双日グループのCSR ―「2つの価値」の創造へ

双日株式会社 広報部CSR・環境課 課長
永田 英樹

双日グループのCSRとは、企業理念の実践そのものであり、企業活動を通じて持続可能性を追求するということです。

双日グループ企業理念
双日グループは、誠実な心で世界を結び、新たな価値と豊かな未来を創造します。

双日グループCSRポリシー
企業理念の地道な実践を通じ、企業活動と社会・環境の共存共栄を目指します。

企業を取り巻く事業環境の変化が激しさを増す中、企業の変化への対応力や将来の成長性をこれまで以上に分かりやすく伝えていく必要があると考え、当社グループが何を目指し、どのように中長期的に価値を創造し、成長していくのか、その道筋を一連のプロセスとして、「価値創造モデル」として整理しました(図1)。

この図の中にも当社グループのCSRの考え方が示されており、社内への浸透、活動の推進に当たっては「2つの価値」というシンプルなキーワードを用いています。


図1 価値創造モデル


1. 2つの価値

社会(ステークホルダー)の視点と企業の視点は必ずしも一致しないとの認識の下、異なる2つの視点を「2つの価値」として表現しております。

国、経済地域の発展や人権配慮を期待するステークホルダーの視点(社会に還元する価値)と、事業の競争力や企業価値を向上する当社の視点(双日が得る価値)の違いを認識した上で、企業活動を通じ双方にとって共通する価値を最大化させていくこと(2つの価値創造)が、CSRの実践であり、企業理念にある「豊かな未来の創造」につながるものと考えております。

今後も、順次事例を当社ウェブサイト等で紹介していきたいと考えております(図2)。


図2 「2つの価値」事例


2. 新CSR重点取り組みテーマ

2016年度上期においては、CSR重点取り組みテーマの見直しを行いました。

世界的に社会・環境問題への関心が高まる中、企業は社会(ステークホルダー)からこれら課題に向けた取り組みをますます期待されるようになると考えております。

2015年に、国連が主導となり、2030年までに優先的に解決されるべき世界の共通の17の社会課題、SDGsも制定されました。

このような状況下、今後も当社が「2つの価値」を創造し続けるために、従来のCSR重点取り組みテーマを見直し、より実践的に根付かせていくための取り組みの整理とテーマの明確化を行いました。

整理に当たっては企業理念、CSRの考え方と共に、前述のSDGsをはじめとする代表的な国際規範を踏まえ、CSR委員会・経営会議での議論や営業本部との協議を行い、取締役会での承認を経て、中長期的に取り組むべき6つの取り組みテーマを設定しました(図3)。

今後は社内での協議をさらに深化させ、これらテーマに沿った取り組みを推進、「2つの価値」を最大化させ、ステークホルダーからの期待に応えていきたいと考えております。


図3 CSR重点取り組みテーマ


3. 次世代への教育支援(社会貢献活動)

当社グループの社会貢献活動は教育支援を重点に置いています。

アフリカ(タンザニア、モザンビーク)においては、NGOプランインターナショナルと連携し、2010年より幼稚園の校舎建設、保育士の育成支援など就学前教育支援を行ってきました。活動を進めるに当たり、特に発展途上国においては、単に校舎などを建築するだけでは十分ではなく、子供たちに通ってもらう(通い続けてもらう)ためには保護者への説明、教育への理解の醸成が大変重要であることを、このプロジェクトを通じて学びました。

東北復興支援においては、被災地の大学生への教育支援として給付型の奨学金制度(双日復興教育基金)を立ち上げるとともに、岩手県大槌町で中高生を中心に放課後授業を行うコラボ・スクール(NPOカタリバが運営)を支援してきました。2016年 8月には同スクールとの交流会を企画し、当社からは若手社員を中心に10人が現地を訪れ、中学生向けに出前授業を行い、同スクールの高校生には大槌町の町案内をしていただきました。「震災を忘れない」こととともに、気付きの多い、大変実りのある交流会となりました。

次世代への教育支援は本人への支援にとどまらず、その家族への支援につながり、地域への発展にもつながっていくということを信じ、地道な活動を続けていきたいと思います。

4. 最後に

常日頃から当課のメンバーには「動く、(人を)巻き込む、見直す」ことを意識し、実践するよう伝えています。

(動く)
上述の「2つの価値」の最大化を目指すためには、社内外の多くの人々と対話し、多様な価値観を理解することが何より重要であると考えています。
そのためにも、当社グループのCSR推進のけん引役を担うわれわれ自身が、積極的にそのような機会を持つことが大切だと考え、日本貿易会の各種委員会活動、国連グローバル・コンパクト分科会をはじめとする社外活動、セミナーに積極的に参加するなど、新たなネットワークの構築、新しい活動につなげていきたいと考えております。

(巻き込む)
社内外の対話機会を増やすことで、相互理解が深まり、連携した活動を検討、実行する機会が出てきます。このように連携し活動を行うことが、活動規模を大きくすることにつながり、結果として社会へのインパクトも大きくなります。身近な事例としては、昨年度より同じビルの入居企業と共同で会社周辺の清掃活動ボランティアを開始しました。お互い今後の身近なボランティア活動をいかに行うかについて頭を悩ませていたこともあり、スムーズに話がまとまりました(その後、東北復興市についても共同で開催することになりました)。今後は、社員同士の交流の場、情報交換の場としても有効に活用させていただき、さらなる活動規模の拡大、新たな取り組みへの展開につなげたいと考えています。

(見直す)
各種活動を行った後は振り返り(見直し)を行うことにしています。活動そのものの意義、基本活動方針との整合性などあらためて見直す機会を設け、次回活動への改善につなげることが、新たな動き(動く)を生み出すと考えております。

今後、皆さま方と一緒に新たな「動く、(人を)巻き込む、見直す」を実践する機会を検討させていただければ幸いです。「2つの価値」の最大化を目指し、事業を通じたCSRの推進、次世代教育を中心とした社会貢献活動を推進することで、社会における当社グループの存在意義を示していければと考えております。

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