「SDGsと商社ビジネスの親和性」

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授
(「SDGsの達成に向けた商社の取り組み」特別研究会 主査)
蟹江 憲史
丸紅株式会社 サステナビリティ推進部 副部長頓所 明彦
株式会社日立ハイテク
CSR本部CSR・コーポレートコミュニケーション部 部長
松﨑 倫明
兼松株式会社 広報・IR室 担当室長渡部 佳津子
住友商事株式会社 サステナビリティ推進部長
(「SDGsの達成に向けた商社の取り組み」特別研究会 座長)
(司会)大野 茂樹

10月22日、「SDGsの達成に向けた商社の取り組み」特別研究会に参加された委員の方々にお集まりいただき、研究成果としてまとめた『SDGsと商社』のテーマである「SDGsの特質と商社の強みの親和性」について振り返っていただきました。
(本稿は10月22日に開催した座談会の内容を事務局でとりまとめ、出席者の校閲を受けたものです)


1. 「SDGsの達成に向けた商社の取り組み」特別研究会に参加するに当たって


住友商事株式会社
サステナビリティ推進部長
大野 茂樹 氏

大野:住友商事の大野です。本日司会を務めさせていただきますので、よろしくお願いします。まずは自己紹介を兼ねて、皆さんが今回の「SDGsの達成に向けた商社の取り組み」特別研究会に参加いただいたときの思いについて伺います。2019年5月に本研究会が発足した際、私は、サステナビリティ推進部にいましたので、SDGsのことはもちろん知っていました。また、世の中の潮流として企業のSDGsへの取り組みが注目されていることをひしひしと感じていましたので、「SDGsと商社」というのはとてもタイムリーで重要なテーマだと直感的に思いました。

蟹江:慶應義塾大学の蟹江です。商社の活動について友人からいろいろと聞いていたこともあり、今回、本研究会の主査への就任についてお話をいただいた際、SDGsと商社は親和性があるのだろうなとぼんやりと思っていましたが、研究会を通じて、私自身も商社の活動とSDGsの親和性を具体的に考えて学ぶことができました。


慶應義塾大学大学院
政策・メディア研究科 教授
蟹江 憲史 氏

頓所:丸紅の頓所です。私も、SDGsについては、企業による貢献への期待が年々高まってきていると感じていた一方で、今回参加させていただくに当たり、商材やビジネスモデルが広範にわたる商社活動を、SDGsというテーマでどのようにまとめていくのかと当初は考えていました。

松﨑:日立ハイテクの松﨑です。私は、前職はメーカーで、2018年に日立ハイテクに入社したこともあり、本研究会への参加を本部長から打診された際、商社のことはまだあまり分かっていませんがよろしいですかという話をしました。ただ、会社全体として、2018年から事業部門と一体でのCSR推進を掲げていたこともあり、さまざまな会議を通じて勉強させていただこうという思いでいました。私としては、一方でメーカーならではの良さがあり、他方で商社ならではの良さがあると感じていて、メーカーでの経験を踏まえて貢献できればと思い、参加させていただきました。

渡部:兼松の渡部です。当社も、世の中の潮流を受けて、会社としてSDGsにどのように取り組んでいくのかをしっかり考える体制になってきました。私自身は、広報、IRを担当する部署に所属しており、機関投資家からESG関連の問い合わせを受けたり、統合報告書でサステナビリティやSDGs、会社のマテリアリティ(重要課題)との関連性をどのように見せていくのかを考えたりしています。ただ単にSDGsの各ゴールとビジネスのひも付けをするだけでは、多種多様なビジネスを展開する商社の機能や役割をうまく表せないという課題を抱えていたところ、本研究会のお話があり、参加させていただきました。

2. 特別研究会を振り返って

大野:今回、特別研究会を始動するに当たり、参加メンバーのご関心をお聞きしたところ、社内浸透(いかに社員に自分ごととしてSDGsを考えてもらうか)と、社外浸透(商社がSDGsに取り組んでいることをいかにステークホルダーに理解してもらうか)の二つが挙がりました。また、商社こそがSDGsの達成にリーダーシップを発揮すべき存在であるというロジックを構築したいということで、最終的には「SDGsの特質と商社の強みの親和性」というテーマに行き着きましたが、まずはそのあたりの議論の流れについて皆さんと一緒に振り返りたいと思います。

頓所:私は、序盤は参加できていなかったのですが、「SDGsの特質と商社の強みの親和性」という切り口が非常に良かったと思いました。商社の強み・特徴と具体的な事業を掘り下げる形でSDGsへの貢献を捉えることができ、論点を整理することができました。

松﨑:SDGsの目標一つ一つを議論するのではなく、商社がSDGsに関してどういうアプローチができるのかという親和性の話に入っていったので、商社が世の中にどのように貢献できるかということを広く議論できたのかなと思います。

大野:商社はモノを作るメーカーと違って固定した「売り」がない一方で、だからこそ課題オリエンテッドでマーケットインの発想がしやすいという議論もありましたね。


丸紅株式会社
サステナビリティ推進部 副部長
頓所 明彦 氏

松﨑:その中で、専門商社や総合商社など、商社にはさまざまな形があるという話も出ましたが、SDGsとの親和性という点では、どの形で商社機能を果たしても通ずるところがあったので、そういう全体を一緒に考えられるテーマになったのが良かったと思っています。

渡部:議論が進む中で、商社本来の機能を改めて見直すことができたのも良かったと思います。また、SDGsの達成に向けてバックキャスティングの発想でビジネスに取り組むことが重要になってくる中、今回の親和性という切り口から、社員の発想の転換に向けたヒントを得られたような気がしています。

蟹江:SDGs中心ではなく、自分たちの取り組んでいること、自分たちの目標があって、そこにSDGsをどのように絡めるかというのが本質だと思いますので、それを体現できたのはとても良かったと感じています。われわれのところでxSDG・ラボというラボをつくっているのですが、「掛ける」SDGsというのが名前の由来です。つまり、SDGsは掛け合わせられる側なので、掛け合わせる何かがなければならない。今回は、それが商社の強みとの親和性というところで、とてもきれいにまとまったなという印象を持ちました。

大野:自分たちの仕事や強み、目標に引き付けて考えることが重要で、それが今回の議論の中で皆さんが腑(ふ)に落ちた一番のエッセンスかなと感じています。

渡部:私見ですが、各商社の企業理念もSDGsに通ずる部分が大きいと感じています。例えば、手前みそで恐縮ですが、当社には「わが国の福利を増進するの分子を播種栽培す」という創業主意があります。これは、「わが国の経済を発展させ豊かにし、人々を幸福にするために、1粒の種をまく(=事業を起こす)のだ」という創業者の決意の言葉ですが、現代社会に当てはめると、日本だけでなく世界中の国や地域、そしてそこで暮らす人々を豊かで幸せにするようにビジネスを創造していく、というSDGsに通ずる理念だと思います。SDGsを達成するというと難しく考えがちですが、もともと商社パーソンはSDGs的な発想でビジネスに取り組んできたし、今もそうなのではないかなと思いました。

蟹江:もともと近江商人の理念である「三方よし」はSDGsと親和性があるので、商社の経営理念や創業理念に立ち返るとSDGs的な発想に行き着くというのは、本当に実感しましたね。

頓所:事業によっても地域社会への貢献をごく自然に考える状況にあると思います。当社はインドネシアと豪州で植林事業を行っていますが、特にインドネシアでの植林面積は広大であり、地域社会との共発展が重要となります。地域住民の雇用創出や教育支援、共同植林などの共同プログラムなど、地域経済の発展につながるような取り組みを行っています。

3. SDGsの特質と商社の強みとの親和性

SDGsの特質(目標達成に求められる視点)商社の強み
社会課題のグローバル化・ボーダーレス化グローバルネットワーク(グローバルな課題をいち早くキャッチし、国を超えて対応する力)
複合的アプローチ複合的アプローチ(多様な機能・サービスによるビジネス創出力、引き出しの多さ)
パートナーシップパートナーシップ(地域や分野に精通したパートナーを活かすオーガナイザー機能、総合力)
イノベーションイノベーション(新規ビジネスの目利き力、さまざまな課題に対するソリューション提供力)
全体を俯瞰したアプローチ全体を俯瞰したアプローチ(川上から川下までバリューチェーンの各段階に関与)
目標ベースのガバナンス(バックキャスティング)未来志向(時代を先取りし、次世代を見据えた未来志向のビジネス展開)

大野:研究成果をまとめるに当たり、SDGsの特質と商社の強みの親和性を「グローバルネットワーク」「複合的アプローチ」「パートナーシップ」「イノベーション」「全体を俯瞰(ふかん)したアプローチ」「未来志向」という六つの切り口で整理しました。それぞれの切り口について振り返ってみたいと思います。まず、「グローバルネットワーク」について、議論の中で蟹江先生から、せっかく国をまたいでビジネスを行っているのだから、商社はきちんと全体最適化をする義務があるのではないかというお話も出ましたね。

蟹江:最適化するための後ろ盾になるというか、そのような機能がこれから付いていくといいという話をしましたね。それは「全体を俯瞰したアプローチ」にもつながってきますが、いろいろなことをグローバルに取り組んでいるという商社の強みがSDGsの方向に進んだときには、かなり大きな社会の力になるのではないかと思います。

大野:この六つの切り口は互いにリンクしている部分もありますよね。また、グローバルにサプライチェーンやバリューチェーンに携わっているというところが、強みでもあり、リスクでもあるという話もありました。

松﨑:商社って本当にさまざまなところに行くので、それだけアンテナをたくさん持っていると思うのです。どこかのアンテナに一つ課題が発見されて、それがその地域特有のものもあれば、違う地域でも共通の課題かもしれない。一つ発見したものを違うところでも解決につなげていくと、より効果が広がっていく。そういう意味ではアンテナの高さというのが商社の強みであり、SDGsとも非常に親和性が高いと思います。

蟹江:SDGsは、リスク対応のためにという部分もあると思いますが、どちらかというとチャンスをつかむためにある。松﨑さんがおっしゃったように、解決策を一つ発見すれば、こっちの国でもあっちの国でも広げられるというのは、商社の強みです。それをSDGsという共通言語で意識的に広げられるというところは、チャンスになり得る話なのではないかと思います。

松﨑:会社としてなぜSDGsに取り組むべきかというときにリスク管理というと、もちろんビジネス上は必要なのですが、あまりみんなが前向きには動いてくれないから、そこは大事な視点かなと思います。

蟹江:さまざまなことに取り組んでいるというのは、逆に弱みに考えられがちという話もありましたね。

大野:それは「複合的アプローチ」で議論しましたね。さまざまな事業に取り組んでいて引き出しが多いのが商社の特徴ですが、一つの社会課題に講じる策が多いという強みを有している半面、コングロマリット・ディスカウントが生じているという指摘も少なくありません。

渡部:海外の投資家には、多岐にわたるビジネスを手掛ける商社のことをなかなか理解してもらえないことが多いですね。ただ、今回、SDGsという観点で考えると、商社ならではの強みは確かにあると感じました。例えば、今まではデジタルというと電子関係の部門だけが取り組むものと考えられがちでしたが、昨今は食料をはじめとする複数の部門と連携しながら、その分野のIT化、デジタル化の話が進み始めていて、さまざまなビジネスチャンスが生まれています。これはやはり商社だからこそ可能なことで、「複合的アプローチ」という切り口は商社のビジネスモデルにとてもマッチしていると思います。むしろポジティブに捉えてもらいたいところです。

蟹江:SDGsの目指す世界というのは、さまざまなことを変革しないと届かないところなので、ただ同じことに取り組んでいるだけでは恐らく達成できないと思うのですね。でも、今、渡部さんがおっしゃったように、一つの会社の中でさまざまな部門があって、それらをうまく結び付けてより良いものを生み出せる可能性があるというのは、本当に外から見ているとすごい強みだなと思いますね。

大野:欧米ですと、それぞれの分野を得意とする会社が3社集まればいいという話になりがちですが、例えば商社のエネルギー事業に例をとってみると、化石燃料のビジネスを手掛けていても、再生可能エネルギーも推進しているので、自分の力で社会課題に対応してシフトができる。自分の会社の中で、Aの引き出しを閉めて、Bの引き出し、Cの引き出しを開けるというように、自らトランスフォーメーションができるのが、複合的アプローチを1社でやることのメリットだと、蟹江先生に学問的に説明いただいたので、今後は「コングロマリット・プレミアム」ということでアピールしていけたらと思います(笑)。


株式会社日立ハイテク
CSR本部CSR・コーポレートコミュニケーション部 部長
松﨑 倫明 氏

松﨑:三つ目の切り口である「パートナーシップ」についてですが、新しいことをやるときというのは、やはりトレードオフでポジティブな面とネガティブな面の両方がありますよね。ただ、自分たちが儲かるだけだとやはり持続可能な世の中にはならないので、現地のパートナーと組んで、現地の人々も豊かになっていくということを考えていくのが非常に大事なのかなと思います。

大野:SDGsの目標17は、G to Gであったり、パブリックなパートナーシップが中心という印象がありましたが、こういうプライベート to プライベートでもパートナーシップは大事だということですね。
次は「イノベーション」ですけれども、やはり商社というのは、違ったリソースを結合させて、付加価値を生み出すというのをビジネスモデルにしているので、解決法がない社会課題を解決するソリューション、イノベーションを考えるのは得意ですということに関しては、皆さんご異論がなかったと思います。

松﨑:メーカーだと自分たちの技術基点になりがちですが、商社は課題基点というか、自分たちで解決できないものをいかにパートナーとつないで解決に導くかを常に考えている。そこで生み出したものって、やはりイノベーションだと思うのですよね。自力でできる範囲というのは限られていますから、さまざまな力を組み合わせて最大化を図るというのがイノベーションであり、商社が得意とするところなのだと感じました。

頓所:当社では、次世代事業開発という本部が2019年度に創設されました。そこでは、ビジネスモデルをイノベーションするという切り口で、既存事業をベースとしたイノベーションや、自社が従来やっていなかった分野への参入という形での開発を行っています。

蟹江:やはり今は、未来の理想を求める形でのイノベーションが求められていると思うのですよね。イノベーションの種はいろいろあって、その種を社会に結び付けるというところが、恐らくビジネスとしてのイノベーションであり、種の部分は本当にどのような方向にも行き得ると思います。それをうまく交通整理してSDGsの方に導き、技術も含めてつくっていくというのが一番大事なところで、そこがここで言うところのイノベーションのコアかなという気がしますね。

大野:五つ目の切り口である「全体を俯瞰したアプローチ」というのは、商社が「川上から川下まで」バリューチェーンの各段階に関与していることを指していますが、これは強みでもありリスクでもあるのではないかという議論がありましたね。

頓所:トレードビジネスでのお客さまより、商品の持続可能性を高めることで、商品の付加価値を高め、差別化を図りたいと考えている事例が、業界によっては徐々に増えてきているように感じます。そういったお客さまからの相談に対して、商社としてどのようにバリューチェーン全体の価値を高めていくことができるのかを考える機会がありますので、ここは間違いなく強みになり得ると考えています。

蟹江:サプライチェーンに関する部分は本当にすごい強みになるところだと思います。今、デューデリジェンスを自社できちんと実施するというのは、それなりにお金も掛かることを考えるとなかなか難しい。ここの商社に頼んでおけば、きちんとサステナビリティが確保できるというようになると、それ自体がブランディングになりますし、サステナブルにしていくという意味でもとてもいい動きになると思います。この研究会を始めるまで、商社にそのような側面があるとは気付いてなかったですけれども、これをうまく活用できるようになるとすごいなと思いますね。

頓所:バリューチェーンの中で持続可能性を高めていくために、トレーサビリティーをどのように確保するのかが今後重要になってくると思います。将来的にバリューチェーン全体が、より見える化できるような仕組みが構築され、ノウハウや実績を積み上げていけば、蟹江先生がおっしゃるのに近いイメージのものを目指せるのではないか、という気はしております。もちろん業界における商社の位置付け等にも関わることですから、容易なことではないと考えますが。

大野:六つ目の「未来志向」という切り口について、そもそも商社のビジネスは1歩先、3歩先を見る、まさしくバックキャスト的な未来志向の手法なのではないかと思っていますが、皆さんのお考えはいかがでしょうか。

頓所:当社でも、2年前に自社にとってのサステナビリティをどのように考えればいいかを議論しましたが、その中で、商社のDNAは社会のニーズを先取りすること、という意見が出ました。やはり1歩でも半歩でも先を見るということを、商社の強みとして意識している部分は大きいと思います。

松﨑:SDGsに関する議論は、どうしても「今、できる」というインサイド・アウトの発想に陥りがちで、例えば、他の五つの切り口は、課題に対して何ができるのかというアウトサイド・インの側面が強いですよね。でも、商社はそれだけではなくて、まだ見えないものや今後発生するであろうものに対するアンテナを高く立てている。それを組み合わせていくことで新たな価値を生み出すという議論もすごくあったと思うので、やはり未来志向というのは非常に大事なキーワードなのかなと感じました。

4. 期待・展望〜SDGsと商社の未来のカタチ

大野:最後に、皆さんが本研究会を通じて得られたことや、研究成果の今後の活用について伺いたいと思います。私は、商社は社会課題との結び付きが強いのではないかとこれまで直感的に思っていたことを、研究会を通じて言語化できたことがとても良かったと思っています。SDGsという共通言語を自分たちの仕事、あるいは業界に引き付けて研究するというのは、企業セクターにおけるSDGsの取り組みの一つのベンチマークになったと感じています。

頓所:私も研究会を通じて、改めて商社の特徴、強みをSDGsとの親和性ということで整理、勉強することができて、非常に有意義だったと思います。今後の課題は社内浸透ですが、当社はグループのあり姿として、「Globalcrossvalue platform」を掲げていまして、今回得た六つの切り口を活用し、それぞれの部署がビジネスの中で取り組んでいることをサステナビリティの観点でつなぎ合わせる、といった機能を持つことによって、本業を通じたSDGsの浸透が図れるのではないかと考えています。

松﨑:これまでは、社会価値、環境価値を考えましょうと言いつつも、どのように考えたらよいかというところがなかなか進まない部分でした。研究会での議論を通じて、こういう切り口もあるじゃないか、という話ができるようになったことは、社内浸透を含め、当社の活動を1歩進めることに寄与できたと感じていて、非常に良い機会をいただいたと思っています。また、今回まとめたこの六つの切り口は、つくって終わりではなくて、やはりそれをいかに活かしていくかという点を社内で考えていかなければならないと思っています。


兼松株式会社
広報・IR室 担当室長
渡部 佳津子 氏

渡部:研究会での議論を通じて、2030年までにSDGsの目標を達成することは無理だろうとか、実現できるわけがないということではなく、実現させるためにどうしたらいいか、今、何をすべきかという、よりバックキャスティングの発想で、さまざまなビジネスをパートナーと共につくっていくことが非常に大事だと改めて感じました。商社ビジネスとSDGsの親和性という六つの切り口も活用しながら、社内浸透や、対外的にも効果的な情報発信につなげていければと考えています。ぜひ日本貿易会としても日本の商社の取り組みを世界に発信していただければと思います。

蟹江:今日お話を伺って、改めて商社の強みとSDGsの親和性を感じました。恐らく皆さんが日々何げなくビジネスで取り組んでいることも、SDGsを意識することによって、またできるところが一段と変わってくるはずです。コロナ禍でこれまでのようなグローバル化はやはり少し後退しますが、アフターコロナでは逆に「質の高いグローバル化」が求められてくると思います。そこを見越して、今のうちにぜひ、商社の強みとSDGsの親和性について、さまざまな方々に理解を深めていただきたいです。そういう意味を込めて、『SDGsと商社』をぜひ英訳して、海外の方々にも商社とSDGsの親和性を浸透していっていただきたいと思います。

大野:蟹江先生にご指摘いただいた通り、コロナ禍で社会課題の難しさが顕在化しているところがあります。質の高いグローバリゼーションというのは、社会課題を解決しながら進むグローバリゼーションだと思うので、商社は自らその道を切り開いていかなければならないというのが、今回の研究の今日的な示唆だと思いました。
本日はどうもありがとうございました。

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