持続可能な社会の実現と商社 第6回「気候変動対策」

はじめに

前回は、気候変動対策の世界的枠組みであるパリ協定を取り上げましたが、今回はもう少し広い視点で気候変動に関するトピックスをご説明します。2018年の夏は本当に暑かったと感じられた方は多いのではないでしょうか。2018年の猛暑は世界的なもので、世界気象機関はこの夏の高温は気候変動が関連していると分析しています。また、世界経済フォーラムが毎年公表している「グローバルリスク報告書」で、「極端な異常気象」が2017年から 2年連続でトップリスクにランクされました。正確な科学的解明はなされていないとの見方もありますが、こうした気候変動問題が、企業人にとっても無関心ではいられない重大課題となっていることは確かです。

COP24(2018年12月)で予想される厳しい議論

パリ協定は、世界の平均気温上昇を工業化以前から 2℃以内に抑えることを目標として定めましたが、同時に 1.5℃以下にとどめることを努力目標としています。来月 12月にはポーランドでCOP24が開催されますが、これに先立ち 10月 8日に、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、平均気温が 1.5℃上昇したときの影響やそれを防ぐ道筋を初めて公表しました。世界の平均気温は、既に 1℃上昇していますが、これを1.5℃の上昇でとどめれば、2℃上昇に比べて、海面上昇は 10cm抑えられ、リスクを被る人も 1千万人減らすことができます。しかしそのためには、2030年の温暖化ガス排出量を 2010年に比べて 45%減らし、2050年ごろには実質ゼロにしなければなりません。COP24ではこの IPCC特別報告を巡って厳しい議論が予想されます。

わが国の排出削減長期戦略検討も本格化

わが国は 2016年の閣議で、2050年までに 80%の排出削減を目指すことを決定していますが、このような大幅な排出削減は、従来の取り組みの延長では実現が困難です。これを達成するための長期戦略については、2018年 6月の未来投資会議で、安倍総理から、有識者会議を設置し、関係省庁が連携して検討作業を加速するよう指示があり、8月以降、経済界の代表も含めたパリ協定長期成長戦略懇談会が開催されています。2019年に日本で開催されるG20において、わが国が気候変動対策面でもイニシアチブを発揮すべく、国内でも長期的な排出削減策に関する議論が本格化する見込みです。

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