中小企業支援活動 他県での活動事例

青森県での取り組み


LONDONワインチャレンジインターナショナルに
青森県産の日本酒を出品。
見事金賞を受賞した。(一番右島谷氏)

2011年に青森県の依頼を受け、社団法人青森物産振興協会で青森県産品輸出促進員として常勤勤務するABICの会員を紹介した。輸出促進員制度が終了するまでの8年間、2019年3月末までの支援となった。常勤での活動の場合、現地への赴任が必要となり、会員の8割が首都圏在住のため、人員を見つけることが厳しくなるケースが多いが、本件に関しては3年間と5年間で1人ずつ、合計2人の会員が勤め上げた。2人の会員はそれぞれ繊維関係、金融関係の業界経験があったが、特産品輸出とは全くカテゴリーの異なる出身であり、新たな領域での挑戦となった。担当した会員が単身で海外にも赴き、販路拡大に奔走するというチャレンジングな業務内容で、裁量の大きな難易度の高いものであったが、自身の経験をフルに活かしつつ、国内外の商談会への積極的参加やオンラインでの海外企業のリサーチなどを通して営業活動を行い、順調に販路を開拓することができた。青森県での支援の成功は、一見難しいと思われた赴任と困難の伴う業務の両方を乗り越え、業界が異なっても有効な支援を成し遂げることができるというABICのキャパシティの広さを証明するものといえる。一つの成功事例として今後も他県での活動のロールモデルとなることが期待される。


青森県産品を世界へ


島谷 豊 氏
(日本興業銀行出身)

2014年から5年間、ABICの紹介で青森県産品の輸出促進事業に関わった。25年の銀行生活および10年のモーターメーカー勤務から未知の分野である農水産品の輸出業へと無謀とも思える転身であったが、周囲の強力なサポートやリンゴ・ホタテなどで台湾を中心に既に確立していたAOMORIブランドの高評価に支えられ無難にスタートが切れた。青森は銀行時代に4年間担当していた経験から土地勘はあったものの、爾来(じらい)30年が経過し、出稼ぎ問題の解消(8万人→3千人)や、新幹線開通で東京から日帰り圏内となるなど時代の変化に並行して、農産品市場は多種多様な品物であふれるようになっていた。

これらの産品を前に、①売れるものから売る(ニッチなものは回避)、②売れる地域(先・中進国)に絞る、③資金決済が確実な相手と取引する(必ず事前に訪問)、④継続取引可能先を主体的に選ぶなどの販売戦略を共有し、国内外の専門商社などを見つけその商流に乗せてもらい、日本酒・ホタテ・ジュース・サバ加工品などの販路を東南アジア中心に最後は欧州にまで拡大できた。個人的にも県内をくまなく回り充実した青森生活を満喫し、現在は仙台に住まいを移した。今も時折ゴルフコンペ・宴会などに誘われ、当時の仲間と青森で怪気炎を上げている。


山口県での取り組み


山口県「新製品フェア」での
販路開拓のための企業相談会デスクの様子
(中央手前近野氏)

山口県商工労働部から問い合わせがあり、2007年より財団法人やまぐち産業振興財団を通じた事業支援を長らく継続している。機械などのハード関連事業、食料品などのソフト関連事業を2本柱として、首都圏、近畿圏への販路拡大をメインの支援と位置付けている。山口県内の産業関連イベントにて販路開拓のための事業化支援相談デスクを設け、県内企業の要望を伺い、担当のABIC会員が首都圏などの企業に赴き、販路になり得る企業との間を取り持っている。ABIC会員の豊富な知識、経験、人脈などのネットワークは大いに期待されており、持てる力をフルに活かして一つでも多くの案件をつなげるために日々奔走している。2019年度は年間100件程度の案件に携わったが、ABICの支援を通じて販路拡大が軌道に乗った企業の中には首都圏に事業所を設置するところも出てきており、大きな成果となっている。2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で支援にも大きな影響が出ているが、今後も状況に合わせてでき得る限りの支援を行っていきたい。

山口県中小企業支援を続けて


近野 治夫 氏
(丸紅出身)

現役引退後、中小企業支援を始めて16年になる。この間、食品類を担当し、山口県を主体に数県にわたり延べ1,000回以上、企業経営者と面談を行ってきた。食品産業は、他の産業のようなダイナミックな技術革新はないものの食という必要不可欠な消費に支えられて、日本のFOODEXのように世界3大食品展にまで発展している産業でもある。

山口県は、錦帯橋に代表される東の岩国市から、西の漁港下関市まで瀬戸内海に面し、関門海峡から日本海に入り、北の長門市、萩市と続く、温暖な気候の下、農水産資源に恵まれた県である。代表される商品は、質の高いかまぼこをはじめとする練り物商品、ノドグロ、フグ、もずくなどの水産食品、しょうゆ、酒など伝統のある醸造商品、かんきつ、ツバキなどのかんきつ製品が挙げられる。企業経営者との面談で得た支援ポイントは、目線を合わせること、口より耳が大切なこと、既存の生産商品を尊重することである。日本の各地方にはまだまだ隠れた食品素材が数多くあるが、モノづくりは得意でも生産商品を紹介するつてがないという共通の悩みがある。新たな分野である健康をベースとした商品開発には、日本人の質が求められている。食品生産国としてますます世界から注目されることは間違いない。

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