Ilha Formosa 台湾事情

台灣豐田通商股份有限公司
総経理
南部 達意

1. 台湾と日本の関係



台北市内にある松山空港 8便/日 羽田行きが就航


歴史的にも台湾と日本の関係は深く、ビジネス、文化交流、観光などにおいて切っても切れないつながりを続けています。特にビジネスの世界では、多くの先輩諸兄がビジネスモデルを創造され、現在もその産業形態を変えながら相互に成長・拡大し続けています。台湾にとって日本は、輸入国第1位で総額の20%を超え、輸出国としては中国、香港、米国に次ぐ第4位となっています。日本から見ると台湾は、輸出国第4位、輸入国第8位の位置付けとなっています(2010年実績)。また、両国間の人の往来を見ますと、日本→台湾は年間約130万人。台湾→日本約110万人であり、ビジネス・文化交流、観光などで、行き来しやすい関係であることが分かります。現在、台湾⇔日本の航空便は、東京、大阪や名古屋はもちろん、札幌、仙台、小松、宮崎、静岡など12都市へ、1週間に約290便が往来しています。2010年10月には、台北松山空港⇔羽田便(1日8便)が就航し、東京⇔台北のビジネス日帰りも可能となりました。現在、約1万5,000人の日本人(居留手続き届け出)が台湾で生活しています。


2. 台湾事情


最南端の墾丁で排湾族酋長に変装の筆者

国土は3万6,000㎢。分かりやすく比較すると、九州とほぼ同じ面積で日本の約10分の1です。国土の3分の2が山地で、3,000mを超える山がなんと250以上もあるといわれています。富士山より高い山がいくつもあり、玉山(3,952m)玉山山脈、雪山(3,886m)雪山脈、南湖大山(3,740m)中央山脈、大覇尖山(3,505m)雪山山脈などが登山家の間では有名といわれています。平地と呼ばれる部分は3分の1程度で、島内の西部に広がっており、北部から西部、南部にかけて人口が集中し、台北市内には約260万人、高雄市には約150万人、台中市は約110万人、台南市には約80万人が生活しています。この北部−西部−南部の平野地域を台湾新幹線が一直線に貫いており、国内外の主な製造業が集中しています。
一方、東部、南部には、峻嶮な山と太平洋のはざまに、宜蘭、花蓮、台東などの町があります。東部、南部には台湾独自の文化である台湾原住民の皆さんが、現在も50万人ほど生活していて、代表的な阿美族(Amis)、泰雅族(Atayal)、排湾族(Paiwan)、布農族(Bunun)、卑南族(Puyuma) など12族が台湾政府から認定されています。陽気で明るく、女性は目がきれいな人が多く、男性はたくましい人が多く見られ、その民族衣装は原色をベースにしたきらびやかなものです。歌や踊りなどの伝統芸能は素晴らしいものがあり、有名な歌手も輩出しています。個人的な感想ですが、誰からともなく歌い出し、踊り出すところは沖縄のイメージに近いものを感じます。自然の豊かさと人の温かさで、懐かしさを実感できるところです。
全人口は約2,300万人ですが、数百万人が海外(主に中国大陸)で生活していると思われます。出生率は、世界有数の少子化国であり長寿国でもありますので、日本同様の少子高齢型となっています(平均寿命男性76歳、女性82歳 2010年統計)。


3. 交通網の発展


ひと昔前に、台湾に居住していた方に、『台北⇔高雄の飛行機はまだ飛んでいるの?よく揺れたもんだ』と聞かれます。残念ながら台北⇔高雄、台南、台中の航空便はほとんどなくなってしまいましたとお答えします。
2007年3月に台湾新幹線が開業し、この影響で激減したと思われます。日本の新幹線技術協力によるものとされている台湾新幹線開業により、これを使えば、台北⇔高雄(左営)は最短で約1時間半、台北⇔台中は約1時間と便利で快適な移動ができます。毎日約70本が往復運行され、旅行客やビジネス客が年間4,100万人利用しています。料金は日本新幹線の半分ほどです。
台北市、高雄市には地下鉄が整備されてお り、駅構内や車両内はとても清潔で、飲食は 一切禁止となっています。かつて日本人がペットボトルのお茶を飲んで注意されたり、ガムをかんでニュースになったり。利用されるときには要注意です。初乗りはカードを使えば15元程度(日本円40円)で、市内バスも含め、公共のアクセスはとても便利です。毎回、地下鉄に乗っていて感心することは、優先座席は必ずその目的のために空けられていること。当たり前のことですが、お年寄りや妊婦の人、障害のある人たちのために誰もが席を空けてくれており、はるか昔の日本を思い起こしています。一昨年、私に席を譲ってくれた青年がいて丁寧にお断りしましたが、お年寄りに見えたのか?ショックを受けた記憶があります。タクシーの初乗りは70元(日本円200円) で、5元間隔でメーターが上がっていきます。
1時間乗っても700−800元(日本円2,000−2,500 円)と格安です。客が日本人と分かると、CDで日本の歌を流してくれる運転手さんがいたり、時には片言の日本語で話しかけられることもあります。
台湾国内での車の運転については、2008年10月に台日間の自動車運転免許の相互承認を全面実施(無試験で相手国免許に切り替え可能)され、台湾での普通乗用車の運転が比較的便利になりました。


台湾新幹線


清潔感漂う台北地下鉄構内


4.『がんばれ日本!』『ありがとう台湾』


日本ガンバレ

2011年3月の東日本大震災。台湾のマスコミは、一日中、日本からの震災映像を放映し、日本のことを心配し続けてくれました。翌12日には、日本人がよく通う繁華街に『日本がんばれ』の横断幕が掲げられたり、義援金総額(約220億円)は台湾が人口1人当たり断然ナンバーワンであったことや、チャリティー募金では政財界トップの方々が率先し、国民に義援の呼び掛け支援してくれたことを覚えています。これに応え日本からも多くのお礼や感謝のイベントが開催され、両国の深い友情とつながりを印象付けました。
『がんばれ日本!』『ありがとう台湾』。
この2つの言葉は、台湾にいる日本人にとって、実感している全てを言い表してくれていて、生涯忘れることなく心に刻まれる言葉になると思います。


台北101 ビル 通常時(左)
大晦日カウントダウン花火(右)

同じく2011年、台湾は民国100年という区切りを迎えました。
台湾では10月10日に政府主催の式典をはじめ、多くのイベントが開催されましたが、同じ10月にグッドタイミングで、在台湾日本人の念願であったNHK『のど自慢in台湾』が台北・国父記念館で公開収録されました。出演者は、日本の歌を歌うことが条件だったそうですが、出演者の約8割の台湾の方々が演歌やポップスを日本人顔負けのパフォーマンスで熱演。カラオケで演歌を練習するサークルもあるそうです。結果、もちろんチャンピオンは台湾の方でした。また、大みそかには、恒例の台北101ビルでカウントダウン花火のイベントもありますが、今回は例年以上に盛大に開催されました。


5. 台湾と中国大陸


日本同様、大きなつながりを持つ中国大陸と台湾(両岸と呼ばれています)との経済関係は大きく変化してきています。2010年6月、自由貿易協定である両岸経済協力枠組み協議(海峡兩岸經濟合作架構協議、Economic Cooperation Framework Agreement、略称ECFA)が締結され、両岸交易品の部分的、段階的関税引き下げ策が進んでいます。2010年の実績では台湾の中国への輸出は約850億ドル、台湾への輸入は約360億ドルとなっており、貿易総額1,210億ドルという金額は、2005年に比べて160%と右肩上がりとなっています(同比:日本は114%、米国は111%)。両岸の人の往来にも大きな変化が生まれま した。2008年4月に赴任した当時は、大陸への出張は必ず、香港かマカオを経由して大陸の各地へ飛ばなければならず、台北を出発して香港まで1.5時間。香港で1.5時間待ち、目的地まで3.5時間と半日以上の『長い旅』で、結局、移動だけで1日かかる出張となっていました。復路も同様です。直線ならもっと早く合理的に飛べるのにな~と考えると、少々おっくうな大陸出張でした。
しかし、2008年の7月には両岸直航チャーター便が就航し、11月には両岸三通(海峡両岸空運、海運・郵政・食品安全取り決め) が実現。2009年4月には、空運の定期化が実現しました。現在では台湾各地から、上海(浦東、虹橋)、北京、廣州、大連、厦門、福州、南京、成都、天津、長春、重慶、瀋陽、無錫、青島、杭州、哈爾濱、桂林、煙台、武漢、西安、深圳、温州、徐州、寧波、南寧、石家荘、鄭州、長沙、海口、合肥、南昌、昆明、貴陽、三亜、済南、太原、鹽城など約40都市に、1週間600本以上の直行便が運航しています。結果、台北⇔上海は、約2時間。台北⇔北京は3.5時間で移動できるようになり、上海へは日帰り出張が可能となりました。また、驚くことにほとんどの便が満席かそれに近い状況です。大陸からの訪台者(主に観光客)は2008年には年間数十万人であったものが現在に至っては200万人に迫る急増を示しています。


6. 最後に


ここまで、わずか駐在4年の間にどんどん変わっていく台湾の実態についてお話ししまし たが、航空便の拡充に伴い、日本や中国大陸との関係をはじめ、島国の台湾にとって、海外との関係は大きく変化しました。人間が便利に快適に往来できるようになることで、経済や文化交流、観光等がこんなに大きく変化するものだということを実感できる4年間でした。最近、台北でトランジットする日本のビジネスマンが増えています。日本→台北→中国大陸各地や東南アジアへの出張は、混まずにスムーズな移動ができると聞いています。中国各地にも、日本各地にも台湾から『一っ飛び』になりました。
ビジネスや観光に、多くの日本人の皆さんのご来台をお待ちしています。

Ilha Formosa 台湾事情 誌面のダウンロードはこちら