【コラム】中国の留学生事情

東京大学北京代表所 宮内雄史所長に中国での留学生事情について伺った。

中国から外国への留学生が激増している。中国の大学生の急増に伴い、国内就職競争が激化し、また海外へ私費留学ができる経済力を持つ家庭が急増しているからだ。また、日本の大学でもそうであるが、諸外国の大学では、少子化や経済の低迷を受けて、中国人留学生を積極的に受け入れる動きが拡大している。海外留学中の中国人学生は2011 年で約120 万人で、日本人の20 倍近くに及ぶ。特に、米国への留学生の増加が大きく2011 年は23%増の15.8万人であり、米国での外国人留学生の22%を占めトップとなった。他方、日本の米国留学生は、2.1万人となり、全体の3%にすぎない状況となっている。

一方、中国への外国人留学生も急増している。
2011 年で29.2 万人と10 年前に比し約6 倍に増加した。その背景には、アジアのみならず欧米諸国からの急増があり、例えば、米国人は約2 万3, 300人(前年比約18%増)、フランス人約7,600 人(同約20%増)、ドイツ人約5,500 人(同約29%増)となっている。同3 ヵ国からの日中への留学生を比較すると、今や日本に来ているのはせいぜい15人に1 人程度である。その開きには、経済的に日本と中国の間に大きな差がつきはじめており、将来中国でのビジネスチャンスを期待する面があるのではないかと推察される。

日本への外国人留学生も、この10 年で大幅に増加(2011 年、13.8 万人)しているが、その内訳を見ると、中国人が約6 割、韓国人が約15%を占め、中国に比べて外国人留学生の多様性に大きな差が生じている。

留学生は、本国において、留学先の国の事情をよく知る、理解する一群の人となる。現状のままでは将来的に、欧米各国での知日家の人数と、中国を知る人の人数に圧倒的な差がついていくことになる。