オフィス担当者インタビュー 「Work-Xプロジェクトと共にオフィスを創る」

三井物産株式会社
人事総務部 Work-X室
長部 茉莉子

Work-X室が設置された経緯を教えてください。


インタビューの様子

当初計画されていた新本社は、たくさんのデスクが島型に並んだ執務スペースと、壁で仕切られた会議室がフロアごとに配置されるごく一般的なもので、旧本社を再現することを主軸に考えらえた設計で進んでいました。しかし、2017年に策定された、2030年をターゲットとした経営計画「長期業態ビジョン」で流れが変わりました。「強い『個』がビジネスをつくる」と打ち出しているものの、当時、オフィスの机やキャビネットの中は紙資料が山積み、固定電話使用が当たり前。以前と同じようなオフィスのままで、この経営計画を実現させることができるのかという意見が上がったからです。2018年夏より新しい働き方やハード面での大きな変更を検討し、並行してこの大きな働き方の変化に合わせていく意識改革の必要性を感じたコーポレート部署の有志が中心となってタスクフォースが動き出し、議論を進める中で経営の意思ともリンクしたWork-X(Workplace Experience)プロジェクトへと変化していきました。そして、タスクフォースがつくり上げたWork-Xのコンセプト(前述の2大テーマと七つの施策)とチェンジマネジメントに関する社内浸透体制などを含めて経営陣の承認を得て、2019年夏、正式な社内組織「Work-X室」が発足しました。


長部さんはなぜWork-X室に加わろうと思ったのですか。


私は、入社以来、化学品の貿易業務を担当していて、2019年8月のWork-X室設立時に仲間入りしました。私が仕事をする上で常に意識しているのは、「一緒に働きたくなる“人”になる」ということです。仕事は自分一人だけの力ではなく、社内外の関係者の力が集結したからこそ、一人ではなし得ない経験をしてきたという実感から、このように考えるようになりました。同時に、自分自身が会社にいる意味やどのように貢献しているかも考えるようになりました。そのタイミングでWork-X室新設の話を聞き、Work-Xプロジェクトを通して、たくさんの魅力的な“人”をつなぎ、会社自体を今よりももっと「一緒に働きたくなる“会社”」に発展させていくことができるのではないか、であれば自分がその一員になりたいと思い、参加を希望しました。オフィスでたくさんの人と言葉を交わし、それをきっかけに新たなアイデアが生まれ、それらを活かしビジネスをつくり、純粋に仕事を楽しいと感じることができる、そして皆で達成感を得ることができる、そのような場がオフィスといえるような環境をつくりたいと考えています。

チェンジマネジメントはどのように行っているのですか。

Work-X室には、16の各事業本部から選出された「Work-Xアンバサダー」がいます。内側から少しずつ意識・行動を変えていくために、各事業本部で信頼を置かれている社員がアンバサダーを務め、それぞれの事業本部に合った方法でWork-Xの浸透・体現を図っています。Work-X室はアンバサダーを含めて現在25人程度の組織となっています。意識・行動変革は一朝一夕でできるものではないため、Work-X室として組織化し、移転後も継続して変革に取り組めていることの意義は大きいです。社員一人一人の意識・行動改革は、会社の文化を変えることにつながります。経営のコミットを得て、ソフト面からオフィス・働き方を支えていく組織を設置したことは、日本では珍しい取り組みかもしれません。

今後オフィスはどのようになっていきますか。

アンバサダーを通じて収集した各事業本部の意見や各種データを分析しながら、都度、改善につなげています。コロナの影響でオフィスを使用できない日々が続き、現状は十分な意見・データ収集が進んでいませんが、今後は、定期的なアンケートや社員の位置情報などを活用した定量データを用いて、社内外のたくさんの人の知恵を借りながら働き方を可視化し、オフィスの改善に役立てていきたいと考えています。コミュニケーションの手段が増え、どこにいてもいくらでも人とつながることができる時代ですが、ウィズコロナの今、オフィスで人と会って直接言葉を交わし、相手の雰囲気を感じられることは、とてもありがたい特別な経験だと思います。社員一人一人が、オフィスでの良質な経験を通して仕事をつくり、仲間と達成感を分かち合い、社会に貢献する喜びを感じられるようなオフィスにしたいです。

長部さんにとってのオフィスとはどのようなものでしょうか。


たくさんの人と関わる中で、自分の役割や得意なことを知ることのできる、一つの大事な居場所だといえます。仕事をしている時間は人生の時間の中の大きな割合を占めますから、会社、そしてオフィスを自分の居場所だと感じられたら、仕事をすること・働くことがもっと楽しく充実したものになると信じています。オフィスは、リモートワークでは実現することが難しい、「五感」を使って良質な経験ができる場所です。これまで、「オフィス=仕事をする場所」とシンプルに定義されていたため、コロナ禍でオフィス不要論も出ました。しかし、アフターコロナへの兆しが見える今、オフィスの価値を見直す流れが戻ってきているように感じます。Work-X室の業務は、私の根幹にある思いを具現化することのできる、やりがいを感じる仕事そのものです。当社のオフィスに社内外のたくさんの人を招き入れ、多種多様な知恵やアイデアを掛け合わせて知的化学反応が起き、ビジネスを通して社会に還元されることを願っています。これからもWork-X室の一員として、多様な「個」が集まり、「偶発的な出会い」や「自発的なコラボレーション」が生まれ、ビジネスを創造し続けることができる、そうしたオフィスを創っていきたいと思います。

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