三菱商事が参画する中国での障がい者サッカー大会

三菱商事株式会社 東アジア統括補佐
河合 耕作

1. 中国における草の根の「障がい者サッカー大会開催」


中国でサッカーはとても人気があり、習近平主席も普及に力を入れているスポーツの一つです。中国はパラリンピック大会でも数多くのメダルを獲得するなど、競技レベルでの障がい者スポーツの水準は高いのですが、草の根レベルで参加できる機会が限られることが課題となっています。一方、東アジアでは今後、2018年の平昌(ピョンチャン)冬季五輪に続き、2020年の東京五輪開催、2022年の北京冬季五輪を控え、パラリンピック大会を通じて、障がい者スポーツ競技にスポットライトが当たる機会が増え、草の根レベルで、障がいがある人たちのスポーツの裾野を拡大させる上で、追い風が吹いているタイミングでもあります。

こうした時流の中で、当社は幹事会社として、三菱グループ8社と共に、「三菱友誼杯」障がい者民間サッカー大会を支援しています。大会名称に「民間」という文字が入っていますが、中国語では「草の根」というニュアンスです。第1回の2015年には8省・市から19チームが参加、第2回の2016年には全国規模の大会に拡大し、25省・市から78チームが参加しました。第3回となる2017年は6月に重慶で西部地方予選、7月に蘇州で東部地方予選を開催し、9月に北京で決勝大会を予定しています。

本大会の企画・開催に、中国側のパートナーの存在が欠かせません。主催者には、三菱グループ9社の他、中国国内での障がい者の社会進出を支援する「中国障がい者福利基金会」※、パラリンピック大会の選手育成に当たる「中国障がい者スポーツ管理センター」が名前を連ねています。また、中国パラリンピック委員会、中国スペシャルオリンピック委員会、中国ろう者スポーツ協会、中国日本友好協会、日本側では在中国日本国大使館の絶大なるご支援をいただいています。2017年からは中国サッカー協会の後援も受ける予定です。

※鄧小平氏の子息で身体に障がいのある鄧樸方氏が、中国障がい者連合会の名誉主席と中国障がい者福利基金会の会長を務める。

2. 障がい者サッカー大会の魅力と日中交流の懸け橋

障がい者サッカーには、視力に障がいのある方がプレーする「ブラインドサッカー」、聴覚に障がいのある人たちが参加する「デフサッカー」、また脳性麻痺のある人たちが行う「CPサッカー」などがあります。それぞれ、障がいのある人たちが競技できるように、ルールなどにいろいろな工夫をしていますが、例えば、ブラインドサッカーの場合、視力の弱い人も全盲の人も同じ条件とするためアイマスクを着用し、サッカーボールには鈴が入っていて、その音を頼りにプレーします。

本大会開催に当たっては、企画当初、ボランティアの役割がなかなか中国側パートナーに理解されなかったのですが、資金的な支援だけではなく「社員の参加も重要」という各社の意向を伝え、参加チームの出迎え、会場設営、後片付けなどに参加するようになりました。ボランティアとして参加する社員にとっては、役割を持って本大会を支える経験は大きな刺激となっています。


ブラインドサッカー


北京駅で参加チームを出迎え

健常者にとって目の見えない選手のダイナミックにプレーする姿は常に驚きであり、感動をもらっています。本大会開催支援は当社を含む三菱グループ各社のいわゆるCSR事業として位置付けられますが、それにとどまらず、日中友好・交流の懸け橋的な意義もあると考えています。当社は日本国内で開催される、障がい者スポーツのイベント等にもいろいろな形で支援を行っていますが、こうした日本国内で築いた人的ネットワークは、障がい者サッカー大会を通じた日中交流に活かせる部分が少なくないと考えています。


河合純一氏とブラインドサッカー選手の交流会

例えば、昨年の大会中には日本政府が推進するスポーツ・フォー・トゥモロー事業により、日本パラリンピアンズ協会会長の河合純一氏をお招きし、河合氏と中国のブラインドサッカー選手との交流会を開催しました。

今年は日中国交正常化45周年も記念して、日本のブラインドサッカーチームの「Avanzare つくば」と中国のクラブチームが交流戦を行う他、元サッカー日本代表監督で日本サッカー協会副会長の岡田武史氏と中国の障がい者スポーツ指導者との交流も計画しています。

3. 息の長い支援に向けて

この障がい者サッカー大会開催は、初年度から日本メディアNHK等の他、中国中央電視台(CCTV)や人民日報など、中国国内の主要メディアでも大きく取り上げられました。草の根レベルの障がい者スポーツを盛り上げるためには、今後も中国・日本のメディアに取り上げてもらえるように働き掛けることは重要であると考えています。そして、今後も、草の根のレベルでの障がい者サッカーの発展を支えながら、日本の選手や指導者を中国に招へいするなど、日中間の交流と信頼の醸成に貢献できればと考えています。

(聞き手:広報・調査グループ 石塚哲也)

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