常任理事に聞く2022年の展望

稲畑産業株式会社 社長稲畑 勝太郎
岩谷産業株式会社 社長間島 寬
兼松株式会社 社長宮部 佳也
興和株式会社 社長三輪 芳弘
CBC株式会社 社長圡井 正太郎
JFE商事株式会社 社長小林 俊文
蝶理株式会社 社長先濵 一夫
長瀬産業株式会社 社長朝倉 研二
日鉄物産株式会社 社長佐伯 康光
阪和興業株式会社 社長古川 弘成
株式会社日立ハイテク 社長飯泉 孝

2022年の世界経済の展望および経営の抱負等について、日本貿易会常任理事へアンケートを実施しました。
(社名五十音順)

稲畑 勝太郎(稲畑産業株式会社 社長)


2022年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

新型コロナウイルス感染拡大の影響は、繰り返し変異株が現れるため長期化は避けられないが、治療薬の開発も進んでおり、少しずつ収束に向かうであろう。一方で、米中の経済摩擦が経済にとどまらない危険性をはらんでいることを懸念する。コロナ禍の影響でDXの推進には拍車が掛かった形だが、同時にサイバーセキュリティの問題が大きくクローズアップされることになると考えている。

2022年の経営における注力点、抱負

中期経営計画「NC2023」の2年目である2022年も、目標達成に向けた着実な歩みを進めたい。特に定性面において、事業部門のテーマの洗い直し、大きく変わりつつある職場環境に応じた人事制度の整備・改革を実行し、本来の趣旨に沿ったサステナビリティを大きく推進させたい。


間島 寬(岩谷産業株式会社 社長)


2022年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

コロナウイルス変異株の感染拡大や資源価格の高騰、半導体の供給不足などリスク要因はあるが、経済活動の正常化が進み、内・外需共に緩やかな回復基調になると期待している。脱炭素社会の到来を見据え、国内外で多くの企業が積極的な投資に乗り出している。業種・業態の垣根を越えた連携など、既成概念にとらわれない経営のかじ取りが重要となる。

2022年の経営における注力点、抱負

新中期経営計画「PLAN23」の達成に向け、経済再開に伴う需要をしっかりと取り込んで足元を固めつつ、来るべき脱炭素社会に向けた戦略投資の強化とデジタル化の推進を図っていく。特に、CO2フリー水素の製造から輸送まで含めたグローバルなサプライチェーン構築など、水素事業への取り組みを加速させる一年としたい。


宮部 佳也(兼松株式会社 社長)


2022年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

世界経済は総じてコロナ危機による落ち込みからの回復を続けていたが、新型コロナウイルスの新たな変異株の出現などもあり、回復のスローダウンが懸念される。また、国内外において半導体の供給不足が長引くことも懸念されるが、デジタル化や脱炭素の潮流によるビジネス環境の変化がさらに進む一年となるだろう。

2022年の経営における注力点、抱負

中期ビジョン「future 135」の後半3ヵ年の2年目となり、最終年度での目標達成に向けて、重点施策であるグループを挙げたDX推進とSDGsの達成に寄与する環境・社会・安全をテーマとする事業分野への投資をさらに進めていく。その基盤となる人材育成やグループ各社のデジタル化を引き続き強化するとともに、将来の収益につながる種蒔きも進めたい。


三輪 芳弘(興和株式会社 社長)


2022年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

米中覇権争い、半導体不足、原油相場等に起因するサプライチェーンの混乱や、新型コロナウイルスの変異株出現にも注視する必要があるが、経口タイプのコロナ治療薬の登場や、ワクチンのブースター接種等により、世界経済は緩やかに回復していくであろう。カーボンニュートラルに向けた社会経済の変革や人権問題などESG経営の重要性がさらに加速する一年となる。

2022年の経営における注力点、抱負

2050年カーボンニュートラルに向け、SDGsに関連するビジネスを推進する。風力・太陽光発電などの再生可能エネルギーや、水素・アンモニア等のCO2フリー燃料を中心としたグリーンビジネスへの転換が急務である。また、医薬事業においては、世界初となる血中の中性脂肪低下作用を持つ「パルモディア錠」の海外での上市に向けた活動を推進していく。


圡井 正太郎(CBC株式会社 社長)


2022年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

世界的にはいまだ感染拡大の完全な沈静化を見通せる状況にはないものの、新型コロナウイルスによる経済的打撃から回復し、新たに生まれた事業環境変化に対応しながら、世界経済を新たな成長へと浮揚させる重要な年になるだろう。成長産業への投資と国民の生活向上を期し、政府が成長と分配の政策を推進していくように、企業も自社の成長を通して、持続可能な社会と社員の充実した社会生活の実現が、より意識される時代になってきている。

2022年の経営における注力点、抱負

全社的には、100期となる3年後をゴールとした中期経営計画のスタート年として、よりグローバルでの事業拡大を意識し、さらなるM&A、投資等を取り入れながら、事業基盤の強化に取り組んでいく。主力である医薬・バイオ農薬関連は、今後も市場拡大が見込まれることから、欧米をはじめ成長市場での設備増強・生産能力の拡大に注力していく。また、化学品・樹脂関連では、EV、電材、半導体関連ビジネスの強化に努めるとともに、ESGを一層意識した事業活動の取り組みを推進していく。


小林 俊文(JFE商事株式会社 社長)


2022年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

国内外の経済環境は徐々に持ち直しの動きが見られるものの、新型コロナウイルス情勢は不透明感が続き、動向を注視していく。気候変動や人権問題等、さまざまな環境・社会的課題に対する危機感は世界規模で急速に広がっており、企業としてもその解決に向けての取り組みをより強く求められる年になるであろう。

2022年の経営における注力点、抱負

足元の業績は外部環境に恵まれた部分も含む追い風参考記録。中期経営計画2年目となる2022年は掲げた成長戦略を着実に軌道に乗せていきたい。電磁鋼板や自動車用ハイテンなどのエコプロダクトや再生可能エネルギー分野、スクラップやバイオマス燃料などの環境資源への取り組みを通じて事業成長を図るとともに、サステナブルな社会の実現に向けて貢献していく。


先濵 一夫(蝶理株式会社 社長)


2022年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

国内における新型コロナウイルス感染者数は増加に歯止めがかかり、徐々に経済活動正常化への歩みが進んでいるが、欧州諸国の感染急拡大や新たな変異株の出現など、今後も予断を許さない状況が続く。また、物流の混乱や運賃の高騰、半導体不足等不安定要素への対処が引き続きの課題となる。

2022年の経営における注力点、抱負

中期経営計画「Chori Innovation Plan 2022」の最終年度として、持続的成⻑のための基本戦略を着実に実行し、新たなステージに向けた基礎固めを加速する。DX対策として基幹システム刷新の検討を含めて強力に推進する。東証の市場再編を見据え、コーポレートガバナンス・コードへの対応、中でも情報開示のより一層の充実を図る。


朝倉 研二(長瀬産業株式会社 社長)


2022年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

ワクチン普及等により経済活動は徐々に戻りつつあるが、変異株出現もあり依然として不透明感が強い。国内経済も回復基調だがウィズコロナを前提とした経済活動へと意識を切り替える必要がある。また、気候変動問題等サステナビリティへの対応が一層求められる。外部環境の変化を見極め、デジタル、バイオテクノロジー等を活用したソリューション提供を積極的に進めていく。

2022年の経営における注力点、抱負

2021年4月より新中期経営計画「ACE 2.0」が始動。引き続き収益構造の変革、企業風土の改革を進める。重要施策“持続可能な事業”(N-Sustainable事業)では、環境・エネルギー、次世代通信関連、ライフ&ヘルスケアを主な事業領域とし、社会課題の解決を目指す。化学系専門商社の枠を超え、変化に対応し持続的な成長を実現するため「質の追求」を着実に進めていく。


佐伯 康光(日鉄物産株式会社 社長)


2022年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

引き続き2022年も世界経済の持ち直し傾向は続くことが予想されるが、2021年末発現した新型コロナウイルスの変異株、米国をはじめとする各国金融政策等、経済への影響を注視していく。一方、世界的なSDGs、カーボンニュートラル等への取り組みにより新規需要が創出され、事業機会は拡大するであろう。

2022年の経営における注力点、抱負

大きく変化する事業環境を踏まえ、事業基盤強化、成長戦略の実行、ESG経営の深化を三つの柱として策定した中長期経営計画の実行を加速し、持続的成長と企業価値向上の早期実現を目指す。また、ワーク・ライフ・バランスを大切にしながら「働きやすい職場、働きがいのある仕事の創造」に向け、各種施策を継続していく。


古川 弘成(阪和興業株式会社 社長)


2022年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

2022年は新型コロナウイルスが常態化する中にあっても、各国で経済正常化と並行して、カーボンニュートラル・脱炭素への動きが加速し、中国も従来の拡大政策から需給の均衡路線への転換を図ってくる。EV化やその前提となるエネルギー転換・電源構成の見直しも必至で、脱炭素に向けた欧米、日本、中国間の主導権争い、レアメタルやレアアースの獲得競争も激しくなるだろう。

2022年の経営における注力点、抱負

中期経営計画の前倒し達成が視野に入り、次のステージを目指す。ウィズコロナでの経営効率化やESG対応の高度化はもちろんだが、TCFDのCO2排出量開示が進めば、排出削減のため、機能のない流通業者の介在余地は狭まってくる。当社は全ての事業で、「そこか(即納・小口・加工)」機能を一層強化し、海外では出資したメーカーと共にメーカー的な顔も持って、サプライチェーンにおける存在意義を高めていく。


飯泉 孝(株式会社日立ハイテク 社長)


2022年の世界経済(含む日本経済)、ビジネス環境の展望

新型コロナウイルスの影響は、変異株の出現により感染収束がいまだ不透明であり、さらにはさまざまな部材や原材料の調達面での影響、および原油価格高騰による影響について、引き続き動向を注視していく。一方、世の中のデジタル化の推進や脱炭素化による持続可能な社会に向けた取り組みなどにより、経済活動が回復することを期待している。

2022年の経営における注力点、抱負

大きく変化する事業環境において、当社は常にリスクに備え、柔軟に対応してきた。2022年度は新たな中期経営戦略を策定する年となる。「見る・測る・分析する」という当社のコア技術とグローバルなフロント力に磨きをかけ、デジタルを融合させていく。当社自身もさらに進化することで、より広く社会・環境課題解決に貢献し、世の中から常に必要とされる企業であり続けたい。

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