世界同時不況下の中東経済情勢と日本への期待


日本経済の、エネルギー資源の生命線ともいえる中東産油国。日本の原油輸入の9割近くを依存する重要な国々であり、世界の原油の大半はこの地域にある。

一方、中東地域は、イラク、パレスチナ問題など多くの紛争地域を抱え、また核問題の懸念のあるイランが存在し、不安定なリスクを有する。

近年、欧米をはじめ中国は、中東でのエネルギー資源の確保に向けて活発な動きを見せている。わが国は、いかにこの地域のリスクを回避しながら、欧米、中国との資源獲得競争に打ち勝つか、官民挙げた戦略的な対応が問われている。その一環で、産油国の経済発展に寄与する案件、急増する若年層の雇用確保のため脱産油国を目指す工業化や環境整備などの面で、日本の高度技術等を提供するなど、「産油国の思い」に応える原油輸入以外の面でも経済交流を深めつつある。

そのような中、世界的な経済金融危機が深刻化した。加えて、原油価格の急落から産油国は大きな影響を受けたが、先進国に比べればその影響は相対的に小さく、また従来からのオイルマネーの蓄積もあって危機回避への支援財源にも問題がなく、対応策の実施も早かったといわれる。

中東産油国は、この危機下においても、優先的に脱石油に向けての経済の多角化、人口の増加や地球環境問題等に対応したインフラ整備を進め、新規のプロジェクトも立ち上がっている。環境関連技術のほか、医療、石油化学、航空・宇宙、造水・水利・発電などインフラ関連に非常に関心が高い。これら分野では、日本は高度な技術を有し、日本企業にとって、大きなビジネスチャンスがあり、日本への期待も大きい。

複雑な問題を抱える中東地域にエネルギー供給を大きく依存するわが国として、日本企業は、経済金融危機下の世界経済構造の変化の中で、市場としての魅力も高まりつつあるこの地域と、今後どのように関係を維持、発展させるべきか。中東情勢に大きな影響を及ぼす米国政権も代わった。現在の中東情勢、経済状況を把握するとともに、経済交流の深化に向けた課題や日本の役割、中東ビジネスの展望、今後の商社活動の展開について考えてみたい。

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