阪和興業におけるグローバル人材育成の現状

阪和興業株式会社
人事部
加藤 玲

当社では2011年4月1日に創業家の北修爾前社長よりバトンを引き継ぎ、当社初の生え抜き社長となる古川弘成が新社長に就任した。古川は当社のコア事業である鉄鋼の営業部門で国内・海外勤務の両方を経験しており、その訪問するケースも多い。また、トレーニーの中には新しく設立した合弁企業の戦略策定・運営に携わる等の貴重な体験をした事例もある。まさに阪和興業のモットーである「現場主義= 習うより慣れろ」の精神で現地マーケットに飛所信表明の中で国内と海外の「二兎を追う」戦略の推進を発表した。これは当社の収益基盤である国内マーケットをさらに深耕し、海外事業についてもますます加速するグローバル化に対応していくということである。そのためにもこの戦略を推進できる人材の育成が大きな課題である。当社では、「PROFESSIONAL AND GLOBAL」をキーワードとして求める人材のイメージを明確化している。「OR」ではなく、その両方の素質を兼ね備えた人材のことである。
社内でもグローバル化に向けて貿易実務や英語研修などさまざまな研修を実施しているが、今回はその中から特に運用が拡大しつつある「海外トレーニー制度」を紹介したい。


海外トレーニー制度の現状


海外トレーニー制度は海外における実地の業務研修や現地語によるコミュニケーション力養成を目的とした研修制度である。1990年代より運用していた海外大学留学制度は外国語の習得を目的としたもので、現在も実施しているが、海外トレーニー制度はそれとは異なり、海外事務所や海外現地法人に派遣して実際の業務体験を通じて目的を達成させようとするものである。対象は若手総合職社員で期間は原則半年。現地では、商材のマーケティング調査、現地メーカーや生産者の訪問や新規開拓をはじめ、展示会への参加や周辺地域の事務所を訪問するケースも多い。また、トレーニーの中には新しく設立した合弁企業の戦略策定・運営に携わる等の貴重な体験をした事例もある。まさに阪和興業のモットーである「現場主義=習うより慣れろ」の精神で現地マーケットに飛び込み、日々動くビジネスを自らの肌で感じ、考える制度である。帰国後海外事務所へ駐在員として派遣される社員も多く、「トレーニー 時代に日本とは異なる商習慣を体感し、その中でビジネスを組み立てた現場感覚も大きな財産になった」と皆、口をそろえる。2011年度下期には初めてコーポレート部門からの派遣も決定しており、グローバル化の加速を見据えて今後も同制度の充実、拡大を推進していく。


目指すべき姿


上記のような日本人社員の育成だけでなく、ここ数年、新卒の外国人留学生の採用も増え、毎年数名が入社している。社員の間でも最近では外国籍の社員と働くことに違和感もなくなってきており、日本にいながらにしてグローバル化を感じられるという効果もある。今後は「インターナショナル(国際化)」から「グローバル(ボーダレス化)」への意識転換を進め、社員1人1人がボーダレスに商売を考え、組み立てられるようになることを目指している。これまでの阪和興業の「商売魂」にこのグローバル感覚が身に付けば、冒頭に述べた「PROFESSIONAL AND GLOBAL」な人材につながり、当社の強みを一層発揮できると考えている。今後は日本からの派遣だけではなく、逆に海外現地スタッフを日本へ受け入れるなど、阪和興業グループ全体でグローバル人材育成戦略を築き上げていきたい。

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