今を時めくグジャラート州 アーメダバード

興和株式会社 Kowa India Pvt. Ltd. アーメダバード支店長
野田 和哉

1. はじめに

中国経済が停滞の傾向を見せ始め、次の市場として注目を集めているインド。ニューデリーやムンバイなどの都市名はニュースでもよく目にしますが、現在私が住むグジャラート州アーメダバードに関してはあまり聞きなれないのではないでしょうか? しかし、ここは現地で成功した日系企業の象徴であるスズキの第3工場が2017年稼働を始めたことに加え、強いリーダーシップでインドをけん引するナレンドラ・モディ首相(2014年5月就任)がかつて知事として活躍した地盤地域としても知られ、今インドで最もホットな地域として注目を集めつつあります。今回はそんなグジャラートについて皆さんに紹介していきたいと思います。

2. グジャラート州の地理・気候

グジャラート州はインドの北西端、アラビア海に面したサウラシュートラ半島に位置し、面積約19万6千㎡、人口は約6千万を有するインドで9番目の州になります。ステップ気候地域に属し、年間を通して雨が少なく、1月以外は日中平均気温30-40度ほどです。デリーの冬は日本なみに寒くなりますが、こちらの冬は1月のみのわずかひと月、しかも日中20度前後と日本でいえば春・秋ぐらいの体感であり、セーター等で十分にしのげるほどです。反対に最も暑い時期は5月。50度近くまで温度が上がることもありますが、乾燥しているので日本ほど暑く感じないため、外を歩いていると知らない間に熱中症になる場合もあります。

3. 地域の特徴・文化


ガンジー博物館

印僑と呼ばれるように、インドの人々もまた中華系民族と同じように古くから世界中に散らばって社会をつくり経済圏を形成していますが、グジャラートは特に地理的な特徴から英国やアフリカなど西側の諸国に多くの人材を提供しています。インド建国の父と呼ばれるマハトマ・ガンジーもこの州の出身で、かつては南アフリカで弁護士をしていました。他にも新興財閥として有名なリライアンスグループやアダニグループもグジャラートから始まった会社です。また、同州はインド国内で最も工業が盛んで、国内生産の約4割をこの地域が占めています。他方でそんな経済的なイメージとは裏腹に、非常に信仰が深い地域としても知られています。ヒンズー教宗派の中でも、特に戒律が厳しいジャイナ教もこの州から始まっており、彼らは肉はおろか、野菜でもタマネギやニンニクといった根菜類は次世代への存続を断つ食物として口にしません。商人でありながら禁欲的という非常にユニークな側面を持った文化土壌といえるでしょう。

4. グジャラートでの生活


インド料理店

日本人をはじめとする外国人が、グジャラートの生活で一番苦労する面といえば、食事になります。先述の文化背景から地元の人々は大半がベジタリアンで、街中のスーパーマーケットでもハムやベーコンなどの肉類や卵は見つかりません。それらはムスリムが経営する肉屋で入手する必要があります。イタリアンや中華など外国料理のレストランであれば肉料理も堪能できますが、コストが高くつくのでファストフードの利用が多くなる人もいます。またここは、「酒は人々を堕落させ犯罪を生む」と語ったガンジーの言葉を受け、禁酒法が適用されている州でもあります。わたしたち外国人はリカー・パーミットという許可を取れば制限付きで酒類を購入できるのですが、レストランなど公共の場所での飲酒は禁じられているので自宅でしか味わうことができません。そのため、交流はもっぱらホームパーティーになり、頻度は低いものの駐在者は助け合って親密な関係を築いています。最近では日系企業の進出に伴って日本食のレストランも増えてきつつあります。また、大都市と比べて住みやすいのはなんといっても渋滞が少ないことです。インドの交通渋滞はひどく、デリーやムンバイなどの大都市では通勤だけでも体力を要しますが、アーメダバードでの移動は快適です。グジャラートの人々はインドの中でも比較的マナーが良いので、たびたびインド旅行者から聞くようなトラブルも少なく、日常的な移動手段として手軽なオートリキシャーもぼったくりがありません。そのおかげもあって、いちいち相手を疑いながら買い物や生活するストレスからは解放されています。

5. グジャラートでの休日の過ごし方


階段井戸入り口

階段井戸内部

ゴルフ場(アダニタウンシップ内)


グジャラートでは基本的にナイトライフは少なくなるため、駐在員の余暇の過ごし方は、テニス・ゴルフなどのスポーツ活動や遺跡巡りといったものが多くなっています。近場で訪れることができる観光名所といえば、階段井戸やガンジー博物館になります。階段井戸は15世紀につくられた階段状の井戸のことで、水を神聖視するヒンズー教において、雨量が少ない西部インドで井戸は大変貴重なものとされ、美しい彫刻で飾られており人気のスポットとして知られています。その中でも最大の「ラーニ・キ・ヴァヴ」(Rani Ki Vav)は2014年に世界遺産登録されました。ただし、この場所はアーメダバードの北西約130kmのパタンという町にあるため、観光としては市内からほど近い「アダーラジ・ヴァヴ」(Adalaj Vav)に行く場合が多いです。ガンジーは言わずと知れたインドの偉人で、博物館には彼の遺物や現地で行った「塩の行進」(*注釈参照)などに関連する展示物が飾られています。また、アーメダバード市内から約1時間の圏内に三つほどあるゴルフ場では、どれも1,000ルピーから2,000ルピー(約1,660-3,320円)くらいでプレーできます。格安なのが魅力ですが、かなり暑いために、早朝からプレーする、給水をしっかりするなどの心がけが大切になります。コース上には小さな祠(ほこら) などがそのまま残されていたり、クジャクやコブラが出たりといったインドならではの光景も見られます。

*1930年にマハトマ・ガンジーおよび彼の支持者が英国植民地政府による塩の専売に反対し、グジャラート州アーメダバードから同州南部ダーンディー海岸までの約380kmを行進した抗議活動のこと。英国からの独立活動における重要な転換点となった。


6. インドでの仕事

弊社はグジャラートの財閥アダニグループと20年以上前から協業しており、2011年より包括事業パートナーとして、さまざまな事業分野で提携してきました。アダニグループはインド最大の石炭輸入者であり、国内でナバシェバ港に次ぐ取扱量を誇るムンドラ港を有し、自身も民間最大の発電事業者という一大コングロマリットで、この10年で急成長を遂げました。トップ同士の親交もあり、石炭の三国間貿易、ケープサイズバルク船の長期用船、ムンドラ港内へのプッシャータグ納入など、多岐にわたり共同で港湾のインフラ整備を進めてきました。またインドへの輸入のみならず、アダニグループが設立したインド最大の食用油ブランドFortuneを有するアダニ・ウィルマー社を通じ、世界供給の8割をインド(特にグジャラート)が占めるひまし油の輸出にも大きく貢献しています。アダニ関連の事業のみならず、興和製の眼底カメラのインド国内シェアはトップを争うほど高く、また子会社である興和光学㈱のレンズも大手セキュリティー関連で採用が決まり、着実に実績を伸ばしています。トレーディング部門においても化学品の輸入、繊維関連の輸出、建築資材の輸出、船舶パーツ輸入、インド国内日系企業向けの資材納入など広い分野で事業展開しています。このように多忙な日常の中で日々感じるのは、ちまたでもいわれていますが、「インド人は交渉上手」という一言に尽きるでしょう。相手の期待を上手に誘導し情報を集め、肝心な部分は契約書で担保、そして論理構成もしっかりしています。アジアというよりは商文化的には欧米に近いと感じます。歴史的に駆け引きの才能が発達している人たちなので、商売相手としては手ごわいですが、ビジネスマンとして学ぶべき点も多くあります。このような感覚は今後のグローバル展開においてさらに必要になってくると思われます。従来のインドは貧困、不衛生、詐欺などマイナスのイメージがつきまといましたが、今後は加速度的に発展・近代化を遂げていくと思われます。何事もタイミングが大事といわれますが、今のインドはまさに修行・挑戦の場として絶好の地です。ナレンドラ・モディ首相にけん引され、ここグジャラートを起点に急速に明るい未来が広がっていきます。皆さんもぜひ一度アーメダバードにお越しください。またその際は気軽にお声掛けいただければと思います。


建設中のアダニソーラーパネル工場

タグボート(ムンドラ港)

アダニタウンシップ(シャンティグラム)

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