中国における明和産業の事業展開

明和産業株式会社 中国総代表 兼 明和産業(上海)有限公司総経理
藤井 幸一

明和産業株式会社は、2017年7月25日に日本貿易会と同じく創立70周年を迎えた。この中で中国との取引はかつての友好商社指定を受けての貿易も含め、65年間の長きに及ぶ。

現在、明和産業の中国事業は、上海市に本社を置く明和産業(上海)有限公司を主体に、グループ各社が取り組んでおり、主に潤滑油、冷凍機油などの石油製品、各種有機薬品、難燃剤、レアメタル、電池原料などの化学品、自動車部品、フィルム製品などの合成樹脂製品、発電・配管機材などの金属製品などの輸出入、中国国内販売、東南アジアを中心とした地域との外国取引、コンサルティング等を行っている。

明和産業は、1952年の米、塩の輸入を皮切りに中国取引を開始し、化学肥料、機械、繊維などの輸出で実績を上げた。その後1958年の長崎国旗事件で一時期は中国取引中断を余儀なくされるも、1960年に友好商社の指定を受けると歴代社員はテレックスマシーンを担いで長期出張で広州交易会に臨み、商談を継続してきた。周四条件に合わないと見なされて再び日中貿易ができなくなった時期を耐え、1972年の日中国交正常化後、1980年には北京・新僑飯店に、1981年には大連・大連賓館に、1982年には上海・錦江倶楽部(現花園飯店)に正式に連絡事務所を構え駐在員を配した。また、1984年にはプラスチックの故郷と呼ばれた江蘇省常州市に日本の発泡プラスチック関係の会社と合弁企業を設立、後に出資は引いたものの形態を変えていまだにその会社は存続している。その後も、機械金属、化学品、石油製品、合成樹脂等の各事業部で合弁会社を設立してきた。

明和産業(上海)有限公司は、1996年に100%出資で設立した販売会社で、21年を経て中国における事業推進の大きな役割を担っているが、特徴として、潤滑油、作動油、冷凍機油等を主体とした商品を中国各地33ヵ所のストックポイントに常備し、客先のニーズに応じて迅速に届ける配送ネットワークと23ヵ所の営業拠点を構築している点が挙げられる。市場の拡大と販売地域の拡大で成長を続け、2016年度の売上高は300億円近くにまで達した。2016年度は潤滑油等石油製品の販売の伸びが著しく、利益に貢献したが、即納体制や品質保証体制が客先から高い評価を受けてのものと考えている。

また、100%子会社としては2002年に設立した明和産業貿易(大連保税区)有限公司があり、現在主に金属製品、食品等の貿易取引に関するコンサルティング業務を行っている。


明和産業(上海)有限公司が所在する凱徳星貿大厦

明和産業は2017年度から新たな3ヵ年の新中期計画「Next Stage 2019」を始動しており、現在の事業ポートフォリオを見直して最適化し、成長分野への新たな事業投資によって収益基盤をつくることを目指している。経済減速がささやかれる中でも、好調あるいは堅調な業界、商材は存在しており、その業界・商材への取り組みを事業部間で情報共有し、独自のネットワークで、競合先にはできないパフォーマンスを発揮することで、優良顧客の全社的な囲い込みを狙う。とりわけ、潤滑油、電池材料、自動車関連、難燃剤、環境商材は引き続き重点事業と位置付け、強化する方針であるが、いずれも市場や供給元として中国との取引が欠かせない。月間200万台の生産となっている中国の自動車業界や、中国政府が普及を後押ししている電気自動車関連でも新たな事業基盤を構築すべく、日本の関連会社、パートナー企業と共に樹脂成型部品の設計会社、製造販売会社にも投資を行った。第13次5ヵ年計画で重視されている環境関連の資材、設備の販売も伸びを見せており、社会のグリーン化、低炭素化、汚染防止等で生活水準・質の向上にも貢献することを目指している。

他方、前中期計画期間中に食品分野での事業は縮小、撤退を行い、潤滑油、電池材料、自動車関連等の重点事業については、ベトナムに続き、タイ、インドネシアで新たに創設した関連会社を活用し、販売地域をベトナム、タイ、インドネシア等にも広げるなど、人材を有効に使うための事業の再配分を進めている。また、中国の事業に関しては、日本の本社ならびに東南アジア拠点とも連携し、人的交流の強化も進め、商圏拡大を目指す。東南アジア各国での販売のために、中国市場で商品に精通した中国人担当者を海外出張させ、現地の社員と協力ある中国製品を販売し、堅調に拡大する需要に応じた事業を進めている。また、本邦取引先やパートナー企業の海外展開の加速にも対応し、中国への供給も見据えた生産拠点の新規設立や加工取引の仕組み化を通じて、バリューチェーンの拡充を目指している。

このように明和産業(上海)有限公司の独自性を活かしながらも、連結ベースの業績管理体制を強化し、資源配分の最適化を図っている。6%台の成長が新常態化した中国市場で現在細心の注意を払っているのが信用管理で、販売担当者に再三重要性を説明し、適切な手続きを迅速に取らせることで、滞債権の発生を未然に防いでいる。

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