夜も眠らない国際都市ドバイ

中東川商フーズ社 社長
関口 新造

1.真珠の輸出から石油の輸出へ


この地域の歴史は明らかでない部分もありますが、オマーン国境近くにあるハッタの遺跡などから、紀元前2000年ごろから高度な文明が存在していたと推定されています。
市街地を2分するようにクリーク(運河)があり、天然の港に恵まれたドバイは、古くから湾岸の港として知られていましたが、現在のドバイの礎は、1830年代にバニ・ヤス族の一部であったマクトウムなどに率いられたブ・ファラサ族がアブダビからドバイの地に移り、ドバイ首長国を建国したことにあります。
1900年初頭まで、アラビア湾の真珠の輸出、漁業、漁船の製作を収入源として、町と呼べる程度の規模を維持してきました。その後、中東貿易の基地としての機能を少しずつ高め、1930年代には中東でも1、2を争う町となっていきますが、同年代ごろ、日本での真珠の養殖技術が開発されると、真珠の輸出は日本に取って代わられ、ドバイの経済は低迷期に入ります。
しかし、この低迷していた経済は、1966年の海上油田の発見によって、回復。1969年には石油の輸出が開始され、ドバイ首長のシェイク・ラシッド・ビン・サイード・アル・マクトウムはその石油収入をもってドバイ経済の多角化を積極的に行い、空港、港湾の建設、拡充、貿易センタービルの建設、ジュベル・アリ・フリーゾーンの建設などに力を注ぎ、今日のドバイを築き上げたといえます。また、1971年に英国のスエズ以東からの撤退を機に、他の7つの首長国と共にアラブ首長国連邦(UAE)を建国しました。
確かに、石油はドバイの重要産業でしたが、ラシッド首長はポスト・オイル時代に備えて、ジュベル・アリ・フリーゾーンへの外国企業の誘致、各種国際見本市・展示会の開催、「ドバイワールドカップ」で知られる競馬の開催、リゾートホテルの建設、ドバイ空港の拡張と利用路線の拡充などを着々と進めました。その政策は現在も引き継がれており、ドバイはUAEにあって商都であるとともに、今や湾岸のみならず中東最大の貿易、商業の中心都市としての地位を占めるに至っています。


2.90%が外国人の商業エリア


ここ最近人口が急激に増えているドバイは、現在約150万人。人口の約半数がインドやバングラデシュからきた労働者で、日本人は約3,000人と90%が外国人という国です。約20万人が現地人であるアラブ人です(近隣国からのアラブ人も含む)。国語はアラビア語ですが、商業は100%英語。特に、インド人特有の英語に慣れる必要があります。
当社はジェベル・アリ港に隣接するジュベル・アリ・フリーゾーン域内にあります。ここは商業を活発にするために企業に対して、あらゆる優遇税制が設けられている場所で、外国企業が集まっています。周りはほとんどが事務所や物流倉庫拠点で、常に膨張する地域で建設工事がやむことがありません。このような措置を取っていることで、外資系企業をたくさん取り込むことに成功し、人口の90%が外国人となっているゆえんです。


3.当社の海外ブランド「GEISHA」缶詰


特に、ナイジェリアで売れている
GEISHAサバトマト煮缶詰

たくさんの規制があるアラブの国々と違い、規制の少ないドバイで商業が行われることが多く、情報が集積する場となっています。
当社がドバイに現地法人を設立した理由として、中東の商業中心地であり、金融システムが完備されていて、政治的にも安定している点、取引国(中東、アフリカ、欧州)へのアクセスが良く、利便性があるなどが挙げられます。
またドバイのジュベル・アリ・フリーゾーンは外国資本100%出資会社には所得税、法人税などが無く、またビザ規制も少ないため商業がしやすくなっています。
そのため、当社取り扱いのGEISHA缶詰も市場へのアクセス頻度を上げ、市場動向に即した迅速な対応を進め、ドバイに拠点を置きながら中近東、欧州、西アフリカと幅広いテリトリーの中で販売をしています。
販売の中心はびん長マグロ油漬缶詰とサバトマト煮缶詰ですが、日本産のマグロを使用しているびん長マグロ油漬缶詰はサウジアラビアで約60年の販売歴史があり、高額商品ではありますが、首都リヤド中心に王族、官僚(役人)、石油関連業者に人気があり、販売数量は安定しています。また、2008年より販売開始した日本産の紅鮭、白桃、ラ・フランス缶詰は市場定着にはもう少し時間がかかると思われますが、GEISHAブランドの高級イメージ、高品質としての宣伝効果を期待しています。
当社社屋の向かいには2009年1月にJFE商事ドバイ支店が設立され、熱延、厚板などの鉄鋼全般を取り扱っています。こちらも幅広いテリトリーですが、特にサウジアラビア、アブダビ首長国などの産油国での石油関連プロジェクトに注目しています。


4.世界一を目指しています!


一際高いブルジュ ・ドバイ

ドバイといえば世界中のセレブが集まる場所、世界一や豪華さを競うというイメージが皆さんにあるのではないでしょうか。リーマンショック以降、ペースは落ちたものの現在でも建設ラッシュはやみません。
中でも有名なのがブルジュ・アル・アラブで、7つ星の最高級の高層ホテルとして1999年12月にオープン。321メートルで世界一高いホテルとしてギネスブックに載っているほどです。
次に世界一高いブルジュ・ドバイをご紹介しましょう。台湾の高層ビル台北101(509メートル)を超え、世界一の高さ818mを目指すタワー、ブルジュ・ドバイは建設中ながらすでにドバイを象徴する建物となっています。ビルの中には、ホテル、高級マンション、オフィスが入る予定です。ホテルは世界で初めてのアルマーニホテルで、内装はすべて、ファッションデザイナーのジョルジオ・アルマーニが手掛けています。さらに高さ1,000メートルを超えるタワー、アル・ブルジュの計画も進められているそうです。
今後も世界一を更新していくことは間違いありません。


5.ショッピングパラダイス


たくさんの方が休日を過ごす
ショッピングモールの一つ、オアシスセンター

ドバイには約66件のショッピングモールがあります。買い物はモールでするのが当たり前と言っていいほど、ドバイに住んでいるほとんどの人が訪れます。それぞれのモールに違うブランドのショップ、違うアトラクションがあるので、どこのモールに行っても楽しめます。週末も映画を見たり、新聞を読んだり、家族や友達と過ごしている光景を見掛けます。
また、年に3回バーゲンが行われ、約1ヵ月間行われるドバイ・ショッピング・フェスティバル(DSF)では、すべての市街でさまざまなイベントが行われます。メインはショッピングセール。ショッピングモールもセールに参加し、大いに盛り上がります。ブランド品までもセールの対象となります。
ここで世界最大級のモールであるドバイモールをご紹介しましょう。約111万平方メートル(約サッカーコート50面分)の敷地内に1,200店舗以上が入居しています。ここの目玉である世界最大の水槽がある水族館や音楽に合わせて動く噴水には圧倒されます。
現在、ドバイではさらに10件のモールを建設中で、遅くとも2011年には開店予定です。ドバイ全土がタックスフリーであることも含め、世界中の人々がショッピングを楽しむ場所として、ドバイを選ぶのも不思議ではありません。


6.バス路線が充実


エアコン付きのバス停で、待ち時間は快適に過ごせます

移動手段は車、バス、タクシー、アブラ(水上バス)などです。その中でも車は夏場40〜50度近くなるドバイに暮らす人々にとって必需品です。そのため、渋滞がひどく、通常20分で行けるところを朝、夕のラッシュ時には、2時間近くかかることもありました。渋滞を解消するべくドバイメトロを開発中です。これは日本の建設会社が中心となり進めている鉄道設備で、車両および駅舎も完全空調が整っているメトロがこのほど開通予定です。外資系企業が多数あるジュベル・アリ〜ドバイ市街〜空港が結ばれることにより、車に依存することのない生活スタイルが可能となります。
2008年9月のリーマンショック以降大きな経済的打撃を受け、メトロの1つのライン工事が延期となっていることも事実ですが、まだまだドバイは開発段階にあります。
また、公共の移動手段で最も使われているのがバスです。バスの台数や経路がたくさんあります。うだるような暑さの夏にバス停で待っているのは一苦労。そこで短い時間でも乗客を守るためにできたのがエアコン付きのバス停です。中はきれいで涼しく、過ごしやすいです。


7.City of Gold !


ドバイといえばやはりゴールド!ディラ地区にある金を専門に扱う「ゴールドスーク」には300店舗以上が連なり、連日にぎわいをみせています。スークとは小さな店が軒を連ねるアラブの伝統的な市場のことをいい、ほかにはさまざまなスパイスがそろうスパイススークや衣類や生地がそろうテキスタイルスークなどがあります。
ゴールドスークのショーウインドウにはたくさんのゴールドがまぶしいくらいに輝いて、金の延べ棒から小さなピアスまで多種多様な金がそろいます。金、銀以外の宝石類もお買い得!ゴージャスな雰囲気が味わえる人気の観光スポットです。
このスークがあるため、ドバイはCity of Goldと呼ばれています。ぜひゴージャスな雰囲気を味わってみてください。


8.なが〜いお昼休み


金曜日の午前中は礼拝のため多くの店が閉まっています。金曜日が日本の日曜日にあたり、当社も休みです。昼休みも独特です。ドバイでは始業は9時ごろで終業が19時ごろ、その後夕飯をとり、夜中の就寝が一般的です。就業時間が長い、睡眠時間が短いと心配されるかもしれませんが、安心してください。午後の1〜4時ごろまでが昼休みとなっているため、昼食後はカフェでお茶をする人、昼寝をする人、談笑する人とそれぞれ昼休みを楽しみます。しかし、欧米系企業の昼休みは12〜13時でわが社も同様です。現地の時間帯に合わせて仕事をしているととても辛いことがあります。3時間の昼休みがあったら、あなたはどう過ごしますか?


9.変化し続けるドバイ


斬新なデザインの建物が立ち並んでいると思えば、ビル街から少し行くと砂漠が見られたり、近代的なショッピングモールがある一方で、古くからあるアーケード・スークも残る街。さまざまな魅力に触れることができるドバイは、まだまだ変化の途中で、商業の可能性が大いにあります。ぜひ皆さまにも訪れていただき、この不思議な世界を味わっていただければと思います。

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