商社と資源


2008年に入って急上昇した原油価格は、7月には150ドル/バレル(WTI)に迫り、その後は、多少落ち着いたものの依然として高値で推移している。また、LME(ロンドン金属取引所)の非鉄金属や、シカゴ市場のトウモロコシの相場など食料についても、総じて高値で推移している。他方で、このような市場取引だけでなく、鉄鋼原料等の長期取引も高値で決着している。

商社は、日本経済の高度成長期において、とりわけ海外からの資源など原材料調達において大きな役割を果たしてきた。現在、金属、エネルギー、食料など資源の需給が世界的にひっ迫し、高値で推移する中、資源小国日本にとって経済成長のボトルネックとなり得る資源の安定的確保があらためて問われている。本特集では、このような現在の資源情勢下における商社の機能、役割について取り上げた。

まず、金属およびエネルギー資源については、商社の金属・エネルギー担当役員、政府系金融機関および資源関連機関、そして資源の需要家である電力会社担当役員による座談会を開催し、資源ビジネスを取り巻く環境、官民協力の下での中長期的な対応、国内産業および現地経済・社会における企業の役割等について議論いただいた。合わせて、エネルギー業界、また中東情勢に詳しい記者の視点から、日本、商社の資源確保における課題と展望等をご寄稿いただいた。一方で、食料資源については、今後の穀物の相場と需給動向、商社の対応等について商社の視点からご寄稿いただいている。

商社は、貿易取引から事業投資へ軸足を移しつつある中で、商品という縦軸と機能という横軸、そして世界中に張り巡らされたネットワークをトータルに活用しながら、資源事業においても、国内外の経済、社会において役割を果たしてきた。これらを踏まえ、現在の、そして今後の新たな資源環境下における、役割、機能について考えてみたい。

なお、現在の資源を取り巻く環境の下、今月号の「巻頭言」「商社に期待すること」へのご寄稿のテーマはそれぞれ、「資源価格高騰時代における商社の役割」(P.2)、「日本の競争力の源泉は産業連携の取り組み」(P.40)であった。また、食料資源について、当会は、2008年6月に「資源高騰時代における食料安全保障」(仮称)特別研究会を設立して研究を進めており、2009年7月に提言をとりまとめる予定である。当月報では、同会合における識者の講演要旨を「貿易・投資関係情報」に随時、掲載しており(今月号は「『食料危機』と自由貿易と日本農業」、P.64)、合わせてご高覧いただきたい。

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