中小企業支援活動 ABICの地方自治体・中小企業支援活動と新たな活動の動き

ABIC 事務局長
宮崎 浩志

現役時代は会社を通じた本業で社会に貢献、退職後は培った経験・知識・人的ネットワークなどを活かして社会へ貢献する、この熱い想いと強い志を持った会員の方々と共にABICは歩みを進めてきました。ABICのことをご存じない方々に説明する際は「守備範囲の広いユニークな人材バンク」という表現でお伝えしていますが、求められるニーズが世の中の動き・環境変化などにより多様化し、複合的な機能を発揮することがさまざまな場面で求められてきています。

ABICの活動における地方自治体・中小企業支援の割合は大きくなっており、2019年度実績で全体の4割弱を占めています。ABICが産声を上げた2000年度からしばらくの期間、主要活動分野は在日留学生支援や大学・社会人講座での講議など教育系が中心でしたが、2007年度には地方自治体・中小企業支援活動が前年度対比で倍増して教育系に肩を並べ、翌2008年度にはリーマン・ショックの環境下でさらに活動機会が大幅に増加し、全体の5割弱を占めるまでになりました。その後も新興国の成長を取り込むとの政府の成長戦略を基に、地方自治体が海外展開支援あるいは国内販路拡充のプログラムを充実させる中で、ABICのシニア人材への期待・ニーズは高まり、地方自治体・中小企業支援の活動は右肩上がりの拡大が続きました。2019年度第4四半期にはコロナ禍の影響により活動実績は多少減少したものの、本日(2020年12月)現在、延べ人員で2,500人を超える会員が活動し、全国47都道府県のうち、37都道府県へ取り組み実績を広げてきています。


高知でのプロ人材交流会でパネリストとして登壇
(中央左 宮崎氏、中央 ABICコーディネーター野津氏)

その中で高知県とは、2012年度から2015年度まで国立大学法人高知大学でABIC会員が講座を受け持ちました。2016年2月からは、大川村が生産する「地鶏」の首都圏での販路拡大支援も開始され、2017年度には高知県産業振興センターの常勤職員としてABIC会員2人が経営統括と海外支援コーディネーターに就任、2018年度からは地域商社化アドバイザーとして津野町に赴任し活動を開始しました。また、2018年度には「高知県移住促進・人材確保センター」と連携の下、地場の中小企業の直接支援も開始し、2018年9月には鋳物メーカー、11月には缶詰メーカー、2019年6月には土木・建設会社、10月には食品メーカーへ、それぞれABIC会員を紹介し、採用いただいています。2020年度はコロナ禍でABICの活動にも逆風が吹く環境下においても、6件のマッチングが成就し、既に4件は契約あるいは実活動が開始されています。このことは、コロナ禍といえども、多くの中小企業が前向きに事業に取り組み、人材を求めている証しであり、移住促進・人材確保センターの理事長をはじめ現場のご担当者の方々がそのニーズを丁寧かつ上手に引き出し、ABICと連携いただいていることは感謝に堪えません。

少子高齢化、労働人口不足、後継者不足など日本の抱える問題は全て、地方でより顕著な状況であり、それを乗り越えるべく、官民を挙げて地域創生・活性化に向けた施策が検討・実施されています。そのような環境下で、2019年4月から特定14業種では外国人の直接雇用が認められ、多くの企業が外国人技能実習生受け入れなどの動きを活発化する一方、同年6月には「日本語教育の推進に関する法律」が施行され、外国人に対する日本語教育に関する国・地方自治体の役割・責務を明らかにし、外国人を雇用する企業には、その家族も対象として日本語教育の機会を提供することを努力義務として定める動きが起こっています。この二つの動きによって、多様な文化の共生社会、そして、少子高齢化や労働人口不足からの脱却と多様性を認めた地域創生・活性化の実現に向けてかじが切られ始めました。その中で大きな役割を担う外国人への日本語教育がクローズアップされ、日本語教育支援活動に大きなニーズがもたらされています。

外国人を雇用する企業が従業員とその家族に日本語教育を受ける機会を提供する努力義務を負うことにより、日本語教育支援活動は従来の在日留学生・外国籍児童・生徒への支援にとどまらず、地方自治体・中小企業への新たな支援プログラムへと位置付けが広がります。そのニーズに対応するためにABICとしては日本語教師養成講座の運営体制を強化し、並行してオンラインの利活用により居住地に制限なく講座を受講できる環境を整え、講座内容もオンライン化に即して見直すことなどが喫緊の課題となっています。その課題を解決するためには、日本貿易会をはじめ関係諸団体関係者との協力・連携がますます重要となってきます。

また、もう一つの大きな動きとして、改正高年齢者雇用安定法が2021年4月から施行され、企業に70歳までの就業確保の措置を講ずる努力義務が課されることになりました。70歳までの定年の引き上げ、定年廃止、70歳までの継続雇用制度導入などの直接雇用に加え、多様な働き方として創業支援等措置(70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入と70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入)が加わり、企業が社会貢献活動を行うABICをプラットフォームとして活用することが改正法対応の一つの選択肢と位置付けられました。このように、従来、地方自治体・中小企業支援や大学・社会人講座などの各活動は、それぞれが独立した活動分野としてあったものが、例えば、地方自治体が日本語教室を運営支援あるいは産学連携を支援するなどニーズも多様かつ複合的になり、ABICの活動もより柔軟で高い総合力を発揮していくことが求められています。こうした環境変化をしっかりと認識し、ABICを柔軟で対応力ある頼りにされる社会貢献団体として一層深化・発展させ、他の社会貢献団体などとも連携しつつ、熱い想いを持って社会への貢献活動の輪を広げてまいりますので、ご年齢にとらわれず、活動会員への新規ご登録、活動へのご参加、賛助会員・正会員入会のご検討など、引き続きご支援・ご協力よろしくお願い申し上げます。

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