企業市民協議会(CBCC)が展開するCSR普及啓発活動

公益社団法人 企業市民協議会(CBCC) 専務理事
根本 勝則

企業市民協議会(Council for Better Corporate Citizenship、以下「CBCC」)は、1989 年に経団連が設立した団体である。

1980 年代後半、円高の進展を受けて日本企業の対米進出が急増したが、進出企業が現地コミュニティにうまくなじめず、いわゆる投資摩擦を起こして批判されることがしばしばあった。そこで、日本企業が進出先の現地コミュニティから「良き企業市民」として受け入れられるようになるための活動支援を目的として、経団連の呼び掛けにより設立されたのが CBCC である。

当初は、米国における企業市民活動の在り方に関する情報提供や日系企業による現地コミュニティへの貢献活動支援などを主な活動としていたが、1990 年代半ば以降は、日本企業の進出先の拡大に伴い東南アジアや中国にも対象地域を拡大、さらに 2000 年代に入ると、持続可能な社会の構築に対する関心が高まり、CSR・企業の社会的責任という概念が確立される中、CBCC も、よりグローバルな視点から日本企業の CSR の推進ならびにその実践支援へと活動領域を拡大してきた。

経団連には他にも、1991 年に制定した「企業行動憲章」の改訂や企業倫理の重要性の啓発、CSR 推進のための政策提言を担当する「企業行動・CSR 委員会」や、寄付やボランティア活動に熱心な企業および個人の集まりである「1%(ワンパーセント)クラブ」、さらに企業への啓発や NGO の支援を通じて自然保護や生物多様性の保全に取り組む「経団連自然保護協議会」など、CSR に関わる委員会や組織がある。

CBCCは、そうした経団連の関連委員会・組織と密接に連携しつつ、日本企業による企業市民活動および CSRを多角的に推進するために、以下に示すさまざまな活動を行っている。

1. CSRに関するさまざまなテーマに関するセミナー・懇談会の開催

企業を取り巻く環境は時代と共に変化し、企業が果たすべき役割や責任の在り方も変わっている。特に近年は、経済のグローバル化や情報化の急速な進展、気候変動、格差の拡大等の地球規模課題の深刻化を受けて、企業に対し、持続可能な社会の構築に貢献するとともに、多様化するステークホルダーのニーズに合った新たな価値の創造が求められるようになっている。そこで CBCC では、 CSR に関連するさまざまなテーマをめぐる最新動向や CSR に関する各種の国際的な基準・規格などについて、内外の有識者や専門家を招いてセミナーや懇談会を開催し、会員企業に情報提供を行っている。

近年、会員企業の関心を集めているテーマは「人権」や 2015 年 9 月の国連サミットにおいて採択された「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals: SDGs)であり、CBCC でも、サプライチェーンにおける人権、環境、貧困などの問題に関する最新動向を含め、日本政府や国際機関、海外のCSR 推進団体、NGO など各アクターの取り組みや企業への期待、先進企業の取り組み事例などを中心に、月に 1 - 2 度の割合でセミナー ・ 懇談会を開催している。

2. 海外へのCSR対話ミッションの派遣とわが国のCSRに対する理解の促進

CBCC では、CSR をめぐるグローバルな動向や地域ごとに異なる CSR への考え方・取り組み等について、関係者との直接対話を通じて把握するとともに、日本企業の CSR に対する考え方や取り組みに対する理解を促進することを目的として、2003年度より毎年、欧州や米国、アジア等の海外へ、会長を団長とする CSR 対話ミッションを派遣している。

2016 年度は、11 月上旬に CSR に関する考え方や概念設定、基準づくり等において世界をリードしている欧州のうち、ブリュッセル、パリ、ロンドンの 3 都市を訪問して、欧州委員会ならびに国際機関、現地団体・企業、NGO や投資家団体等との対話を通じて、欧州における CSR をめぐる最新情報の収集、欧州の CSR 関係者とのネットワークの強化を図るとともに、わが国の CSR に対する考え方および取り組みに対する理解の促進に努める予定としている。

3. 国内外のCSR動向に関する調査、海外CSR団体等との交流

セミナー・ 懇談会の開催や海外ミッションの派遣以外にも、CBCC では国内外の CSR 動向や企業の取り組み等の情報をさまざまな方法で収集・提供している。2016 年度は、日本企業を対象としたアンケート調査の実施を通じてわが国におけるCSRの実態を探ることにしており、調査結果は広く公表するとともに、海外へも積極的に発信して、日本の CSR に対する理解促進の一助とする考えである。

また、上記の活動を推進するに当たって、 CBCC は、米国の企業会員組織 Business for Social Responsibility(BSR)、中国の月刊経済誌 WTO 経済導刊、アジアの企業会員組織 CSR Asia など、海外の CSR・サステナビリティ関係機関とネットワークを構築しており、これを通じた情報収集および情報発信に力を入れている。

4. 国際貢献事業の認定を通じた企業・個人からの寄付の促進

CBCCは設立以来、海外に進出した日本企業が現地で行う地域貢献活動や文化交流活動、日本に対する理解促進活動などを支援すべく、一定の条件を満たしたこれらの活動を「国際貢献事業」に認定して、これに寄付する企業や個人が税制上の優遇措置を受けられるようにしてきた。現在は日本国内で行われる同様の活動も国際貢献事業に認定することができるようになっている。最近では、「日米協会 100 周年記念基金プロジェクト」や「カンボジアにおける教育支援」、アフリカにおける女子教育を支援する「さくら女子中学校プロジェクト」などが国際貢献事業に認定されており、企業や個人からの寄付促進に寄与している。

CSR に対する関心と期待が一層高まる中、 CBCC では、経団連の関連団体としての強みを生かして、今後もさまざまな主体やステークホルダーとのネットワークを強化し、グローバル化の中で進化する CSR の情報をさらに充実した形で会員企業へ提供するとともに、わが国の CSR に関する情報発信に努めていきたいと考えている。

(公社)企業市民協議会(CBCC)
設 立:1989年9月(設立時の名称は社団法人海外事業活動関連協議会、
    2010年6月に公益社団法人に移行、現在の名称に変更)
会 長:二宮雅也 損害保険ジャパン日本興亜㈱代表取締役会長
会 員:損害保険ジャパン日本興亜、オムロン、ソニー等87社(2016年8月現在)
URL:http://www.keidanren.or.jp/CBCC/

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