環境、地域と共生する発電事業 -三峰川電力-

丸紅株式会社
国内電力プロジェクト部

丸紅グループの再生可能エネルギービジネス


世界のエネルギー需要は、新興国の経済成長とともに、今後もますます増大することが予測されます。伸び続けるエネルギー需要に対し、地球の化石資源に依存したエネルギー供給には限りがある上、気候変動による危機をもたらすことが懸念されており、再生可能エネルギーの活用が世界的に注目されています。
再生可能エネルギーとは、石炭・石油などを燃焼させて発電する火力発電に比べ二酸化炭素などの温室効果ガスの排出が少なく、資源の枯渇問題がない地球環境に優しいエネルギーです。丸紅グループでは、持続可能なエネルギービジネスを目指し、風力発電、地熱発電、水力発電などの再生可能エネルギー事業に、いち早く取り組みました。


ダムもなく、CO2排出もない、自然と共生する水力発電事業


水力発電は、発電所の開発から運用、設備の廃棄に至るまでのライフサイクル全体でCO2の排出が最も少ない発電方式です。他の自然エネルギーに比べ、昼夜、年間を通して安定した電力を得やすいので、発電効率にも優れています。
丸紅グループの三峰川電力㈱は、南アルプスの仙丈ヶ岳、塩見岳を源流とする天竜川水系三峰川から取水して、年間約1億5,000万kWhを発電しています。川の上流に低い堰を造って水を取り入れ、長い水路により落差が得られるところまで水を導いて発電する水路式の発電所です。ダム式発電のような大規模な土木工事を必要としないため、自然の景観を自然のままに維持し、CO2もほとんど排出しません。
丸紅グループでは、三峰川電力㈱を持続的成長可能な再生可能エネルギー分野発電事業と捉え、新たな取り組みを進めています。


環境に配慮した小水力発電の取り組み


三峰川発電所の歴史は古く、1963年にまず第2発電所、1964年に第1発電所が完成し、第1は約260m、第2は約330mの落差を利用して、最大約3万2,700kW規模の発電事業を続けています。2000年からは、小水力、バイオマス、風力などの新エネルギーによる事業展開を目指した研究開発を進めており、小水力発電により、2006年に第3発電所、2009年に第4発電所が完成しました。いずれも完成時にはRPS(Renewable Portfolio Standard)法対象電源に認定されており、現行は2012年7月より開始したFIT制度における再生可能エネルギー発電設備に認定されております。その後、2011年には蓼科発電所、2012年には山梨県北杜市に3ヵ所の小水力発電所を完成させ、今後も積極的に取り組んでいきます。
小水力発電とは、数千kWまでの小規模な水力発電で、水の使用流量が少ないため、河川への水質汚染や水中の生物に及ぼす影響が極めて少ない上、設置により地形や景観を損なわない、運用時のCO2排出がほとんどないといった数々のメリットにより、普及・促進が望まれているのです。


小水力第4発電所が新エネルギー財団会長賞受賞


第4発電所は第1発電所の放水口の下流600m地点に建設され、第1発電所で使った用水を再利用して落差13mで480kWを発電しています。また汎用型水車発電機6台を設置し、水量の変化に応じた稼働台数の制御を行い、エネルギーを有効利用するとともに、機器導入コストも低く抑えています。さらに全長600mの用水路にも従来の鉄管でなく、強化プラスチック管を用いて建設コストとメンテナンスの手間を共に低減しています。
2010年1月、経済産業省資源エネルギー庁主催の第14回新エネルギー大賞において、三峰川電力の第4発電所が 「新エネルギー財団会長賞」を受賞しました。水資源の有効利用、 省エネの工夫、設備や運用コストや手間の低減などの施策が、新エネルギー開発への優れた取り組みと評されたのです。


三峰川発電所全景


エネルギーの地産地消、小水力発電の可能性


日本は年間降水量が多く元来水力発電に適しており、しかも大規模な土木工事を伴わない小水力発電は、エネルギーの地産地消を実現する技術として注目を集めています。
未開発の適地は国内に2,000-3,000 地点あるといわれ、2020年までの導入見込みは174万kW。さらに、2050年までには300万-500万kWの発電が可能と推計されており、この数字は一般的な原子力発電所数基分に相当します。
一方、発電のために河川から取水を行うには、国土交通省や地方行政の許可による水利権を得なければならないため、誰もが小水力発電事業に参入できるわけではありません。
三峰川発電所が長年環境に優しい発電を行ってきた実績は、水利権の早期取得にも奏功しています。丸紅グループでは2020年までに、新規建設や遊休設備の買収などにより国内30ヵ所の小水力発電所の開発を目指しています。


地域との共生、コミュニケーションの促進


三峰川発電所はエコアクション21の認証を取得しており、これは水力発電所として第1号です。全ての事業活動における環境保全と地域への貢献を方針に掲げ、今後も省エネ・省資源・廃棄物削減活動を継続的に推進する他、 水質維持活動や地域コミュニケーションに特に力を入れていきたいと考えています。
最も標高の高い位置にある第2発電所の取水口は国定公園に接しており、三峰川発電所 の設備は生物多様性においても価値の高い地域にあることを踏まえ、自然破壊をしないこと はもとより、自然を保護していくことを目指しています。その一環として、河川清掃活動や年2 回の水質検査を実施し、汚染の有無だけでなく、生物の要求する酸素量を満たしているかをチェックしています。
また、毎年地域の小・中学生や市民100人以上の発電所見学を受け入れ、ハイブリッド(風力、太陽光、水力)発電システムの展示などを紹介し、再生可能エネルギーの啓蒙活動や地域の伝統文化の伝承も支援しています。

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