分断、米国などの金融引き締めによる円安の進行と世界経済の減速といったリスク要因はあるが、経済活動の正常化がますます進み、年後半にかけて内需・外需とも緩やかな回復基調になると期待している。特に脱炭素をはじめ新たな事業機会への企業投資は業種を問わず積極的に行われている。国際競争力のある事業の開発力と企業の自己変革力が経営の上で重要となる。
中期経営計画「PLAN23」の最終年を迎える中、非財務指標を含めた次期中期計画の目標設定と達成のための具体的施策が課題となる。既存事業で足元を固めつつ、次世代資源・エネルギー分野、ライフサイエンス分野などへの戦略投資とデジタル化を推進する。特に既に実証に取り組んでいるCO2フリー水素のグローバルサプライチェーンの構築に加え、エネルギーのカーボンフリー化、循環型社会の実現に向けた資源リサイクル事業の立ち上げなど、さまざまな脱炭素ビジネスを確立する一年としたい。
先進国がインフレ抑制を最優先する姿勢を鮮明にする中、ロシア・ウクライナ情勢を受けた資源高・商品高や、中国ゼロコロナ政策の影響などで景気への下振れ圧力が強まりつつあり、国内でも、円安による物価高に起因する消費の下振れなども懸念される。このような不透明な状況は続くと思われるものの、大きな流れとしてDXやGXを中心としたビジネス環境の変化は加速すると思われ、ビジネスチャンスを捉えることができると考える。
中期ビジョン「future 135」の最終年度として、重点施策である「グループを挙げたDX推進」と「SDGsの達成に向けた取組み」をさらに進め、次のステージに向けた事業基盤の構築を目指す。刻々と変化する事業環境を踏まえ、変化へ適応できる体制の構築に取り組んでいく。また、中長期的な持続的成長と企業価値向上を実現するために、サステナビリティ課題への取り組みを強化していく。
ロシア・ウクライナ情勢に端を発した資源・エネルギー価格の高騰に伴う物価高や、為替相場の急激な変動など、世界経済の先行きは不透明感が強く、景気の緩やかな後退は避けられないであろう。また、台湾問題や北朝鮮の度重なるミサイル実験など、世界の地政学的リスクにも注視していく必要がある。一方で、日本の海外渡航客向け水際対策の緩和や、国内向け旅行支援策の継続実施等によるインバウンド需要の回復が期待でき、日本経済の底上げに期待したい。
インドで実施している火力発電所でのアンモニア混焼実験を加速させ、インド国内での普及に向けた活動をさらに推進していくとともに、世界の潮流でもある脱炭素社会に寄与するビジネスの確立に向けて、グリーンエナジーなどの多様なビジネスモデルを企画・推進していくことで、グローバルなカーボンニュートラルに貢献していく。また、医薬品を手掛ける企業の使命として、健康寿命延伸に向けた生活者のウェルビーイングの実現にも注力していく。
欧米でのインフレ高進に伴う利上げ加速が世界経済を下押しし、一段の低成長あるいは世界同時不況が懸念される。日本経済もインバウンド需要やコロナ禍からの人流再開による経済効果が見込まれるものの、2022年来のウクライナ危機や経済制裁、物流の混乱による在庫確保のための余剰在庫が重荷となり、停滞感を強めることも予想される。また近年、激しい気象変動、政治の分断や対立、サイバーテロなど、ビジネス環境はますます不透明な様相を呈してきており、有事等への危機管理が一段と重要となっていると認識している。
100期となる2年後(2024年度)をゴールとした中期経営計画「GRIT100」の完遂に向け、グローバルでのさらなる事業拡大を期し、今後も発展が見込まれる医薬・バイオ農薬分野に注力するとともに、化学品・樹脂関連では新興国等成長市場での協業や事業投資を通じて、EV、電材、半導体関連ビジネスを推進していく。また、今後予見されるさまざまなリスクを想定し、有事に即応できるよう、内部体制も強化しながらの強靭な事業基盤の構築と社員の健康・意欲増進につながる種々の施策を通じて、「社員が誇れる強い会社」を目指して取り組んでいく。
世界経済は全般的に回復基調ではあるものの、ロシアのウクライナ侵攻による原材料価格の急騰、コロナの再拡大、米国の金融政策の動向といった外部環境の変化を受けて、いまだ予断を許さない状況にある。国内経済については、活動水準は回復しつつあるものの、他方で半導体等の供給制約が直ちに解消されるとは考え難く、また原材料価格が将来的に高止まる可能性も否定できず、当面は不透明な事業環境が続く懸念がある。
2024年度を最終年度とした中期経営計画の3年目となる2023年も、引き続き、掲げた成長戦略を着実に推進するとともに、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを強化していく。電磁鋼板、自動車用ハイテンといったエコプロダクトや再生可能エネルギー分野、スクラップやバイオマス燃料、高炉スラグなどの環境資源への取り組みを通じて事業成長を図る。また、4月には人事制度を刷新し、D&Iを推進して全社員が活躍できる環境を整えていく。
世界経済は、ウィズコロナを前提とした経済活動が浸透する。渡航制限の解除が進み、ビジネスを含む人の往来はコロナ感染拡大前までに回復する。一方、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化等に起因する資源調達リスクや地政学リスクは継続し、事業環境の不確実性は高水準で推移する。サプライチェーンの再構築や、気候変動・人権・DX等への対応を含めたサステナブルな事業運営がさらに求められる一年となる。
2023年4月に新中期経営計画の発表を予定している。現中計期間中の業績は順調に推移し、経常利益は100億円に到達した。新中計では基本方針・戦略を大きく変更することはないが、経常利益100億円台の常態化と10年後、20年後のさらなる成長に向けた基礎固めに重点を置く。加えて、2024年10月に本格稼働を予定する基幹システムの導入に向けた全社業務変革プロジェクト(通称CARAT)の推進に注力する。また、人的資本等非財務情報の開示に着実に対応する。
インフレを背景とした各国の利上げ、中国経済の減速、ウクライナ問題によるエネルギーコスト上昇などの影響から、景気は後退局面に移行するとみている。また、米中対立など地政学リスクの増大により、半導体を中心に幅広い業界において生産拠点の見直し、サプライチェーンの再構築が進むので注視する。加えて、気候変動への対応、脱炭素社会への関心の高まりも一層加速することから、新たなビジネスチャンスを模索する。
中期経営計画「ACE 2.0」の折り返しに当たるため、外部環境などをしっかりと分析し、計数目標、非財務目標、双方の目標達成に向けて施策を推進する。事業面では、バイオ、フード、半導体関連事業に引き続き注力。製品開発、地域拡大を進める。また、2023年度はグローバルにおけるブランディング活動を展開する予定である。
米中の覇権争いの継続、長期化するロシア・ウクライナ紛争、中国におけるコロナ感染拡大の影響等から、世界経済の成長減速は避け難い状況。日本経済もコロナ禍からの回復に期待したいものの、先行きは不透明。当社の主力分野である鉄鋼についても、世界経済の減速やサプライチェーンの混乱からの回復遅れ、国内鋼材需要の低迷等により、2023年も厳しい経営環境が継続する見通しである。
2023年度は、2025年度に向けて実行中の中長期経営計画の中間年度。厳しい環境下ではあるが、「社会に貢献する強靭(きょうじん)な成長企業」を目指し、経営計画の柱である「事業基盤の強化」「成長戦略の推進」「ESG経営の深化」に全力を尽くす。また、当社を取り巻く環境の変化や当社が置かれている状況の変化を踏まえ、日本製鉄グループの真の中核商社となるべく、2025年度以降も見据えて中長期経営計画の見直しを検討する。
2023年は新型コロナの常態化、ロシア・ウクライナ紛争、それらも一因の商品価格の上昇、そして金利政策の転換など前年の状況を引きずってスタートしており、国際社会秩序の方向感を見定めにくい。その一方で、環境規制や脱炭素、ESG・SDGs対応などの社会的要請は、通奏低音のように一層経営上の課題となってくる。それらを制約条件として捉えるのではなく、能動的にビジネスチャンスを模索することで、持続的な成長を図っていく必要がある。
経営環境が不透明感を強めており、どのような環境にあっても耐えられる盤石な財務基盤構築に努めるとともに、資源投資の刈り取りも含めたグローバル調達力を高めて、顧客のあらゆるニーズに対応できるユーザー系商社の立ち位置をさらに進化させる。アジアを中心とした地産地消ビジネスや電池素材ビジネスなどに一層注力し、事業分野・エリアの拡大に見合った営業手法のDX対応や、社会の公器としてESG・SDGsなどへの取り組みも進めていく。