日本貿易会常任理事に聞く 2019年の展望

稲畑産業株式会社 社長稲畑 勝太郎
岩谷産業株式会社 会長 兼 CEO牧野 明次
兼松株式会社 社長谷川 薫
興和株式会社 社長三輪 弘
CBC株式会社 社長圡井 宇太郎
JFE商事株式会社 社長織田 直祐
蝶理株式会社 社長先濵 一夫
長瀬産業株式会社 社長朝倉 研二
日鉄住金物産株式会社 社長佐伯 康光
阪和興業株式会社 社長古川 弘成
株式会社日立ハイテクノロジーズ 社長宮﨑 正啓

2019 年の世界経済の展望および経営の抱負等について、日本貿易会常任理事へアンケートを実施しました。
(社名五十音順)

稲畑 勝太郎(稲畑産業株式会社 社長)


2019年の経済、ビジネス環境を展望する上で、注目する要因(けん引・懸念材料)

米中貿易摩擦の動向に注目する。当面は大きな動きはないものと思われるが、解消への道筋が不透明であり、長引けば米国経済の減速につながりかねないことを懸念する。アジア経済は減速傾向にあるものの、安定した成長が続いており、引き続き世界経済のけん引役を果たすものと期待する。また国内経済はオリンピックに続き2025年の大阪万博開催が決まったのは好材料。インフラ投資を軸に底堅い成長が期待される。

2019年に注力する点および経営の抱負

2018年に続き、グローバルな経営インフラの整備に注力するとともに、中期経営計画の重点分野であるライフサイエンス分野、環境・エネルギー分野、自動車分野へ経営資源を重点的に配分し、成長を促進する。また、国内外共に人材の育成に一層力を注ぎたい。

牧野 明次(岩谷産業株式会社 会長 兼 CEO)


2019年の経済、ビジネス環境を展望する上で、注目する要因(けん引・懸念材料)

中国・欧州および新興国経済の成長減速に加え、米中貿易摩擦の影響が大きく懸念され、世界経済は総じて停滞、調整局面と予想される。LPガス等、エネルギーや資源価格の動向にも一層の注視が必要となる。内需においては、消費税増税の影響が下押し要因となるものの、堅調なIT投資と東京五輪に向けたインフラ投資等の拡大が底堅い成長を支えると考える。

2019年に注力する点および経営の抱負

中期経営計画「PLAN20」にのっとり、「進化」と「創造」をテーマにエネルギー事業の進化、新規事業の創造、ガバナンス強化に重点的に取り組む。また、電力・都市ガスの小売り自由化に対応した都市型事業の確立、アジアを中心とした海外事業の強化、水素エネルギー社会実現に向けた水素事業の推進など、新事業・新サービスの拡充を図る。

谷川 薫(兼松株式会社 社長)


2019年の経済、ビジネス環境を展望する上で、注目する要因(けん引・懸念材料)

世界のIoT / AI市場は急速に拡大すると思われ、さまざまな分野においてイノベーションが加速することを期待している。米中貿易戦争の長期化、英国のEU離脱、イタリア問題、米国のイラン制裁やサウジアラビアを巡る中東の緊張など、国際政治上の不安要因には引き続き注視していく。

2019年に注力する点および経営の抱負

2019年は当社創業130周年を迎える。2018年度からスタートした中期ビジョン「future 135」は順調な滑り出しとなった。事業投資による規模の拡大や付加価値の獲得を進めながら、連結経営で成長するというテーマを掲げている。さらにイノベーション投資もプラスし、先進技術にも対応しながら、事業連携の意識をより高めて取り組んでいく。

三輪 弘(興和株式会社 社長)


2019年の経済、ビジネス環境を展望する上で、注目する要因(けん引・懸念材料)

海外の大きな懸念は米中貿易戦争の行方。グローバリズムの衰退につながると、輸出がけん引役となっている日本経済にとって大きなダメージとなる。また日米TAG交渉も気になるが、TPP11や日欧EPAは成長ドライバーとなるだろう。国内は元号が変わる記念すべき年であるが、キャッシュレス決済の進展など、実社会の仕組みがIoT、AIによって大きく変わる一年となる。その変化の先取りがチャンスにつながる。

2019年に注力する点および経営の抱負

商事部門では加速するデジタル革命の対応に加え、CO2やプラスチックごみの一層の削減など、環境問題での貢献をグローバルに推進したい。医薬事業では2018年に発売した世界初の選択的PPARαモジュレーター(SPPARMα)である高脂血症治療剤パルモディア錠の長期処方解禁を受け、世界戦略品としてポジションの確立に注力する他、セルフケア商品のグローバル展開を加速させる。

圡井 宇太郎(CBC 株式会社 社長)


2019年の経済、ビジネス環境を展望する上で、注目する要因(けん引・懸念材料)

引き続き米国を中心に景気は好調を維持すると思われるが、一方で米中貿易摩擦の長期化による悪影響、米国の景気拡大の過熱感から、さらなる利上げ継続によるピークアウト感から来る投資や消費マインドの冷え込み、およびドル高による新興国の資金流出懸念、EU諸国の財政悪化による政治的混乱などが懸念される。

2019年に注力する点および経営の抱負

医薬事業のグローバルベースでの一層の推進、環境対応型農薬事業(IPM/総合的病害虫管理)もさらにエリアを拡大し注力していく。引き続き「INNOVATION:Enter a Different world」をキャッチフレーズに医療機器、介護、ロボット、AI関連分野に積極的に投資しながら、ニッチでユニークな事業の確立を目指していく。

織田 直祐(JFE 商事株式会社 社長)


2019年の経済、ビジネス環境を展望する上で、注目する要因(けん引・懸念材料)

国内マーケットは、消費増税による経済成長の鈍化が懸念されるものの、需要は引き続き堅調に推移すると思われる。一方、世界ではアセアン、インドを中心におおむね堅調に推移すると思われるが、米中の貿易摩擦による中国経済の減速等、世界経済への影響が不透明さを増しており、引き続き動向を注視していく必要がある。

2019年に注力する点および経営の抱負

2018年に第6次中期経営計画をスタートさせ、2019年は2年目に入る。当社グループの取り組み方針である「トレード収益・事業収益の拡大」「グローバル4極体制(日本、米州、中国、アセアン)の強化」「経営インフラの整備」を推進し、環境変化にかかわらず、安定的に収益を上げられる基盤を構築し、引き続きJFEグループへの貢献度を高めていく。

先濵 一夫(蝶理株式会社 社長)


2019年の経済、ビジネス環境を展望する上で、注目する要因(けん引・懸念材料)

世界経済は比較的堅調に推移すると思われるが、保護貿易主義の台頭や米中貿易摩擦の世界経済に及ぼす影響や新興国経済の景気下振れリスク等先行き不透明感がある。また、国内経済においても企業業績は好調さを維持し、個人消費も回復基調にあるものの、消費税増税が予定されており、個人消費を中心とした経済活動への影響に予断を許さない。

2019年に注力する点および経営の抱負

中期経営計画「Chori Innovation Plan 2019」の最終年度。基本戦略である「連結経営基盤強化」「新規開発・事業投資、M&A」「コーポレート・ガバナンス」「人的基盤強化」を推進し、海外事業のさらなる拡大と連結子会社群の充実による最高益の更新に挑む。また、健康経営宣言に基づく職場環境の改善やデジタル化により事業・業務・風土の変化・進化を継続する。

朝倉 研二(長瀬産業株式会社 社長)


2019年の経済、ビジネス環境を展望する上で、注目する要因(けん引・懸念材料)

米中貿易摩擦に加え、原油価格、中国の環境規制がどれだけ世界経済に負の影響を与えるか注視していきたい。IoTのさらなる進化はもとより、自動運転、次世代通信規格などは、エレクトロニクス分野を中心に間違いなく新たなビジネスチャンスを創出するだろう。10%消費税の導入後の日本経済の冷え込みも注意したい。

2019年に注力する点および経営の抱負

引き続き中期経営計画「ACE-2020 」の遂行に注力する。基本方針である「収益構造の変革」ではライフ&ヘルスケア分野に一層のリソースを投じる。「企業風土の変革」では特に海外でのガバナンス体制を再整備し、今後の飛躍の礎としたい。さまざまな技術の革新に乗り遅れないことが重要な一年となる。

佐伯 康光(日鉄住金物産株式会社 社長)


2019年の経済、ビジネス環境を展望する上で、注目する要因(けん引・懸念材料)

海外では新興国を中心に経済成長が続き、国内景気も堅調に推移すると期待したい。しかしながら、米中貿易摩擦、保護貿易主義の拡大、金融緩和の出口論など不安定要素は多く、経済への影響、需給関係の急速な変化が懸念される。従来にも増してリスクへの備えが重要な年となる。

2019年に注力する点および経営の抱負

2018年より開始した中期経営計画2020の中間年に当たる、正念場となる年。堅調であろう国内の需要をしっかりと捕捉し、海外では事業の拡大を加速させる。安全、品質、コンプライアンス遵守への取り組みを強化し、事業基盤を盤石にしつつ、働き方改革を進め、従業員と共に一丸となって、成長戦略を進めていきたい。

古川 弘成(阪和興業株式会社 社長)


2019年の経済、ビジネス環境を展望する上で、注目する要因(けん引・懸念材料)

地球温暖化も実感される中、SDGs、ESGなど環境問題への関心の高まりを受け、自動車のEV化、バイオマス燃料の利用拡大、資源のリサイクルなど、産業の構造変化が加速していくだろう。これらの分野では、当社の行っている先行投資も役に立ってくるだろう。日本政府の頑張りによるTPP発効の効果は徐々に効いてくることを期待する。大阪万博決定も明るい材料だ。

2019年の経済、ビジネス環境を展望する上で、注目する要因(けん引・懸念材料)

仕上げの年を迎える第8次中期経営計画のテーマ三つのS(STEADY、SPEEDY、STRATEGIC)に基づき、足で稼ぐ愚直なスタイルを貫いて3Sの各部分で確実に収益を上げて目標を達成したい。2018年に立ち上げた品質安全環境管理部と、HKQC(業務の品質向上)との両輪で事業の質も高めていく。また、2018年に始めた健康経営の取り組みを進めて社内の活性化を進めたい。

宮﨑 正啓(株式会社日立ハイテクノロジーズ 社長)


2019年の経済、ビジネス環境を展望する上で、注目する要因(けん引・懸念材料)

日本では個人消費や企業の堅調な設備投資により、緩やかな景気の回復が持続している。米国においても経済成長が続くと予想されるが、米国と各国との貿易摩擦による影響が懸念される。欧州では引き続き緩やかな景気回復局面にあるが、英国のEU離脱交渉の動向が不安材料になると考えている。

2019年に注力する点および経営の抱負

社会から必要とされる企業、世界中のお客さまから選ばれ続ける企業であるために、SDGsを踏まえ、当社グループが社会課題解決のために取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定した。特定したマテリアリティを取り込んだ中長期的な経営戦略の策定を進め、事業活動を通じて社会やお客さまに貢献しながら、持続的な企業価値向上を目指す。

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