世界の水問題と商社の水ビジネス


世界は今、水危機といわれている。水危機への対応は、世界の直面する大きな課題のひとつだろう。地球上で利用可能な水は限られている一方で、新興国を中心に、世界の人口が急増して飲料水が不足している。衛生管理も追いつかない。他方で、経済発展により、農業および工業で使用する水も不足し、また水汚染が拡大している。さらに、地球温暖化による水面の上昇、洪水の頻発、乾燥地帯の拡大など、世界はさまざまな水問題をかかえている。

日本は、2003年に第3回世界水フォーラムを京都で開催し、「日本水協力イニシアティブ」で水分野の援助の包括的な取り組みを発表した。また、2006年の第4回世界水フォーラムで、水・衛生分野におけるODA政策として「水と衛生に関する拡大パートナーシップ・イニシアティブ(WASABI)」を発表している。同分野の援助実績は、飲料水・衛生関連を中心に、水力発電、灌漑(かんがい)、植林、防災など約2,000億円(2005年度)であり、世界一の援助国(約4割、2000〜2004年)である。

このような政府の援助において、日本企業の高度な技術が活用されている。一方で、高い技術力を持つ日本の水事業会社は、世界各地で、水インフラ関連ビジネスにも取り組んでいる。商社は、このような日本の水事業会社と協力しながら、また、現地の水関連会社のノウハウを活用しながら、オーガナイズ力、資金力等を発揮し、世界各地で、安全な水の、効率的な供給に取り組んでいる。

本特集では、このような水問題解決に向けた商社の機能に焦点を充てるとともに、今後、期待されている商社の役割について考えてみた。初めに、商社エコノミストの視点から、世界の水問題、商社の取り組みを概観いただき、続いて、商社各社の担当部門から、中東(サウジアラビア)、中南米(メキシコ)、アジア(タイ、マニラ)等における水インフラ整備の状況、商社の水問題への取り組み、そこで発揮されている機能等について、具体的に説明していただいた。さらに、世界の水問題をビジネスチャンスととらえ、商社をはじめとする企業はどのように取り組んでいくべきか、世界で活躍している水事業会社はどのように取り組んでいるのかを学識者およびコンサルタントの方に解説していただいた。また、商社の水事業の取り組みが拡大している中東における水問題および日本企業の取り組みについては、中東水資源協力推進会議の事務局から説明いただき、最後に、日本を中心とする国際社会における最近の議論の枠組みについて解説していただいた。

日本の水事業会社の高い技術力と商社の機能とを活かした、世界の水問題解決に向けた今後のさらなる貢献に期待したい。

なお、本特集において、特に頻出する水インフラ整備に係る用語、略語については、参考資料として最後に簡単な用語集を設けた。

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