商社と農業ビジネス


農業の問題が取り上げられる場合、食料安全保障と農業の構造改革のどちらかに重きを置いて言及されることが多い。本来、「食」と「農」は不可分一体であり、どちらの側から議論を進めても、争点の多くは同根の課題にたどり着く。

こうした両者の関係において、食料視点での課題の1つが、食料安全保障であるとするならば、表裏をなす農業の課題とは何であろうか。農業人口の高齢化、後継者不足、低所得、高コストなど相互に関連する多くの問題に対し、産業としての日本の農業の競争力を高めていくことがその1つであるといわれている。では、競争力を高めるために、何をすればよいのか、それは誰が、どうやってやるのか。こうした具体的施策については、必ずしもイメージが共有されているとは言い難い。

商社においても、小麦やトウモロコシなど食糧資源の安定調達や広く食料としての安心安全の担保など、安定・安心・安全の面で日本の食料安保に貢献できる事業が展開されてきた。これらはグローバルな穀物トレーディングや食品流通分野のサプライチェーンマネジメントといった形で、商社のビジネスとしても十分認識されている。

一方で、商社が日本の農業の競争力強化にも寄与する可能性を持つ新しい取り組みを始めていることは、まだそれほど知られていない。今回の特集では、こうした商社の新しい取り組み、農業の課題にビジネスで貢献しようとする試みについて紹介する。各社各様の進め方で、対象とするビジネスも異なるが、そこにある志については共通するものがあることを感じてほしい。

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