伊藤忠商事が手掛ける地方創生事業 ~ 「株式会社GLコネクト」を通じた 地域経済発展の取り組み~

株式会社GLコネクト 代表取締役社長守﨑 泰史
株式会社GLコネクト 取締役岡村 貴史
株式会社GLコネクト 経営企画部長原田 圭

1.GLコネクトの設立

当社は2018年度に現在の株主構成になって3年目となり、当初は事業の模索もありましたが、組織体制も整い、伊藤忠商事の金融サービスの中核企業として、これから事業を拡大させようとしている段階です。事業構成も大きく三つに整理していくことを考えています。まず、第一の柱が株主である地方銀行各社からも期待されている「地方創生事業」、第二が、収益の柱である「ホールセール・ファイナンス事業」、そして、第三の柱が、これも地方創生にも関係しますが、伊藤忠商事本体と連携しながら、「フィンテック(Fintech)、人工知能(AI)といった新技術を活かしたビジネスモデルの構築」です。

当社は現在15人の体制で運営されていますが、特徴的なのは、伊藤忠商事グループおよび当社に出資している株主の地方銀行等からの出向者(あおぞら銀行3人、鹿児島銀行2人、荘内銀行1人、伊予銀行1人)によって構成されていることです。このように商社だけでなく、地方銀行の人材を擁していることから、地方企業向けの支援サービスにおいても、動きやすい体制を整えています。おそらく、地方創生事業を担う企業として、当社のような組織体制は他にはないのではないかと思います。

2.地方銀行等とのパートナーシップを通じた地方創生


当社は、伊藤忠商事が50%出資し、あおぞら銀行やこの他に地方銀行5行(地方銀行:鹿児島銀行、荘内銀行、十六銀行、東邦銀行、伊予銀行)などが出資して設立されたプラットフォーム型の組織です。

当社の事業目的は、全国の地方企業に対する事業融資、地方企業の国内外へのビジネス拡大における支援が挙げられますが、これが可能であるのは、当社が、総合商社として伊藤忠商事が持つ国内外のネットワーク、事業会社経営に関するノウハウ、地方銀行が熟知している地場の優良中小企業や地方自治体とのつながり等を提供できるためです。

株主である地方銀行の当社に対する期待は、やはり、伊藤忠商事が持つ国内外のネットワークを活かして、自行の地場顧客企業の商圏拡大にあることをあらためて痛感しています。こうしたニーズも踏まえ、地方銀行の地場顧客企業に伊藤忠商事のグループ会社を紹介するなど、地方創生に資する事業を始め、すでに成約に結び付いた案件も出るなど、成功事例も増えつつあります。

もっとも、当社設立に至るまで、地方銀行のほとんどの方が、商社が金融ビジネスに携わっていることをご存じなく、まず、その説明から始めなければなりませんでした。地方銀行にとっては、これまで地場顧客企業との強いつながりから、商社のような存在との連携を考えたこともなかったと思います。そこにいきなり商社が訪れ、連携を打診してきたため、商社が訪問したことをいぶかしく思う方も少なくありませんでした。

しかし、少子高齢化が進み、国内市場が縮小傾向にあり、各地域の人口流出・減少、中小企業の事業承継問題など、地方銀行の収益力を低下させるような事業環境の変化が進行している中で、経営環境が厳しさを増していることへの危機感も見られます。他方、海外に目を向ければ、地場顧客企業にとって、伊藤忠商事のネットワークを活用し、海外展開を拡大させることは、地方銀行各社にとってもメリットが広がります。

3.地方企業の海外展開支援に向けて

当社は、2017年10月に中国消費者向け越境EC(電子商取引)プラットフォームを運営するインアゴーラと出店取次パートナー契約を締結しました。インアゴーラは、中国の消費者に向けて日本製商品に特化してご紹介する越境電子商取引(EC)の「豌豆(ワンドウ)プラットフォーム」を運営しています。インアゴーラとのパートナーシップを通じて地方企業が生み出す良質な商品を、中国消費者向けに紹介し、中国市場進出を促進させることができます。

また、中国以外の国・地域、例えば、欧米・東南アジアへの進出を希望する地方企業もあると思いますが、将来、東南アジアのベトナム、タイ、インドネシア等各国にも同様の越境ECプラットフォームができれば、地方企業の海外展開ニーズも満たせるのではないかとも考えています。

もちろん、商品によっては、中国向けとして扱いにくいものもあるため、紹介する商品の見極めも重要になります。もともと中国の消費者にとっては、「純日本製」という信頼のおける商品を求める前提があります。地方銀行から紹介を受けた商品も、インアゴーラの越境ECプラットフォームを通じて、できる限りご紹介したいとは思いますが、やはり何が中国の消費者に受けるか、売れそうかという判断が必要になります。

まずは、できることから一つずつ実行に移して成果を上げていくことが現在の目標です。(聞き手:広報・調査グループ 石塚哲也)

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