2016年、さらなる高みを求めて

一般社団法人日本貿易会 副会長 双日株式会社 社長
佐藤 洋二

2015年を振り返ってみますと、米国経済は個人消費を中心に好調が続いた一方、中国経済は減速、WTI原油先物価格も40ドルを割り込むなど、資源市況の下落が現実のものとなりました。欧州ではギリシャが財政改革を受け入れてユーロ危機が深刻化を免れたものの、難民問題の影響など引き続き注視が求められています。

このような世界経済においても、10月のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の大筋合意は、経済構造の変化と将来に向けたビジネス機会の創出という観点で、極めて大きな出来事で2015年末に開催されたCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)を通じ、われわれ商社業界が何を目指して日々の営業活動に取り組むべきかを再認識させられました。

2016年は、4年に一度のうるう年、米国大統領選挙の年であり、南米初のオリンピックが8月にブラジルのリオデジャネイロで開催されます。

日本にとっては、2010年末以来の国連非常任理事国への復帰、5月に伊勢志摩サミット、7月には日本が主導し国連や世界銀行等と共催するアフリカ開発会議(TICAD VI)がケニアで予定されるなど、外交の年ともなります。

2015年の年頭、私は、「アジアの時代のシフトアップ」を予測しました。米国はいよいよ金融緩和からのExitにかじを切り、新興国経済への影響が懸念されていますが、IMF(国際通貨基金)の予測を引くまでもなく、アジア地域は引き続き世界の他地域の経済成長率を上回るでしょう。

2016年は2015年末に発足したAEC(ASEAN経済共同体)がどのように進化・深化し、ビジネスにどのような変化をもたらすのかにも注目したいと思います。

2015年秋のラグビーワールドカップ・イングランド大会では日本代表チームが大健闘、来たる2019年日本大会への弾みをつけました。日々の厳しいトレーニングと最先端の分析、そしてテストマッチを長年積み重ねてきたことが、勝負時に結果を出すことにつながったと聞いています。

代表チームの教訓をビジネスに引けば、ますます複雑化する昨今の世界経済においても、地道ながらも創意工夫と強固な意志で本分を追求し、目指す姿を実現せよ、とのアドバイスともとれます。

申年の「申」は、元来「伸びる」という意味があるそうです。ともすれば近視眼的になりがちな現代のビジネス環境において、われわれも長期的視野に立ち、さらなる高みを求めて伸びていきたいと考えています。

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