地域商社の役割と北海道総合商事の事業展開について

北海道総合商事株式会社
営業部 部長
伊藤 彰浩

設立経緯と事業目的

当社は2015年10月に北海道銀行グループおよび道内企業の出資の下設立された地域商社です。地方創生が求められる昨今、地域企業は外貨獲得のため「国際化」の実現に向けて動き出しましたが、地域企業が単独で海外進出し、成功を収めることは容易ではありません。代金の回収や為替変動による不安、言語の違いや情報の不足など多くのハードルがあり、さらに最適な国際物流を構築できなければ価格競争力も失われます。

こうした背景の下、海外展開に係る課題をワンストップで支援できる地域発祥の総合商社を設立いたしました。地域企業と地域金融機関、そして地域商社が三位一体となって北海道を元気にしていくことが当社の使命です。

また、弊社はロシアでの事業展開を主体に行っておりますが、北海道銀行が顧客向けに極東ロシアでのビジネス展開支援を積極的に取り組んできたこと、極東地域が北海道から地理的に近いことを理由に、優位性のある同地域を中心に取り組んでおります。

事業展開 北海道のタマネギをロシアへ


ロシアのスーパーに並ぶ北見産タマネギの様子

ロシアのスーパーに並ぶ北見産タマネギの様子

当社が営む事業分野は大きく分けて二つあります。一つは「日本製品の輸出」、もう一つは「日本技術の輸出」です。

日本製品の輸出では、日本国内で当社に「円」で販売するだけで、ロシアのマーケットに販路拡大できるというコンセプトで取り組んでおります。代表的な例の一つに北海道タマネギの輸出事業があります。設立当初から取り組んできた事業ですが、事業として軌道に乗るまで約2年かかりました。2016年度は5tの輸出実績だったところを、2017年度は120tと24倍の輸出実績となり、2018年度は500tの輸出目標を持って、取り組んでいるところです。

取り組み当初は、Lサイズのタマネギを輸出し、ロシアのマーケットで約150ルーブル(約300円)/kgで販売しましたが、全く売れませんでした。弊社の子会社であるウラジオストクに本社を置くペガスHCと当社、そして産地のメーカーと幾度にもわたる原因分析を行った結果、次の事実が判明しました。ロシア人は大きなタマネギよりも小さなタマネギを好む、という事実です。理由としては、スーパーの特売時などに大量に購入し、家の倉庫に保管し、少しずつ使用するという文化があること、また、ボルシチなどスープ文化のあるロシアでは、タマネギが小さいとそのままスープに入れることができるため、使用しやすいというメリットがあります。タマネギは大きい方が価値が高いという先入観を持って取り組みましたが、事実は全くの逆だったのです。小さいSサイズのタマネギは日本国内でもそのままでは市場に出ることもない商品であり、価格のコントロールが利きやすいという点も寄与し、ロシアのマーケットで約70ルーブル(140円)/ kgで販売することができました。その結果、ロシア市場で受け入れられ、急激な輸出の拡大につながりました。

事業展開 北海道の農業技術をロシアへ


ロシア・ヤクーツク 温室施設内部と建設プロジェクトに関わったスタッフ一同

ロシア・ヤクーツク 温室施設内部と建設プロジェクトに関わったスタッフ一同

上述の通り、当社の営む事業のもう一つに「日本技術の輸出」があります。その代表的な例としては、ロシア・ヤクーツクにおける温室施設の建設プロジェクトです。

ヤクーツクはペガスHCが本社を置くウラジオストクから3,000km北上した場所にあります。冬場はマイナス60度を超える極寒の地で、新鮮な野菜の調達に慢性的に苦しんでいた地域でした。この地における温室施設の建設は、ロシア・ヤクーツクにとっても不可欠なプロジェクトであり、北海道の寒冷地における温室施設の技術を発揮できるプロジェクトとなりました。

2016年12月には1,000㎡の試験栽培施設が完成し、地元のスーパーなどに真っ赤なトマトが陳列されました。地元の設備で、地元の人によって、栽培されたトマトは輸入された中国産トマトの価格の約2倍となりましたが、即完売しました。現在は、本格的な栽培に向けて、1ha分の温室建設計画として第2工期の途中であり、最終的には3.2haの温室施設となり、ここで生産されたトマトやキュウリは地元のスーパー等へ流通される計画です。

まとめ

これらの事業の他、各メーカーと一心同体となって取り組むプロジェクトは50を超えます。いずれの事業も実現に至るまでの間には数多くの問題や課題を抱え、それらを解決するためにメーカーと当社が、さらに、現地でのファイナンス策定や情報収集等を地域銀行が担い、この三者が一体となったことが問題を解決できた最も重要な理由です。そして、冒頭にある通り、この当事者である三者が同一の目的を持って、地域の商品や技術を海外に輸出し、外貨の獲得を進めていくこの取り組みこそが地域商社の最大の役割であり、そして使命であります。

今後も地域商社として、北海道のみならず日本の商品・技術を世界と結び付けるプロジェクトを展開し、日本の中小・中堅企業を元気にする仕事を行っていきたいと思います。

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