住友商事の発電・造水事業への取り組み ―クウェート初の民活型発電・造水事業(IWPP)参画

住友商事株式会社 電力事業第二部

クウェートは、アラビア半島の付け根に位置し、面積が四国とほぼ同じ約1万8,000km2、人口が約400万人の国家であり、世界第6位の石油埋蔵量を誇る資源国でもあります。2011年に発生した東日本大震災の際には、クウェート政府は500万バレルの原油(約400億円)の無償供与に加え、援助物資・支援金の寄付を決定しました。その後2013年には、安倍首相がクウェートを訪問し、両国間でエネルギーのみならずさまざまな分野で協力関係を築くべく、包括的パートナーシップ構築で一致するなど、両国はこれまでも、良好な関係を維持しています。


クウェートタワー

一方、クウェートのインフラ面を見ますと、2014年時点で電力需要が約1万4,000MW、水需要が約227万t/日で、今後も電力需要は年間8%、水需要は年間5-7%ずつ増加すると予測されています。これに対し、供給能力は、電力で1万5,990MW、水で約227万t/日と需給が逼迫しており、電力と水の供給能力アップが同国の大きな課題になっています。*1

このような環境下、当社は、ENGIE(旧GDF SUEZ、本社:フランス)およびAbdullah Hamad Al Sagar & Bros. Co.(本社:クウェート)と共同で、2013 年12月にクウェート初の民活型発電・造水事業(IWPP*2)である、アズール・ノース発電・造水プロジェクト(以下AZNプロジェクト)に関する長期売電・造水契約を含む主要契約ならびに融資契約に調印しました。当社は、プロジェクト運営主体となるShamalAz Zour Al Oula 社(以下Shamal 社)に、ENGIEと共に主要株主としてそれぞれ17.5%出資し(クウェート政府機関が60%出資)、社長ならびにCFO補佐を派遣するなど主体的に事業運営に関わっています。また、プラントの保守運営面でも同様で、O&M(Operation & Maintenance)会社をENGIEと共同で設立し、主体的に関与しています。

総事業費は、発電所建設費などを含め、約18億ドルとなる予定で、そのうち約3億6,000万ドルを出資金で、残りの約14億4,000万ドルは、株式会社国際協力銀行(JBIC)と国際商業銀行団の協調融資によるプロジェクトファイナンスにて調達します。また、本邦民間金融機関融資分の一部に対しては独立行政法人日本貿易保険(NEXI)による海外事業資金貸付保険が付保されています。


アズール・ノース発電・造水プラント全景

Shamal社は、同国の首都クウェート市の南約100kmにあるアズール・ノース地区に約1,500MWの天然ガスだき複合火力発電所および日量約48万tの造水プラントを新たに建設、今後約40年間の長期にわたり事業運営を行い、クウェート電力・水省に電力と水を供給します。Shamal社は、2013年12月にプラント建設工事を開始しましたが、前述の通り同国では電力と水の供給、とりわけ気温が50℃を超える夏場の電力供給が大きな課題となっており、一刻も早く、電力供給を開始してほしいという同国政府の強い要請を受け、段階的な商業運転開始を目指し建設工事を進めています。同国初の民活型IWPPということもあり、われわれ民間事業者のみならず同国政府関係者にとっても前例のない中、同国政府関係者からも多大なる協力を受け、さまざまな困難を乗り越えつつ、2015年6月末には部分運転開始という大きなマイルストーンを達成することができました。今後も2016年末の商業運転開始を目指し、関係者一丸となって取り組んでいきます。

当社は、中東湾岸地域におけるアラブ首長国連邦アブダビのシュワイハットS1およびS3、バーレーンのAl Hidd 等のプロジェクトを含め、世界各国で電力・造水事業(IPP*3・IWPP)に取り組んでおり、2015年4月時点で持ち分容量6,813MWのIPP・IWPPを保有しています。プロジェクトの取り組みに当たっては、これまでに培った経験を活かし、主体的に事業運営ならびに保守運営を行う方針であり、AZNプロジェクトにおいても、前述の通り当社は、Shamal社およびO&M会社に対し経営幹部等の人員派遣を行っています。

同国は、AZNプロジェクトを皮切りとして、今後もIWPP案件を推進していく方針であり、当社としましても、将来、別の有力案件への参画も視野に、同国のインフラ整備に積極的に貢献していきたいと思います。また、当社は「基幹インフラの高度化を通じ社会に貢献する」ことをミッションの一つに掲げており、同国のみならず、中東湾岸地域のインフラ案件への参画により、同地域のインフラ整備や経済発展に貢献すべく、ひいては資源保有国との関係強化という日本国政府のエネルギー政策に寄与するべく、今後ともIPP・IWPPを含めたインフラ案件への参画に積極的に取り組みます。


*1 各数字の出典:クウェート電力・水省データ
*2 IWPP:Independent Water and Power Producer、発電・造水事業者
*3 IPP:Independent Power Producer、発電事業者

住友商事の発電・造水事業への取り組み ―クウェート初の民活型発電・造水事業(IWPP)参画 誌面のダウンロードはこちら