トルコ 政治の都市「アンカラ」にて

興和株式会社 海外統轄本部
興和ヘルスケアトルコ マネージャー
宮川 雅孝

興和ヘルスケアトルコ オメル・バクル代表とともに(右 筆者)


初めてトルコに赴任することになり、今年(2015年)の3月13日にトルコの首都アンカラに到着しました。現在、当地での生活を始めてひと月が経とうとしています。こんな短い経験では、トルコの全てを語りきることは、とてもできないかもしれませんが、今だからこそ感じられるトルコの新鮮な印象を、雑感も含めて思いつくままにレポートさせていただきます。
そもそも少し前までの私が持つトルコのイメージといえば、書物やインターネット、トルコ関連のセミナー、数回の出張で感じたものだけでしたので、今、私がアンカラのアパートでトルコに関する原稿を執筆するに当たって、あらためてトルコについて調べてみました。このような私ではありますが、原稿の締め切りが許す限りアンカラにて生で感じた感想を写真と共に紹介していきたいと思います。


はじめに

トルコといえば一昨年(2013年)は2020年のオリンピック招致合戦で東京とイスタンブールの決選投票が行われことが記憶に新しいと思います。また、2015年に入ってから、トルコは某過激武装組織が拠点とするシリアやイラクへのゲートウェイとしてニュースによく登場するようになりました。しかし、トルコは本来、地政学的には、西アジアのアナトリア半島と東ヨーロッパのバルカン半島を領有するアジアとヨーロッパの東西文明のゲートウェイであり、十字路としての役割を果たしてきたことからも、東西文明の融合する魅力的な国なのです。


トルコ共和国の概要


国土の大半(95%)はアジア側に属しますが、経済的には欧州の一員として活動しています。石油などの天然資源に恵まれず、人的資源を重用し、その事実は勤勉な国民的性格に表れています。人口は、2014年末の国家統計局データによると約7,700万人で、国土は約78万㎢と、日本の約2倍です。宗教はイスラム教スンニ派が大部分を占めますが、政府が世俗主義(政教分離)を憲法で規定しているため、穏健、現実主義といわれております。また、大変親日的な国として知られているのは、皆さんご存じの通りです。
政治的にも2002年から、現在与党の公正発展党(AKP)により、3期目となる安定政権が続いており、元首として2014年8月末に、エルドアン氏が大統領に就任しました。ただ、AKP自体は世俗的というよりも、むしろ中間層寄りで、親イスラム的(半世俗主義的)な性格を持つ政党ですが、現状は、現実派、ビジネス優先の政治スタイルを踏襲しています。外交政策としては、イスラム教国家で唯一NATOに加盟し、西側に属する側面を見せてはいますが、同時に近隣のイスラム諸国とも友好関係を重視するしたたかな外交を行う国です。
経済の概況としては、1人当たりのGDPも約1万ドルを超えており、人口規模で見ても、世界でも10位以内に入る経済規模となっています。また人口に占める若年層の割合が高く(平均年齢約30歳)、消費も旺盛で、今後の経済成長に期待が持てる国です。


首都アンカラとアタテュルク


ショッピングモール

トルコの都市といえば、経済、文化、観光の中心として有名で、人口も1,400万人を超えるイスタンブールがまず頭に浮かびますが、政治の中心である首都はアンカラです。
人口も400万人以上(2013年)と、トルコ第2の都市です。標高850mのアナトリア高原の東端に位置し、小高い丘に囲まれた都市です。ただ、最近は開発が進み、毎年高層ビルやマンションが建設され、私の自宅周辺にも巨大ショッピングモールが三つもあり、年々その様相は変化しています。そもそもアンカラをトルコの首都に決めたのは、トルコ共和国建国の父ムスタファ・ケマル・アタテュルクで、トルコの独立戦争の際に、彼が前線基地に選んだのがこの都市であったとのことです。ムスタファ・ケマルは、今でもトルコ建国の父としてトルコの国民に称えられ、至る所に銅像や旗を見ることができます。


アンカラでの生活


住宅地


テニスを楽しむトルコ人


さて、私の実生活面から感じた雑感を述べます。現在、私は地下鉄の駅でいうとKORU (コル)という再開発されたマンションが林立する住宅街に住んでいます。アンカラの中心部のKIZILAY(クズライ)とは、地下鉄の同一路線上にはありますが、直線距離では 20kmくらい離れています。アンカラの中心部に比べると、樹木や丘陵などの自然が残ったベッドタウンといった感じの場所です。
最近の情勢からすると、トルコのイメージは怖いと思っておられる方も多いかと思いますが、今のところ犯罪に巻き込まれそうになったこともなく、逆に親切なトルコ人が、生活面でのハンディを持つ私に手を差し伸べてくれることが多いです(ただ、これはまだ生活して短いことと、トルコのアンカラのごく一部分を切り取った感想であることだけ付け加えさせてください)。
周辺環境としては遊歩道があり、テニス、バスケット、フットサルなどのコートがあって、住民たちが日々スポーツを楽しんでいます。トルコではサッカーやバレーボール、バスケットボールなどが人気であることは、以前から知っていましたが、失礼ながら観戦が中心であると思っていました。しかし、実際に住んでみますと、夕方にフットサルをしていたり、週末にテニスをしたり、朝早くから夫婦仲良くウオーキングをしたりと、体を動かすことが大変好きな人たちだと分かりました。


ファーマーズマーケット


ケバブ(トルコの昼食)


トルコの食の話に話題を移しますと、食事の中心は、羊肉や鶏肉、牛肉ですが、野菜も豊富で、料理のさまざまなバリエーションも、世界三大料理の一つであることを感じさせられます。週末にはファーマーズマーケットが各地で開かれ、新鮮な野菜や果物が並べられ、目を見張るほどの活況でした。基本的にトルコで作られる野菜、果物、水などは、日本の半分ぐらいの値段で買えます。ちなみに、よく物価の指標となるマクドナルドのビッグマックですが、トルコでは3月21日現在、8.5トルコリラ(約400円)でしたので、食料品全ての物価が安いわけではないと思います。
また、気になる日本食や日本の調味料ですが、トルコのアンカラといえども、最近では醤油も大きなスーパーで買えますし、業務用スーパーの「METRO」では日本のビールも買えます。ただ、残念ながら日本人が満足できるような日本食を出すレストランは、まだアンカラにはないようですが、日本食に近い味の料理を出すアジアン・レストランはあります。日本食に関しては、今後に期待です。
食料品以外のトルコの物価についてですが、基本的にパソコンやスマートフォンなどの電化製品(電池も含めて)、ガソリン代などは、日本より高いと思います。レギュラーガソリンは3月21日時点で、リッター 3.78トルコリラ(約180円)でした。


地下鉄のホームにあふれるトルコ人

続いて通勤についてお話しします。現在私はKORUという最寄りの地下鉄の駅から、 15分ほどかけて会社に通勤しています。東京の通勤ラッシュに比べるとたいしたことはないものの、朝早い駅のプラットホームは人であふれており、電車も混雑しています。トルコ人は出社時間も早く、本当に真面目な国民性を感じます。
イスタンブールのように何でもそろう都市に比べれば、少し物足りないかもしれませんが、住環境としては申し分ありません。何よりも、トルコでも有名な観光地であるカッパドキアにも300km程度しか離れておらず、バスや車で3時間強で行けます。


最後に


興和ヘルスケアトルコ事務所のあるビル外観

私の勤める興和ヘルスケアトルコ(Kowa Turkey Sağlık Bakım A.Ş.)についてご紹介します。興和が長年日本で培ってきた、高品質で安全性が認められたMade In Japanのキューピーコーワやバンテリンコーワ、キャベジンコーワなどの医薬品・ヘルスケア品を、トルコの人々にも供与することを目的に、 2014年5月にアンカラに設立されました。アンカラに設立したのは、前述のようにアンカラは政治の都市であり、官公省庁が集中しているので、規制当局への申請が必要な医薬品、ヘルスケア製品を取り扱う興和にとっては、利点になると考えたからです。また、販売体制として自社による販売を目指して今後活動する予定です。
さらに、興和グループでは医薬品以外にも医療機器・環境・省エネ関連製品などのメーカーとしての事業活動を行っています。これ以外にも繊維・機械・建材などの輸出入や三国間貿易を行う商社機能も併せ持ち、その事業フィールドは多岐にわたります。今後は、さまざまな可能性を秘めたトルコにおいて、興和が長年培ったこれらの複合的な事業活動も視野に入れて、トルコで活動していくことになると思います。トルコでの生活が、公私共にまさに始まったところですが、私自身も新しくできたこの会社と共に、成長していきたいと考えています。

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