東京貿易と中国

東京貿易テクノシステム株式会社 執行役員 海外営業部長杉原 正章
東京貿易マテリアル株式会社 取締役 資材事業部長井本 孝

東京貿易はお蔭様で2017年10月に創立70周年を迎えます。その中で中国とは65年を超える長年にわたり友好関係を築いてきました。1947年の創業以来、独立系の商社として、多くの荒波を乗り越えてきましたが、1990年代末期からマーケティングから製造、販売、メンテナンスまで一貫した専門性の高い独自の事業、サービスを提供する「事業創造型企業グループ」への転換を推進し、製造業まで含めた事業買収、事業投資を行いました。2006年に第二の創業を掲げ、「創業の三精神」を主軸とした新しい東京貿易独自のグループ経営システムの樹立を目指し、事業別に会社を分割することでそれぞれの分野でより専門性を高め、競争力を強化し、ホールディング会社が全体を束ねるという東京貿易グループ連邦経営をスタートし今日の発展に至っています。弊社の最大の特徴は、創業当時から今日まで一貫して独立路線を貫いてきたことです。「創業の三精神」は、1)全員経営の精神、2)開拓者精神、3)困難に打ち克ち努力する精神です。その精神は、現在の「東京貿易グループ連邦経営」にしっかりと受け継がれています。70年という弊社歴史の中で特記することの一つにいわゆる共産圏諸国との取引があります。当時市場としては未開拓だった中国、東欧、ロシアなどの旧共産圏において、将来の成長を見据え市場の開拓にチャレンジしました。これは、後発無名の独立系商社だった弊社が、進取の開拓者精神で果敢に取り組んだものの一つです。

1. 中国市場における弊社の沿革

1972年の日中国交正常化に先立ち、日中間において1952年に日中民間貿易協定が締結されましたが、弊社は1953年にはバーター取引による昆布の輸出と大豆カスの輸入を実現、同年中国米の取扱指定商社になり、1954年にはバーター貿易の決済方法を拡大した「トマス方式」(名称は東京貿易の電信略号TOMASに由来)を考案するなど、戦後の日中貿易のパイオニアとなり、今日に至るまで中国と穀物・鉄鋼・原料・車両と多岐にわたる貿易取引を行ってまいりました。中でも、1956年には機械輸出の先駆として三輪トラックを輸出し、1963年に北京事務所を開設、1970年以降は特にトヨタ車の輸出を中心に日中貿易の発展に寄与して参りました。

2. 中国事業の現況

①自動車関連事業
東京貿易グループは、現在中国市場では大きく二つの事業分野において積極的に成長発展に取り組んでおります。その一つは、東京貿易テクノシステム(TTS)による、日系自動車メーカーをはじめとする自動車関連機器事業です。国内において自動車メーカーを中心に航空機、造船、家電業界等の幅広い分野で製品開発力の向上に貢献しています。主力商品である三次元測定機は、1980年より中国市場において販売を開始し、さまざまな製品の開発造形から製造・検査・完成までの一連のプロセスにおける計測およびデータ処理作業を総合化して提供しています。2006年には、販売だけでなく、アフターサービスの充実を図るため、広州市に現地法人を設立し現在に至っております。

当初は、有接触測定機のレイアウトマシンが中心でしたが、測定作業のスピードアップ、簡素化を図るため、ここ10年は面形状測定が可能なレーザー式、カメラ式の非接触測定機に力を入れております。近年、中国市場における自動車産業の目覚ましい発展に伴い、各メーカーがR&Dに力を注がれる中、三次元測定機だけでなく、デザイン部門で使用されるクレイ自動加工機の需要が高まり、日系だけでなく、欧米系、中国系のメーカーの皆さまにもご愛用いただいております。一方、ハードのご提供だけでなく、業務効率の改善に役立つ測定、解析ソフトの開発にも力を入れており、トータル・コーディネーターとして測定機事業に取り組んでおります。また、デザイン分野の発展に寄与すべく、毎年広州モーターショー開催時期に、弊社取引先の皆さまに協賛をいただき、「デザイナーズナイト」と呼ばれる懇親会を開催しております。デザインを学ぶ学生に多数来場いただき、学生が製作したカーデザイン、クレイモデルを展示、自動車メーカーのデザイナー、モデラーの方々との交流の場を設けることで、学生たちのカーデザインに対する関心を高めるなど裾野分野の開拓にも取り組んでおります。

②資材事業
もう一つが、東京貿易マテリアル(TML)の中国資材事業です。今から約30年前、1986年に日本企業として最初に中国から耐火物(製鉄用耐火煉瓦)の輸入を検討開始しました。当時の中国耐火物の技術水準を考えれば、大きなチャレンジでしたが、翌年、特殊鋼向け高アルミナ煉瓦を初めて受注し、高炉向けも販売開始しました。弊事業部で取り扱っております耐火煉瓦は、主に転炉、溶銑鍋、取鍋、TPC(混銑車)等々に使用されます。1995年に中国山東省済南市にマグカーボン煉瓦製造の合弁会社(済南魯東耐火材料有限公司)を設立しました。1996年に中国浙江省上虞市にアルミナSiCカーボン煉瓦製造の合弁会社を設立(上虞東舜耐火材料有限公司)しました。2003年にはお蔭様で、弊社中国製耐火物の輸入量が年間4万tを超えました。中国製耐火物の品質が大幅にアップし認められた今日、中国耐火物製造メーカーとの取引は、現在20社以上に上ります。弊社は中国現地法人として、東京貿易中国有限公司・上海分公司、北京分公司、中国事務所として、済南事務所、瀋陽事務所、陽泉事務所、国内営業拠点としては、本社をはじめ、鹿島営業所、千葉営業所、京浜営業所、和歌山営業所、倉敷営業所、福山営業所、九州営業所を設置しております。TMLの資材事業は、日中合弁事業を柱に中国ナンバーワンを果たし、さらなる高い目標に挑戦しています。

膨大な人口を抱える中国は日本の最大貿易国であり、潜在的にも大変魅力ある中国という巨大なマーケットにおいて、東京貿易グループは、高付加価値商品の販売をさらに強化し、既存事業とシナジーが期待できる分野での新規事業に取り組み日中国交正常化50周年、さらには100周年に向けて、日中経済の友好的な発展に微力ながらも貢献し続けたいと願っております。

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